昭和には数多くの名作といわれるマンガが世に出ているなか、誰も報われない「全滅エンド」が描かれた作品も少なくありません。主人公や主要キャラが問答無用で死んでしまう昭和の名作とは、どの作品が当てはまるのでしょうか?
『デビルマン』画業50周年愛蔵版 第5巻(小学館) (C)Go Nagai/Dynamic Production
【画像】えっ、頭が木に刺さってる…? こちらが首ちょんぱされた『デビルマン』ヒロインの牧村美樹Tシャツです(3枚)
あっさり死ぬからこそ、リアル感が増す?
マンガやアニメの最終回は、物語のなかでも特に重要な要素のひとつで、作品によってハッピーエンドだったり、バッドエンドだったりと多種多様です。そのなかでも、主要人物がことごとく命を落とす「全滅エンド」は、多くのファンに衝撃を与えました。
※この記事には『鉄腕アトム』『デビルマン』『ザ・ムーン』物語終盤の内容を含みます。
「全滅エンド」は、特に昭和の名作に多く見受けられます。例えば手塚治虫先生が生んだロボットのヒーロー「鉄腕アトム」は、数あるマンガ作品のなかの一作『アトムの最後』であっけなく破壊される様子が描かれました。
そもそも人気作だった『鉄腕アトム』は、さまざまな媒体で多くの短編が発表されており、最終話は複数あるといわれています。そのなかのひとつ『アトムの最後』は「別冊少年マガジン」(講談社)に掲載された作品です。
同作はアトムが活躍した21世紀からさらに何年か経ったあとの「ロボットが人間を支配する世界」が舞台です。アトムはロボットから逃げていた主人公「丈夫」を助けるため、追っ手のロボットと衝突するも、たったひとコマで爆破されます。強かったはずのアトムが瞬時にいなくなり、さらに丈夫も殺されてしまうラストは、多くのファンに衝撃を与えたのではないでしょうか?
また、全滅エンドで有名な作品を語るうえでは、1972年から「週刊少年マガジン」(講談社)にて連載された永井豪先生の『デビルマン』も欠かせません。同作は人間でありながら悪魔の力を得た主人公「不動明」が、ヒロイン「牧村美樹」の家に居候しながら「デーモン」一味と戦う様子が描かれました。
問題の最終話では、明の親友「飛鳥了」が敵の「サタン」であると発覚し、了の裏切りによって牧村家はデーモンの一味と勘違いされます。そして「悪魔狩り」によって牧村夫妻や息子はもちろん、明が愛していた美樹も惨殺されました。最終的に明が命をかけて守った人間は滅び、サタンと戦い続けた明も絶命します。報われない結末ではあるものの「人間の悪の部分」を描き上げた作品として今もなお語り継がれている作品です。
ほかにも全滅エンド作品といえば、1972年から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載されたジョージ秋山先生の『ザ・ムーン』も当てはまるでしょう。同作の主要キャラは9人の少年少女で、皆が心をひとつにすることで起動する巨大ロボット「ザ・ムーン」が、悪党たちと戦います。
物語終盤になると、「ケンネル星人」が生物を死に至らしめるカビを地球に散布したため、リーダーの「サンスウ」を筆頭に9人が「カビ発生装置」を止めるために動き出しました。敵によって隠されたザ・ムーンを探し当て、カビ発生装置の場所を特定したまでは良かったものの、カビの影響によって、あと一歩のところでこと切れてしまいます。
そして、見開きでザ・ムーンが「ムーン ムーン」と言いながら涙を流す描写に、小説家「ロマン=ローラン」の言葉が続き、終わりを迎えるのです。
いずれの作品も、誰も報われなかった無情な結末は読者の気持ちをズーンと沈めます。しかし、「正義とは何か」といった道徳的な観点から、とても考えさせられる内容でもありました。そんな魅力が詰まっているからこそ、数十年経過した現在も愛され続けているのでしょう。