激しい暴力シーンやグロテスクな描写がある作品は、レーティングで年齢制限されることも珍しくありません。しかし、過激な表現を含むマンガ作品の実写化で、グロテスクなシーンを再現しながらも、PG12や年齢制限なしで公開された作品もありました。
松坂桃李さん演じる宇相吹が、人を残酷な死へ導く…映画『不能犯』ポスタービジュアル (C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会
【画像】え…っ? 「頑張り過ぎでは」「桜井ユキさんも衝撃の姿を」 こちらが松坂桃李さんが『不能犯』と同じ年に主演した「R18指定」映画です
規制の限界に挑戦した監督たちの調整にも脱帽
グロテスクな描写を含む青年向けマンガ作品の実写化では、その再現度や公開時のレーティングが注目されます。なかには子供が観られる年齢制限で済んでしまったものの、観た人から「何でR指定じゃないの」といった声が相次いだ作品もありました。
『不能犯』PG12
2018年公開の映画『不能犯』(原作:神崎裕也)は、都内で起こる連続変死事件に関わる謎の男「宇相吹正(演:松坂桃李)」と、彼を追う刑事「多田友子(演:沢尻エリカ)」の対決を描いたスリラーエンターテイメントです。
宇相吹のマインドコントロールによって幻覚を見せられた者が次々と死亡していく本作では、手首に謎の虫が這いずり回る不気味な現象が起こるシーンや、幻覚で気が狂い、人をめった刺しにする場面など、背筋が凍るような描写が登場します。
何作もホラー映画を手掛けてきた監督の白石晃士氏は、オカルトメディア「TOCANA」のインタビューで、殺人や暴力などの激しいシーンについて「『PG12(12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要)』で許される範囲の中ではあれがギリギリのラインなので、限界まで挑戦しています」と語っていました。PG12を目指しソフトになるように意識しつつも、「痛み」を感じられるように表現したそうです。
また、見つめるだけで相手を死に追いやる宇相吹を演じた、松坂桃李さんの怪演ぶりも話題になりました。普段の優しい好青年のイメージとは異なる不気味な表情や、仕草も見どころのひとつです。
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』2部作 PG12
人類と巨人の壮大な戦いを描いた同題マンガの実写映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(原作:諫山創)は2015年に、2部作で公開されています。登場人物や物語の展開など、原作から大幅に改変されて賛否はあったものの、残酷な世界観に欠かせないグロテスクなシーンが高く評価されました。人間が巨人に捕食され、人びとが巨人から逃げ惑う描写は目を背けたくなるほどです。
樋口真嗣監督は、ファン層を考慮してPG15にならないように配慮しつつ、残酷さを原作の本質から逸脱させないため、PG12で公開された映画『寄生獣』(原作:岩明均)の山崎貴監督に助言を求めたことを、「映画ナタリー」のインタビューで明かしています。同じく捕食シーンを含む作品の経験が、ギリギリ誰でも観られる範囲でのインパクトのある描写の再現に役立ったようです。
『ミュージアム』指定なし
2016年公開の『ミュージアム』(原作:巴亮介)は、雨の日だけに起こる猟奇殺人事件を追う刑事「沢村久志(演:小栗旬)」が、犯人「カエル男(演:妻夫木聡)」の巧妙な罠に巻き込まれるサイコスリラー作品です。
カエル男の手口はとにかく残虐で、被害者が生きたまま鎖につながれて猛犬に食い殺されたり、出生体重分の肉片を切り取られたりなど、衝撃的な事件が続きます。直接的な殺人の瞬間の描写は少ないものの、観客にトラウマを与えるには十分なインパクトがありました。
大友啓史監督は「ガジェット通信」のインタビューで、「R指定は確実だと思って思い切り作って、でも出来上がってレーティング無しって聞いてビックリ」「直接的な表現が無ければ良いみたい」と、自身も驚く判断基準だったことを明かしていました。PG12にもならなかったものの、ポスターには「危険!」の注意が入っています。