人気マンガのアニメ化はファンにとって喜ばしい出来事ですが、原作の過激な部分が丸々カットされてしまうことも珍しくありません。ましてやコンプライアンスに厳しそうなNHKが放送局ともなれば、なおさらでしょう。しかし、ときにNHKは「本気」を見せてくれることがあります。
『チ。 ―地球の運動について―』ティザービジュアル (C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会
【画像】部屋が明るいと「まったく見えない…」 こちらが部屋を暗くして観たい『チ。』です(4枚)
開始早々「拷問」が始まったNHKの秋アニメ
何かとコンプライアンスの重要性が叫ばれる昨今、TVの規制もますます厳しくなっています。なかでもNHKは民放放送よりもコンプライアンスに厳しそうなイメージがありますが、むしろここ数年は、原作の過激シーンを惜しみなく再現してみせ、ファンを驚かせた例がいくつもありました。
まず最近でいえば、2024年の秋アニメとして放送された『チ。 ―地球の運動について―』が記憶に新しいのではないでしょうか。同作は第26回手塚治虫文化賞のマンガ大賞に輝いた魚豊先生の人気マンガが原作で、15世紀のヨーロッパ某国を舞台に、当時異端とされていた「地動説」を命がけで研究する人びとを描いた物語です。
原作の第1話は開始早々、異端審査官の拷問シーンからスタートします。椅子に縛りつけた異端者の爪を容赦なくペンチで剥がすシーンが展開されるため、放送前にはこの拷問シーンをNHKで放送できるのか不安に思っていたファンも少なくありませんでした。しかし、そうした心配は杞憂に終わり、拷問シーンはおろか、異端者の処刑シーンもしっかり描かれていました。
それ以上に衝撃的だったのが、アニメ『進撃の巨人』です。人類を捕食する巨人との戦いを描いた物語だけに、作中にはグロテスクなシーンが満載でしたが、そのなかでもひと際インパクトのあったシーンといえば、やはり「ロッド・レイス」の巨人化した姿ではないでしょうか。
通常の巨人の数十倍にも及ぶ巨体のせいで、立つことすらできないレイスは、うつ伏せのまま這いずって移動します。そして身体を起こしたときには顔と身体の前半分が削れてなくなっており、剥き出しになった体内から内臓がこぼれ落ちていました。
ちなみに当該エピソードは放送局がNHKに移行したSeason3からだったため、ネット上では件(くだん)のシーンに修正が入るのではないかと予想する人も多かったようです。しかし実際は原作以上に生々しくグロテスクな仕上がりで、当時ネット上で「これがNHKの本気!」と話題になったことは言うまでもありません。
現在第5シリーズまで展開されているアニメ『キングダム』も、映像化不可能と思われていた過激なシーンが再現され、話題を呼んだことがあります。その最たる例が、「黒羊丘の戦い」に登場した人間アーチです。
秦国の将軍である「桓騎」は、戦いを有利に進めるべく、敵国の村人たちを虐殺して彼らの死体を使って「アーチ」を作りました。それは、敵国の将軍でさえも凍り付かせるほどのおぞましい光景です。
それだけに丸々カットの恐れもありましたが、実際はカットされることはなく、第5期の12話「勝敗の夜更け」で問題のシーンが登場します。アーチがやや黒塗りになるという配慮こそあったものの、アニメ版でしっかり再現されたことに多くの視聴者が驚いていました。ちなみにパッケージ版や配信サイトなどでは、規制が緩和されたバージョンを見ることができるので、気になる人はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。