人の恋愛関係や依存関係に、ある種の「気持ち悪さ」を感じてしまう人は少なくありません。そうした人と人とのいびつな関係をテーマにしたマンガの実写化ドラマでは、暴力表現や性描写とはまた違った「刺激」を楽しむことができます。



『鈴木先生』完全版DVD BOX (角川書店) (C)武富健治/双葉社 (C)「鈴木先生」製作委員会

【画像】え…っ? 「もう顔完成されてるやん」「超絶美少女」 こちらが物議の対象にもなった『鈴木先生』の土屋太鳳さん(当時16歳)です

TKO木下さんが恐怖の怪演!

 人の欲望や人間関係に深く切り込み、真正面から描いた作品は、人によって流血表現や性描写以上に「過激」に映るかもしれません。マンガ原作のドラマでも、これまでそうした「気持ち悪い」性質をもつ作品が作られてきました。

『鈴木先生』(2011年)

 2011年に放送された『鈴木先生』は、武富健治先生の同名マンガ原作の学園ドラマです。独自の教育理念を駆使しながら、生徒たちとぶつかっていく中学校教師「鈴木先生(演:長谷川博己)」の姿を描いた作品で、2013年には映画化も果たしました。

 ドラマ版は、中学生の性交渉をテーマに扱った衝撃の第1話から幕を開けます。ある日、鈴木先生の教え子が小学4年生の女の子に無理やり肉体関係を迫ったと連絡が入り、学校で話し合いの場が設けられることになりました。

 ところが話をよくよく聞いてみると、ふたりは「合意」のうえで行為に及んだそうで、さらには「いくつになったら性行為は認められるのか?」「学校で性教育を行う以上、中学生の性交渉を認めているのではないか?」といった点にまで話が発展していく……という内容です。

 またそうした問題を論理的に解決していく鈴木先生は、教え子の「小川蘇美(演:土屋太鳳)」に対して性的魅力を感じており、視聴者のなかには「気持ち悪さ」を感じた人も少なくないでしょう。しかし先生も生徒も「ひとりの人間」であること、そのうえでこれまでの教育論に対するアンチテーゼを投げかけた同作は、伝説の学園ドラマとして今なお語り草となっています。

『ホームルーム』(2020年)

 ウェブコミック配信サイト「コミックDAYS」で連載されていた千代先生のマンガ『ホームルーム』は、2020年に深夜ドラマとして実写化されました。主人公は爽やかイケメン教師「愛田凛太郎(演:山田裕貴)」で、いじめられている教え子の「桜井幸子(演:秋田汐梨)」を気にかけています。

 教え子を気遣う教師と言えば聞こえはいいですが、愛田はただの優しい先生ではありません。愛田は幸子に対して常軌を逸した恋愛感情を抱いており、ときに桜井の自宅に忍び込んだり隠し撮りをしたりと、その執着は回を追うごとにエスカレートしていきます。そんな事情を知る由もない幸子もまた、自分を守ってくれる愛田に恋心を募らせているのです。

 そして見どころは、なんといっても山田裕貴さんの変態じみたストーカー演技でしょう。その圧巻の演技と、身体を張った場面の数々は「山田裕貴、よくこの仕事受けたな(笑)」「山田裕貴のラブリンは原作に劣らずヤバかった」と視聴者から高評価を得ています。

『ぬらりひょんの棲む家』(2024年)

 マンガアプリ「peep」のオリジナルマンガ『ぬらりひょんの棲む家』は、縦型ショートドラマアプリ「SWIPEDRAMA」で実写化されたスリラー作品です。

 物語は、大学生の主人公「小山田和宏(演:小川佑)」の帰省から始まります。よそよそしい父母に、なぜか姿を消した祖父母など、普段とは違う家の様子に和宏は困惑を隠せません。すると突然、我が物顔で自宅をうろつく「沼尻」という大男が現れます。彼は小山田家に棲みつき、姑息な手段で家族を洗脳し、家の全権を掌握していたのでした。

 ぬらりひょんとは、勝手に他人の家にあがりこんで自分の家のようにくつろぎ、家主に「この人はこの家の主だ」と思いこませて追い出せないように騙す力を持つ妖怪です。そんな妖怪のような沼尻をお笑いコンビ「TKO」の木下隆行さんが演じており、原作から抜け出してきたかのようなビジュアルと演技力は「リアル沼尻」「いろいろあった後の木下さんのあの役は怖すぎる」と大きな話題になりました。

 木下さん本人も「絶対僕の事嫌いなります笑」と豪語する怪演は、一度観たら忘れられなくなるかもしれません。