北海道江別市の公園で千歳市の大学生・長谷知哉さん(20)が集団暴行を受けて死亡した事件からまもなく2か月が経つ。事件の記憶が薄れゆく中、今月10日、札幌地検は逮捕された6人のうち、札幌市白石区のアルバイトの男・A(18)と少年(16)を札幌家裁に家裁送致。家裁は同日に、少年らに対する2週間の観護措置を決定した。凄惨な事件を取材当時の証言とともに振り返る。
川村被告は通話状態にしスマホ越しにカップルの会話に聞き入っていた
社会部記者が解説する。
「事件は10月26日早朝、江別市文京台南町公園で通行人が全裸で倒れている長谷さんを見つけたことで発覚。長谷さんは全身にあざがあり、意識不明の状態で病院に搬送されたがまもなく死亡。死因は外傷性ショックとされた。
北海道警察は29日までに長谷さんの交際相手の八木原亜麻(20)とその友人の川村葉音(20)、そしてアルバイトのAをはじめとする16歳から18歳までの4人の少年を逮捕した。
八木原被告と川村被告は『強盗致死』などの罪ですでに起訴され、少年2人は道警により傷害致死などの容疑ですでに送検されていたが、地検は今回、法定刑がより重い強盗致死に切り替えて家裁に送致した」
なぜ少年らがこのような凄惨な事件に加担してしまったのか。
事件の発端は長谷さんと八木原被告の交際トラブルだった。長谷さんは八木原被告の中学校時代の1年先輩で、ともに合唱部に所属。卒業後の進路は異なり、長谷さんは釧路市内の高校から公立千歳科学技術大学に進学、八木原被告は札幌市内の私立高校を経て江別市内の大学に進み、今年8月ごろから交際関係になっていた。しかし……
「事件直前の25日夜、長谷さんは、千歳市の自宅に保管していた八木原被告の衣類や私物を持ってJR大麻駅近くにある八木原被告の自宅アパートを訪れていました。道外での就職も考えていた長谷さんは『1年後に別れるつもりだから』と別れ話を切り出したそうですが、八木原被告がこれに納得できず口論に発展。
実は八木原被告から事前にこの日の『話し合い』があることを聞いていた川村被告はこのとき、通話状態にしたスマホ越しに二人の会話に聞き入っていた。
川村被告と一緒にいたひとりの少年が、長谷さんの主張に、『意味が分からん』と腹を立て、呼び出すよう促しました。それから川村被告は少年たちと現場の公園に向かったのです」(同前)
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八木原被告と川村被告、どちらも友達は少なかった…
同じ釧路の出身で、中学時代に同じ進学塾に通っていたという八木原被告と川村被告。高校、大学は別だったが、それぞれが江別市内の大学に入学した後は、同じコンビニで働き、「親友」とも呼べる関係性だった。コンビニの常連客が証言する。
「2人は地元が一緒だとかで、とても仲が良く、それこそバイトじゃない日も2人でコンビニにいたことがありました。『どうしたの?』と聞くと、『遊んだ帰りです』と。八木原さんはしゃべり方が独特というか、小声でとても早口でしゃべるので何を言っているのかよくわからないことがありましたが、事件を起こすような雰囲気ではなかったのですが……」
八木原被告の中学時代のクラスメイトも、当時の印象をこう語っている。
「八木原さんは成績もあまりよくないし、運動も苦手。大人しくて地味なタイプでしたね。いじめはなかったけど、クラスでは浮いた存在で、休み時間や移動教室のときは常に1人でした。友達はいなかったと思います。けれど、合唱部の活動は真面目に一生懸命やっていたと思いますし、校則を違反するようなこともなかったので、今回事件を知ってすごく驚きました」
一方、川村被告は大学では教育学科の「初等教育コース」に在籍。小学校の教師を目指していた。
「川村さんは優等生で遅刻や欠席もほとんどなく、先生からの評価もよかったと思います。1学年は約110人でテストでは常に20位以内にいて、学年2位を取ったこともあります。基本的に真面目なので、授業も静かに一生懸命受けていたし、部活もバドミントン部で頑張っていた印象があります。ただし…」
高校の同級生だったという女性は言いよどんだ後、こう続けた。
「いじられキャラで、入学当初から陰で『カエル』と呼ばれていました。本人も気づいていたけど、あんまり気にしてない感じでメンタル強いなぁって。陰キャでクラスでのカーストも下のほうなのに、周りの陽キャやヤンキーに憧れて、イキっている感じはありました。自分を強くみせたいのか、休み時間に机の上に足を乗せたり、態度を悪くしたりするので、周りに避けられていました」
川村被告も友達は少なかったようだが、恋愛になると積極的な一面を見せることもあった。
「モテはしないけど、とりあえず彼氏がほしいって感じで、遊んでるチャラい男子とかに自分からグイグイいく肉食系でした。彼女がいる男子にも毎日告白するくらいでしたが、フラれ続けている時期もありました」(同前)