ストレスを感じたときは両手で自分を抱きしめるべき

研究チームは、タッチがストレスを軽減させる理由を2点挙げています。

1つは、触覚によって迷走神経や副交感神経系の活動が刺激され、ストレス反応が調整されるというもの。

もう1つは、触ることが社会とのつながりや安心感などを強く感じさせ、精神的な安定をもたらすというものです。


ストレスを感じたときの抱擁やセルフタッチは効果的 / Credit:Depositphotos

研究の結論として、ドライソーナー氏は次のように述べました。

「まず、人を抱きしめたり触ったりすることは、ストレスに対処するのに役立つと言えます。

例えば、試験や面接、病院での診察の際に、ハグしたりタッチしたりするのは効果的です。

またセルフタッチでも同様の効果が得られます。

例えば、右手を心臓に、左手をお腹の上に置いて、その温かさや圧迫感に意識を集中させるなら、ストレスに対処できるでしょう」

そして今回の実験でセルフタッチの方が抱擁よりも効果が高かった理由は、「抱擁の相手が愛する人ではなく見知らぬ人だったから」だと推測しています。

信頼関係のない相手や愛情の伴わない抱擁では、相手に対する警戒心や不快感が生じる可能性があり、結果的にストレス低下効果が十分に発揮されないと考えられるのです。

そのためベストは愛する人からの抱擁ですが、自分ひとりでストレスと戦わなければいけない場合は、自分自身で自分を抱くセルフタッチが良い選択肢になるようです。

相手がいなくて寂しい時は少しの間だけでも、自分を両手で抱きしめてあげてくださいね。

参考文献

Receiving a hug or engaging in self-soothing touch reduces cortisol levels following a stressful experience
https://www.psypost.org/2021/11/receiving-a-hug-or-engaging-in-self-soothing-touch-reduces-cortisol-levels-following-a-stressful-experience-62168

元論文

Self-soothing touch and being hugged reduce cortisol responses to stress: A randomized controlled trial on stress, physical touch, and social identity
https://doi.org/10.1016/j.cpnec.2021.100091

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。