撮影に選んだタイミングと雪の実際
「BEYOND」撮影のためにジェフがルスツに乗り込んだのは2024年の1月10日。12日間をともに過ごした撮影クルーは、4人のHEADチームアスリートたち、イアン・モリソン(IAN MORRISON)、メグ・カミング(MEG CUMMING)、アレキサンダー・グルドマン(XANDER GULDMAN)、ジェナ・ケラー(JENNA KELLER)。そして、フォトグラファーは世界的にも著名なグラント・ガンダーソン(Grant Gunderson:https://grantgunderson.com/) だ。
なかでもイアン・モリソンは、カナダ・ウィスラー出身のプロスキーヤー兼プロマウンテンバイカー。父親はスキーフォトグラフィーの巨匠ポール・モリソン(日本のスキー雑誌「BRAVOSKI」でも長年グラビアを飾ってきた)。バックカントリーでの豪快な滑りで、ムービーや雑誌など北米メディアで引っ張りだこの人気者だ。アレキサンダー・グルドマンは、2023年のFWTで一躍注目を浴びた若手。「The Land of Giants」や「Unified」ムービーでの、スタイルと技術を融合した滑りが評価され、”Breakout Skier of the Year”(最優秀新人スキーヤー)にも選ばれている。
「僕が初めてルスツに行ったのが12年前の1月2日だったんだ。その旅があまりに素晴らしかったから、日付がずっと頭に残っていて。今回は少し遅くなったけど、1月は訪れるのに最高の時期だと思う。ただ今回はちょっと風が強かったんだけどね。幸い、長めに滞在していたので、その間にフレッシュパウダーやおもしろい場所を見つけられたし、青空にも恵まれたよ。雪? もちろん“JAPOW(ジャパウ)”さ。
アスリートたちは、口をそろえて『ルスツのパウダーは信じられないほど軽い、これまでで最高のパウダー!』と言っていたよ」
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クルーが全身で感じ取ったルスツの魅力
撮影は実際どのように行われたのだろう。
「撮影プランを立てる際には、天気やその日の目的、スキーヤーの動きなど、多くのことを考えるんだ。風向きが南からなら北側へ、東からなら西側へ行くなど、天候を確認しながら計画を立て、風が強いなかでいい雪を見つけるために、気象データを常に見ながら動いていたね。そのため、毎朝6時に朝食を食べながらミーティングをして、昨日はなにが撮れたか、今日はなにをするかを話し合うんだ。もし計画がうまくいかなければ、その場で柔軟に変更する。雪質、雪量、地形をよく理解しておくことも重要だった」
ルスツとえいば、「ウエストMt.」「イーストMt.」「Mt.イゾラ」の3つの山に37ものコースを擁し、その総滑走距離は42km、単体リゾートしては日本一のスケールを誇る。広大なフィールドに機能的にフード付きリフトやゴンドラがレイアウトされているので、効率のよい滑走と快適な移動ができるのが特長だ。
クルーはルスツをどのように滑ったのだろう?
「もうルスツまるごと全部を滑ったよ。例えば、Mt.イゾラやその裏側、さらに西や東など、本当にいろんな場所で滑ったんだ。ロングランできるエリアや、大きな景色が広がる場所も発見した。リゾートはもちろん、バックカントリーでもあちこちで撮影したよ。
ただ、バックカントリーらしさを強調しすぎず、リゾートっぽく見せるように心がけたよ。実際、スノーモービルもCATも使わずに、多くはリフトでアクセスできる範囲で、毎朝リフトを使ってリゾート内を滑って、ゲレンデが混雑してきたらハイクでバックカントリーに出て、またリゾートに戻るという流れだった。
映像には日差しのなかでの良い雪の様子が映っていると思う。青空に恵まれて景色も楽しめた。パウダーに潜る一方で、天気が良くて洞爺湖や火山、羊蹄山などが見える日もあってね。海外から日本にやってくるスキーヤーやスノーボーダーはパウダーを楽しみにして来るけど、実際に雪の上に立つと、それ以上に日本の絶景に驚かされることが多いと思う。今回のアスリートたちは、太平洋や湖、大きな火山まで眺めることができるだなんて予想外だったようで、この素晴らしい景色に感動しっぱなしだったよ」
イアン・モリソンはこう語った。
「日本にはまだ行ったことがなかったんです。JAPOWを滑ることは僕のなかで『人生で絶対にやりたいことリスト』の筆頭だったんです。そして、ルスツはまさに夢のような旅でした。
スキーはこれまで経験したことがないほど素晴らしく、想像し得る限りの軽くて深いパウダースノーだった。
地形もダイナミックで遊び心にあふれ、バラエティに富んでいてすごくおもしろい。毎朝目が覚めると、新しい雪がリゾート全体を覆い尽くしていて、これには驚くばかりでした」
メグ・カミングはこう語る。
「ルスツで撮影して最も印象的だった点は、自分だけのゾーンを見つけられることです。アクセスしやすいオフピステの地形が、ほとんど手つかずの状態で、他の人のトラックがまったく見えない。これが私たちの撮影と滑りを、とてもエキサイティングで楽しいものにしました。ルスツを滑ることは、まるで宝石のような体験。自分だけの魔法の森にいるような感じでした」