200以上もの新作アニメが生まれた2024年。今年は「葬送のフリーレン」や「薬屋のひとりごと」といった前年からの続きものや「【推しの子】」「響け!ユーフォニアム」などの人気シリーズの最新作に加え、「勇気爆発バーンブレイバーン」「負けヒロインが多すぎる!」「ダンダダン」といった新作も好評で1年を通じてアニメ界が盛り上がったように感じます。
しかし、大ヒット作以外にも面白い作品があるというのはアニメファンならご存じでしょう。本稿ではそうした少し隠れた名作を探るため、アニメを週25本以上視聴し続ける“アニメ好き”100人以上を対象に「2024年の作品でもっと評価されるべきアニメは?」というアンケートを実施。放送/配信作品は5つ、劇場公開作品は3つまで挙げてもらってランキングを作成しました。まずは放送/配信作品のTOP3を紹介します。
TOP3
3位:HIGHSPEED Etoile(ハイスピード エトワール)
「HIGHSPEED Etoile」(「Etoile」のEはアキュート・アクセントを付したE)は近未来の日本で最高時速500kmオーバーの次世代レースに挑戦する少女・輪堂凜を描く“ハイパーアクションレースアニメ”。「ガールズバンドクライ」や「アイドルマスター シャイニーカラーズ」といった話題作と共に、“春クール金曜深夜のCGキャラもの”の一角となったオリジナルアニメです。
ぶっ飛んだ設定ながら意外とリアル志向なレースシーンも見どころですが、本作で特に評価されたのは、まるでギアを上げるかのごとく加速度的に面白くなっていく物語構成。「5話以降は尻上がりに加速していき春クールを駆け抜けていった」「序盤に描写された定石的なレース展開から、話数を重ねるごとに凛の型破りな気質が伝播していき、レース全体が変質していくさまが面白かった」「まるで追い上げからの逆転勝利のようなカタルシスが味わえる」と絶賛が相次ぎ、「どこか冷めた近未来カーレースシーンの状況を、破天荒な凛がレーサーたちに火をつけていく……という物語を考えると、ややスロースタートな立ち上がりも意図的なのでは」という推測も納得です。
また凛をサポートするAI・amiちゃんの勝利への渇望や人間だからできることを描いた第10話「最速のその先へ」を2024年屈指の神回として挙げる人も目立ちました。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
2位:変人のサラダボウル
「僕は友達が少ない」や「妹さえいればいい。」で知られる平坂読の同名小説をアニメ化したのが「変人のサラダボウル」です。岐阜県岐阜市に暮らす貧乏探偵・惣助と、異世界から転移してきた皇女・サラの出会いから始まる群像劇で、彼らのほかに女騎士やキャバ嬢(源氏名はプリケツ)、カルト宗教の指導者、鬼畜弁護士に別れさせ工作員といった“変人”の愉快な日々が展開します。
「変人たちを通じてセクキャバや転売屋、新興宗教、パチンコなどの街のクリーンでない部分に触れたり、かと思えば必ずしも正しくはない人々が街を回していたり、誰かの助けになっていたりする。このような変な人々が互いに対して冷淡でも過干渉でもなく適度な距離で関係し合っている街の様子が描かれる」という評の通り、意外にも社会派な本作。
ただしパロディーや時事ネタなんて序の口でパチンコ「海物語」をプレイする様子を実写で流したり、春クールに流行ったガールズバンドものとしては最高の到達点に達したり、果ては人種のサラダボウルであるニューヨークに街頭広告を出したりと基本的には笑えるコメディー。「素材のまま楽しむもよし、お好みのドレッシング(考察)をかけて食べるもよしのサラダボウル」といった懐の深さを感じられる「究極の日常系」「非日常系日常作品の金字塔」でした。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
1位:オーイ!とんぼ
「オーイ!とんぼ」は鹿児島のトカラ列島・火之島で育った、ゴルフの才能を秘めた中学生の少女・大井とんぼが主人公のゴルフアニメです。週刊ゴルフダイジェストというゴルファー以外にはあまり聞き慣れないであろう雑誌の連載マンガが原作ということで、放送開始前の注目度は決して高くありませんでした。しかしその内容の確かな面白さがアニメファンのハートを撃ち抜き、本アンケートで1位となりました。
本作の魅力については作風の変化を見るとわかりやすいでしょう。元プロゴルファーの五十嵐一賀(イガイガ)が火之島にやって来るところから始まる第1期は「田舎が舞台の暖かな成長物語に朝ドラ的なよさを感じられる」人情もの的なよさが強く、とんぼが熊本の高校に進学し、九州女子選手権でライバルとしのぎを削る第2期は競技ゴルフの奥深さがより味わえるようになります。
また、とんぼのゴルフの常識から離れた破天荒なプレイを、経験者でなくとも理解できるような丁寧な説明も大好評でした。なお本アンケートは2016年から行っていますが、朝に放送される作品が1位になったのは初めてのことです。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
10位~4位
10位:戦国妖狐、戦国妖狐 千魔混沌編
水上悟志によるバトルアクションマンガ「戦国妖狐」のアニメ版がトップ10入り。2024年に第1部と第2部の計3クール分が放送されています。
3クールと聞くと少し長いですが「途中で主人公(物語の視点)が変わるスタイルもあって、同作者が原作の『惑星のさみだれ』に比べるとダレずに視聴できている」「特に後半は第1部からの伏線の回収や少年誌的な王道展開で、毎週見終わったあとの充実感が高い」「『ガルクラ』『ユーフォ』などで今年大活躍だった脚本家・花田十輝の仕事のなかでももっと評価されていいのが本作」と満足している声が多数寄せられました。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
9位:先輩はおとこのこ
「先輩はおとこのこ」は女装して高校生活を送る“男の娘”の花岡まことを主人公に、彼を女性だと勘違いしたまま告白した後輩女子・蒼井咲、まことの幼なじみ・大我竜二の3人による人間模様やそれぞれの「好き」が描かれる青春ストーリー。フジテレビ「ノイタミナ」枠で放送され、2025年2月14日公開の「映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ」で完結します。
「男性か女性か。愛か恋か。正しいのか間違いなのか……相反する感情を両立させる描きが上手い」「他作品ではあまり深く踏み込まない性別の問題に真正面から悩んで、自分なりの答えを模索させた意欲作」「自分らしくあること、他人を思いやることについて、デリケートな問題に触れつつまとめた」とテーマ面の描きに加え、本作特有のデフォルメ表現も「暗くなり過ぎそうなシーンを緩和させた」「作画を省力化しながら見栄えのする画面になっている」と好評でした。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
8位:新米オッサン冒険者、最強パーティに死ぬほど鍛えられて無敵になる。
今年も数多かった「小説家になろう」関連小説を原作とするアニメで、唯一トップ10入りしたのが本作。30歳を超えながらも冒険者の道を志す主人公リックが、大陸最強パーティ“オリハルコン・フィスト”の師匠たちに鍛え上げられ、すさまじい成長を遂げるアクションコメディーです。
「本当にびっくりするくらい暑苦しい」「凡庸なろう系かと思ったら、まさかの熱血路線で心が熱くなった」「努力を怠らず邁進することで遅咲きでも何かを成せることを示してくれた」と熱血成長ストーリーとして高く評価されており、“なろう系”や異世界ものが苦手な人にこそ見てほしい一作でした。
7位:烏は主を選ばない
阿部智里による和風ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」を原作とした本作は、八咫烏の一族が住まう異世界・山内が舞台。美しくも風変わりな若宮に仕えることになった八咫烏の少年・雪哉が、陰謀渦巻く宮中でさまざまな事件に遭遇していきます。
本作は若宮の后選びが軸となる第1クールと新たな事件を巡る第2クール「黄金の烏編」の2クールありましたが、それぞれに異なる種類の緊張感がありスリリング。特に投票者からは「春ごろに『ユーフォ』『ガルクラ』『ヨルクラ』『トラペジウム』などの“女の子ギスギスアニメ”が席巻したなかで、その頂点に燦然と輝いた」という中盤の4人の王妃候補たちによる権力争いが大好評でした。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
6位:明治撃剣-1874-
2024年はアニメ制作会社・つむぎ秋田アニメLabが「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます」で脚光を浴びましたが、その前に放送された同社の「明治撃剣-1874-」がこのアンケートでは上位となりました。本作は西洋化の波が日本を飲み込もうとする1874年を舞台に、ポリスとなった元会津藩士の折笠静馬と、ヤクザの客人となった凄腕の剣士・修羅神狂死郎を軸に描くエンタメ時代劇です。
オリジナル作品で時代劇、しかも放送はBS松竹東急のみ(元は海外配信のみの予定だったとか)とかなりニッチな作品でしたが、その実態は「ストーリーこそ史実を元にしたシリアス寄りながら、日本かぶれの金髪サムライや人斬りヤクザ、はては西郷隆盛の影武者軍団なども次々と押し寄せてきてこれぞエンタメ」という快作。2024年は「十一人の賊軍」「侍タイムスリッパー」「SHOGUN 将軍」など実写方面で時代劇が熱かった1年でしたが、アニメでも「明治撃剣-1874-」があったことを忘れてはいけません。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
5位:喧嘩独学
スクールカースト最底辺の最弱高校生・志村光太が、不良相手の喧嘩動画を配信して成り上がるのが「喧嘩独学」です。いじめられっ子の逆転劇という王道の話に動画配信という現代らしい要素を組み合わせた作品で、「2024年は配信者を描く作品が多かったが、視聴者数が増えることにもっとも説得力があった」という声もありました。
「コミカルなシーンも多く、肩肘張らずに見られるのも魅力だった」「喧嘩もギャグもキャラクターの魅せ方も最高」「キムチでシバき合うホットな映像が見られるのはこのアニメだけ」と気軽に見られる作風も好評。努力する主人公の成長ストーリーとしても熱く、「小学生のころ、ラーメンマンの影響で砂場に手刀をし、怪我をしていました。大人になった今、志村の影響でカーフキックの練習をしています」という素朴なエピソードに首肯する人も多いでしょう。
Prime Videoで見る
U-NEXTで見る
dアニメストアで見る
4位:村井の恋
例年、集計期間の影響で秋クール作品は不利になりがちな本アンケートですが、10月放送開始(Disney+の独占配信は9月開始)の「村井の恋」が4位でした。本作は乙女ゲームのキャラクターに恋する高校教師・田中彩乃と、そんな田中に恋する男子高校生・村井によるラブコメディーです。
本作を語るのに欠かせないのが映像面で、投票者からも「かなり省エネ志向だが、見ていると不思議と“これでいい”と思わされる」「イラストを揺らすことでありとあらゆる動きを仕立て上げている本作は、省力でそれっぽく見せることを徹底的に追求していてすさまじい」と高評価。それもギャグ色強めの本作らしいものすごいテンポやハイテンションなキャストの演技とのマッチングが非常によかったおかげでしょう。
一方で「大体ギャグなのに最終話は本当に泣けた」というコメントも多数あり「泣けて笑える」ラブコメとして、2024年に傑作が多かった同ジャンルでも大きな存在感を放ちました。制作コストや期間を大幅に抑えられる“ライトアニメ”が「2025年ヒット予測100」の3位になるほど注目されていますが、同じ方向性の大成功例が早くも現れた感があります。
20位~11位はオリジナル作品多め
順位
作品名
20位
ダンジョンの中のひと
19位
エグミレガシー
18位
義妹生活
17位
月刊モー想科学
16位
真の仲間じゃないと勇者パーティを追放されたので、辺境でスローライフをすることにしました 2nd
15位
メタリックルージュ
14位
リンカイ!
13位
治癒魔法の間違った使い方
12位
Unnamed Memory
11位
となりの妖怪さん
20~11位には「月刊モー想科学」「メタリックルージュ」「リンカイ!」といったオリジナル作品が多めにランクインしました。声優の江口拓也さんが関わるカードゲームが原作の「エグミレガシー」もそうですが、フレッシュな顔ぶれと言えるのではないでしょうか。
11位の「となりの妖怪さん」は妖怪と人と神様がともに暮らす町が舞台のほのぼの怪異系日常もの……と見せかけて、意外過ぎる展開がちょくちょく出てくる不思議な作風で、ダークホースと呼ぶにふさわしい作品でした。
映画部門1位は「コードギアス」谷口悟朗の監督作
順位
作品名
10位
化け猫あんずちゃん
9位
i☆Ris the Movie – Full Energy!! –
8位
映画 ギヴン 海へ
7位
機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
6位
コードギアス 奪還のロゼ
5位
KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-
4位
きみの色
3位
トラペジウム
2位
数分間のエールを
1位
BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-
映画では2024年に公開された「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」が、2位以下に倍近いポイントを稼いで断トツの1位となりました。同作は「『ONE PIECE FILM RED』を手がけた谷口監督による、スピーティーかつ迫力のあるエンタメ映画」「サイボーグ×ヤクザ×吸血鬼の三つ巴! これぞ大きなスクリーンで観るべき!」などと高く評価されています。
その一方で、2023年のシリーズ作品「エスタブライフ グレイトエスケープ」が放送当時の配信が限定的だったうえに今回は映画ということでさらにハードルが上がったためか、あまり話題にならなかったことから「もっと評価されるべき」「『エスタブライフ』観ていなくても充分に楽しめるのに……」という声が集まりました。
ここまで紹介してきたのは、放送/配信作品は142本、劇場公開作品は44本に票が投じられたなかで上位になったものです。ハードなアニメ好きに好まれたということで、少し風変わりな作品もあるかもしれませんが、独自の魅力があるのは間違いありません。気になったものがあればこの年末年始にぜひチェックしてみましょう。
TOP20
1位:オーイ!とんぼ
2位:変人のサラダボウル
3位:HIGHSPEED Etoile(ハイスピード エトワール)
4位:村井の恋
5位:喧嘩独学
6位:明治撃剣-1874-
7位:烏は主を選ばない
8位:新米オッサン冒険者、最強パーティに死ぬほど鍛えられて無敵になる。
9位:先輩はおとこのこ
10位:戦国妖狐、戦国妖狐 千魔混沌編
順位
作品名
11位
となりの妖怪さん
12位
Unnamed Memory
13位
治癒魔法の間違った使い方
14位
リンカイ!
15位
メタリックルージュ
16位
真の仲間じゃないと勇者パーティを追放されたので、辺境でスローライフをすることにしました 2nd
17位
月刊モー想科学
18位
義妹生活
19位
エグミレガシー
20位
ダンジョンの中のひと
映画部門
順位
作品名
1位
BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-
2位
数分間のエールを
3位
トラペジウム
4位
きみの色
5位
KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-
6位
コードギアス 奪還のロゼ
7位
機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
8位
映画 ギヴン 海へ
9位
i☆Ris the Movie – Full Energy!! –
10位
化け猫あんずちゃん