関東一、國學院久我山、帝京、成立学園など強豪校がひしめく東京予選。まさに全国屈指の激戦区となっており、全国高校サッカー選手権においても出場枠が2枠あるとはいえ、勝ち上がるのは容易ではない。
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そんな東京で安定した力を見せているチームが、今大会で6回目(直近5年間で4回目)の出場となる堀越だ。1991年度大会以来となる出場を果たした2020年度にベスト8まで勝ち上がると、昨冬はインターハイも含めて初となる全国ベスト4進出を果たした強豪校である。
監督はGMに近い立ち位置を取り、キャプテンが指揮官を担ういわゆる“ボトムアップ方式”。長年に渡ってスタイルを貫いてチーム強化を図ってきたが、今季は厳しい戦いを強いられた。
昨季のチームでレギュラーを務めた選手が多く残留したものの、春先から攻守の歯車が噛み合わなかった。守備陣では森奏(3年)、渡辺冴空(3年)、主将を務める竹内利樹人(3年)が残り、攻撃陣も司令塔のMF渡辺隼大(3年)、左ウイングの小泉翔汰(3年)といった実力者が主軸を張る。だが、結果はなかなかついてこなかった。
プリンスリーグ関東に参加している帝京(同1部)と國學院久我山(同2部)を除いたチームが参加した4月の関東大会予選は、ベスト4で敗退。5月下旬から6月初旬に行なわれたインターハイ予選は2回戦で駒澤大高に1−2で敗れ、調子が上がらない日々が続いた。4月に開幕した東京都リーグ1部は開幕戦こそ多摩大目黒に1−0で勝利したものの、第2節以降は3勝2分3敗と勝ち切れない。特にインターハイ予選を挟んで3連敗を喫した時期にチームの雰囲気が沈んでしまい、難しい状況に置かれた。
これだけの陣容を揃えても勝てなかったのは、なぜなのか。14年度からチームを預かる佐藤実監督はその理由を次のように明かす。
「去年はとんでもないことをやってくれた。(今年は)僕らの力以上の見方をされ、評価がどんどん上がっていく一方で、実力が伴っていないというギャップに苦しみました。『そこまでのチームじゃない』と言っても、結局は言い訳になってしまう。誰と話してもそうなるんですよね…」
追われる側のプレッシャーは尋常ではない。今まで味わった経験がない類の重圧が、知らず知らずのうちに圧し掛かっていたのだ。
また、選手権4強という事実は、自分たちの力を見誤らせる事態にもなった。キャプテンの竹内も当時のチーム状況をこう振り返る。
「相手の問題ではなく、自分たちのメンタル面が問題だった。去年の選手権でベスト4という結果を残し、自分たちがどこかで浮き足立っていた。王者感覚でいて、悪く言えば調子に乗って“自分たちは強い”と勘違いをしていたんだと思います。これくらいやれば勝てるだろう。そういう雰囲気があって、チームでも個人でも緩んだ気持ちがあり、それがプレーに繋がった」
新チームが立ち上がった2月に竹内は、「相手は自分たちの対策をしてくるから、浮き足立たずに去年のことを忘れて組み立て直そう」という声掛けをしたという。しかし、その言葉は響かず、気がつけばインターハイ予選が終わっていた。
このままではまずい。危機感が高まるなかで、チームは転機を迎える。
6月26日に行なわれた東京都リーグ1部・第8節のFC東京U-18 Bとのゲームだった。リーグ戦3連敗中だったチームに向けて、竹内は試合前に「この試合があったから変われた。ターニングポイントにしよう!」と発破をかけたという。結果は2−2の引き分けだったが、プレー強度や身体を張ってゴールを守るといった基本を再徹底できたことは、選手に自信をもたらした。
FC東京U-18 B戦が基準となり、夏合宿では戦術的な要素の修正に着手。4−3−3か4−2−3−1にシステムを変更し、ゼロトップでプレーしていた2年生10番のMF三鴨奏太をトップ下に配置転換した。ボールの収まりどころができ、攻撃が活性化。もつれた糸を一つひとつ丁寧に解いた結果、チームは勢いを取り戻した。
選手権予選は破竹の勢いで勝ち抜けて代表の座を掴み、リーグ戦も後半戦負けなしで初優勝。惜しくもプリンスリーグ関東2部参入プレーオフは敗退となったが、春のような脆さはない。取り戻した自信を胸に臨む真冬のビッグトーナメント。目ざすはただひとつ、昨季の4強を超える優勝だ。
いよいよ12月28日に開幕する第103回大会。東京A代表となった堀越の初戦は12月31日の2回戦、相手は津工(三重)だ。4人のメンバーに本大会への意気込みを聞いた。
「去年はベスト4という結果を残すことができたのですが、全国的に強豪校と言われるようなチームに競り負けた。そういう悔しさは残っている。周りから去年は運が良かったと思われるケースもあったので、今年はどんなチームが相手でもしっかり戦いたい。格上のチームに対しても勝ち切れるチームを目ざしてきたので、最後の選手権でもそこは表現したいです。一戦必勝。全国制覇という大きな目標を達成できるように頑張りたいです」(竹内)
「選手権予選は難しい試合もあり、土壇場で追いつくような展開もありました。それでも、勝ち切って全国大会を決められたので嬉しい。チームとしては去年の成績を超えて、個人としてもプレーで貢献したい。自分は守備のプレーヤーなので失点をゼロにできるように取り組んでいきたいです」(渡辺冴)
「去年も選手権に出場させてもらい、今年はよりプレッシャーがかかり、期待もされていました。なので、決勝に勝利して出場が決まったときは重圧から解放された感覚がありました。個人的には去年の選手権はベンチが多かったので、もう1回チャレンジする権利を得られたので、どんな状況に置かれたとしても最善の策を見つけてチームに貢献したいです」(DF森章博/3年)
「堀越に入学して、自分で考えながらプレーする機会が増えました。やるべきことも明確化されて、戦術理解度も高まったと感じています。現状でプレー時間が延ばせていないので、アピールをして、自分が憧れている舞台に立てるように頑張りたいです」(DF長田真/2年)
「去年以上の結果を出すためには日本一しかない」と話すのは森奏だ。華麗なる復活を遂げた堀越は新たな景色を見るべく、最後の戦いに足を踏み入れる。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
【動画】堀越が延長戦を3対2で制す! 選手権予選・東京B決勝のハイライト映像をチェック!
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