ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの鮮烈なデビュー作を映画化した『遠い山なみの光』(2025年夏公開)。本作の追加キャストとして二階堂ふみの出演が発表され、場面写真が解禁された。
【写真を見る】二階堂ふみ演じる謎多き女性、佐知子 / [c]『遠い山なみの光』製作委員会
2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」、「わたしを離さないで」など映画化作品でも非常に高い評価を受ける作家カズオ・イシグロが、1982年に綴り、王立文学協会賞を受賞した長編小説デビュー作品「遠い山なみの光」。自身の出生地長崎を舞台として繰り広げられる本作は、戦後間もない1950年代の長崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー作品となっている。長編デビュー作『愚行録』(17)、カズオ・イシグロも大ファンだという『ある男』(22)などで、国内外で高く評価されている石川慶が監督を務める。
ノーベル文学賞受賞作家のカズオ・イシグロ
日本人の母とイギリス人の父を持ち、ロンドンで暮らすニキ。大学を中退し作家を目指す彼女は、執筆のため、異父姉の死以来足が遠のいていた実家を訪れる。母の悦子は、長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきていたが、ニキは母の過去を何一つ聞いたことがない。夫と長女を亡くし、想い出の詰まった家で一人暮らしていた悦子は、ニキと数日間をともにするなかで、最近よく見るという、ある「夢」について語り始める。それはまだ悦子が長崎で暮らしていた頃に知り合った、佐知子という女性と、その幼い娘の夢だった。
主人公の悦子を演じる広瀬すず / [c]『遠い山なみの光』製作委員会
主人公の悦子を務めるのは、抜群の演技力と表現力で映画、ドラマと幅広く活躍する広瀬すず。追加キャストとして、悦子がまだ長崎にいた頃に出会った謎多き女性、幼い娘と暮らす佐知子役で二階堂ふみが出演することに。イギリスで暮らす悦子の夢にたびたび登場するこの女性と悦子の間には、いったい何があったのか。
『ヒミズ』(12)では第68回ヴェネチア国際映画祭にて最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞、『私の男』(14)、『翔んで埼玉』(19)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、『月』(23)で第97回キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞を受賞。第76回エミー賞で史上最多18部門を受賞し、先日ゴールデングローブ賞へのノミネートも発表されたばかりのドラマ「SHOGUN 将軍」にも出演するなど、主演、助演、そしてフィールドを問わず確かな演技力で存在感を放ち活動の幅を広げている二階堂は、本作の出演に際し「この作品に参加させていただき、改めて、当時の女性たちが何を抱えて生きていたのかを、登場人物を通じて感じていくような経験でした。石川監督はじめ素晴らしいスタッフの方々とご一緒できたこと、とても光栄に思います」と語り、石川組への初参加に喜びを滲ませている。
石川監督も二階堂の出演について、「鮮烈な印象を残す必要もありながら、高い抽象度を求められる困難な役でしたが、二階堂さんの役に対する、そして映画全体に対する理解度には毎シーン驚かされました」と絶賛し、「二階堂さんが放つその異彩が、いかにこの映画を彩り豊かなものにしてくれているかを実感しています」と絶大な信頼を寄せている。
凛としたイメージの悦子と、モダンな女性、佐知子のコントラストが際立つ『遠い山なみの光』の場面写真 / [c]『遠い山なみの光』製作委員会
このたび、本作の場面写真が初解禁。広瀬演じる凛としたイメージの悦子と、二階堂演じるモダンな女性、佐知子のコントラストが際立つ場面写真が到着した。広瀬と二階堂、共にN H K紅白歌合戦の司会を務めるなど国民的な人気を誇る2人が、戦後混乱期の長崎に生きる対照的な女性を繊細に演じる姿に、期待が高まる場面写真となっている。
今年9月に撮影を終えている『遠い山なみの光』。公開に向けて引き続き注目してほしい。
■<コメント>
●二階堂ふみ(佐知子役)
「この作品に参加させていただき、改めて、当時の女性たちが何を抱えて生きていたのかを、登場人物を通じて感じていくような経験でした。石川監督はじめ素晴らしいスタッフの方々とご一緒できたこと、とても光栄に思います」
●石川慶(監督)
「ネタバレになってしまうので、なかなか役の話ができないのがもどかしいのですが、二階堂さんに演じてもらった佐知子は、この映画の登場人物としても、この時代に生きた女性としてもひときわ異彩を放つ、非常に重要な役です。鮮烈な印象を残す必要もありながら、高い抽象度を求められる困難な役でしたが、二階堂さんの役に対する、そして映画全体に対する理解度には毎シーン驚かされました。いま、編集室で、二階堂さんが放つその異彩が、いかにこの映画を彩り豊かなものにしてくれているかを実感しています。そしてなにより、広瀬すず、二階堂ふみという現代日本映画界の最高峰の2人が、同じフレームにおさまっているのを見るだけでも、震えるような感動を覚えます。早く、みなさんとこの感動を共有できるよう、もう一息がんばります!」
文/平尾嘉浩