ミドルマネージャー(中間管理職)の重要な職務のひとつに予実(よじつ)管理がある。企業の予算と実績を比較・分析・修正しながら経営目標達成を目指す管理業務だ。しかし、このたび株式会社カオナビが全国のミドルマネージャー向けに行った実態調査で、経営層からの期待とは裏腹に、予実管理に対する苦手意識が浮き彫りになった。
会社のなかで自分の役割とは何か、何を期待されてここにいるのか。それを正しく認識し、使命を果たすのは容易なことではない。そして経営層もまた、自らの期待に応えられないミドルマネージャー層がどこにつまずいているのか、正しく認識し、対策を打つ必要がある。今回の実態調査は、その解決の糸口になるかもしれない。
調査概要(株式会社カオナビ調査資料より)
調査名:ミドルマネージャーの予実管理に関する実態調査
調査主体:株式会社カオナビ
調査方法:WEBアンケート方式
調査期間:2024年11月13日〜2024年11月15日
対象者:下記条件に該当する全国20〜60代の男女
(1)経営層150名
(2)ミドルマネージャー(課長、部長クラスの中間管理職)150名
※回答の構成比は少数第1位もしくは第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ状に表示される構成比での計算結果は実際の計算結果とずれが生じる場合があります。
経営層はミドルマネージャーの予実管理能力を求めている
経営層への調査では、ミドルマネージャーに予実管理の必要性を感じているという回答が9割を超えた。さらに9割弱は、現場で予実管理を行うことは数値やデータに関する意識が高まるという認識をしていることが明らかになった。
ミドルマネージャーの約8割が予実管理に課題を抱えている
一方のミドルマネージャーはどうだろう。調査によれば、「予実管理に課題を抱えていますか?」との問いに対し、非常に感じている・やや感じているという回答がなんと約8割にものぼる。その理由として、予算策定や見込みの精度への不安、データ収集や入力業務の手間、そしてデータ分析に関するスキルや知識不足などが上位を占めた。
予実管理が得意な人ほど売上達成割合が高い
さらに、予実管理の得意・不得意を聞いた調査では、4割近くの人に苦手意識があるというデータも。また、その一方で、得意・やや得意と感じている人は、売上達成率が高い結果になっている。数字への意識の高さが売り上げにも直結しているようだ。
約6割が予実管理に表計算ソフトを使用
予実管理の方法を聞いた調査では、表計算ソフトが1位。さらに、自社開発ツールやクラウドツールを使用している方は表計算ソフトを使用している方よりもマネジメント業務に時間を割けている傾向にあり、さらには売上達成率も高いという結果になった。
表計算ソフトで「やって当たり前」の呪縛
経営層の期待と相反して、ミドルマネージャーの予実管理には課題が多く挙げられた今回の調査結果。
この結果に対し、調査を実施したカオナビのヨジツティクス事業室 室長 菅原拓弥さんはこう話している。
▲株式会社カオナビ ヨジツティクス事業室 室長 菅原拓弥さん
「経営データは、エクセルなどさまざまなシステムで散在している会社さんが非常に多いです。調査では、部署を移動すると前任者がつくったエクセルを読み解くところからはじまるなど、情報が属人化しているケースが数多く聞かれました。また、エクセルへの入力が大変という声や、データを分析するスキルが足りていないという声が多く挙がる結果となりました」(菅原)
部署ごとに表計算ソフトで予実管理を行い、データが複数存在するとは、なんとも目眩がする。しかし、表計算ソフトが長年ビジネスシーンにおいて必須ツールとして君臨し続けてきた背景から、使いこなせなければビジネスマン失格という呪縛があるのかもしれない。
だから本質的には重要でない仕事に時間を割き、それでもなお体制を憎まず、己のスキル不足を責める。なんと不毛なことだろう。
経営データを一元化して経営判断を支援する「ヨジツティクス」
カオナビは、予実管理システム「ヨジツティクス」を2024年4月にリリースしている。これは経営データを一元化し、正しい経営判断を支援するシステムだ。
「ヨジツティクスを導入すると、経営層から社員ひとりひとりが、ひとつのデータを共有して管理できます。昨年の予算や結果がどうだったかということはもちろん、コメントも残せるので、情報が属人化することがありません。今回の調査でご回答いただいた課題にも、ヨジツティクスでかなりの部分をお手伝いできると考えています」(菅原さん)
大切なのは社員ひとりひとりの視座を上げること
カオナビの執行役員CPO 平松達矢さんも、その成果に胸を張る。
「リリースからまだ6か月ですが、導入いただいた企業さまからは、『今までは数字を収集することが仕事になっていたのが、分析に時間を割けるようになった』という声を非常に多くいただいています。また、経営層がリアルタイムで数字を把握でき、スピード感が生まれたこともメリットになっているようです」(平松さん)
▲株式会社カオナビ 執行役員CPO 平松達矢さん
手間と時間の削減だけをとってみても、予実管理システムの導入は大きな意味があると言えそうだ。しかしそれ以上に効果が期待できそうなのが、社員ひとりひとりの意識改革だ。
「現状はユーザー数に上限を作っておらず、これは他社との大きな違いだと思います。ユーザー数によって金額が変われば、経営層はシステムを使い、現場はエクセルで、という状況になる。それを避けるために上限は設けませんでした。大切なのは社員ひとりひとりの視座を上げることです」(平松さん)
自分の数字、チームの数字を俯瞰して見られるようになれば、意識は大きく変わるだろう。今回調査対象となっているミドルマネージャーに限らず、プレイヤーである社員にも同じことが言える。予実管理のDX化から会社全体のボトムアップを図ることができれば、その企業にとって新たな道が拓けるのではないだろうか。