来年2025年から放送開始される『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』はスーパー戦隊シリーズ50周年記念作品ながら、シリーズとしては第49作にあたり、しかも「50番目」の戦隊といいます。どうしてカウント数にズレができたのでしょうか。



散りばめられた指輪「センタイリング」が本作のキーアイテムという。『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』キービジュアル (C)テレビ朝日・東映AG・東映

【お察しください】こちらが『ゼンカイジャー』の「センタイギア」です 歴代の戦隊がナンバリングされています(7枚)

50周年だけど50作目じゃないスーパー戦隊シリーズの不思議

 2024年12月25日、スーパー戦隊シリーズ50周年記念作品『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の概要が発表されました。2025年2月16日から放送予定とのことで、早くもファンの話題を集めています。そのなかにはさまざまな意見とツッコミがあふれていました。

 スーパー戦隊シリーズの第1号作品『秘密戦隊ゴレンジャー』が1975年に放送開始して、来年2025年で50周年を迎えます。つまり放送から半世紀の時が流れました。そのメモリアル作品として生まれたのが『ゴジュウジャー』というわけです。

 ここでカウントに疑問を感じた人はかなりの戦隊通でしょう。なぜなら『ゴジュウジャー』はスーパー戦隊シリーズ第49作で、50周年というカウントと微妙にズレています。これには大きな理由がありました。

 いまでこそスーパー戦隊シリーズは1年に1作品、これが定番となっています。ところが初期のシリーズはそうではありません。まず前述の第1作『ゴレンジャー』は全84話で、シリーズ唯一の2年間放送された作品でした。

 続けて放送されたシリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』は全35話で、戦隊唯一の1年に満たない作品です。さらに次回作となったシリーズ第3作『バトルフィーバーJ』まで1年以上、空白期間がありました。つまり1978年は唯一、現役のスーパー戦隊シリーズが放送されなかった時期でした。こういった複雑な事情から、周年と作品数が一致しないわけです。

 ところがご覧のように、『ゴジュウジャー』は「50」をその名に冠し、さらには今回の発表にあたって東映プロデューサーの松浦大悟さんが「50番目ではなく、ここから始まる新時代の第一号(ナンバーワン)!」、つまり50番目の戦隊であると述べています。繰り返しますが、本作はスーパー戦隊シリーズ第49作目です。

 その大きな溝を埋めたのは、シリーズ第42作『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』でした。

 この作品に登場した「快盗戦隊ルパンレンジャー」と「警察戦隊パトレンジャー」を別個の戦隊とカウントし、『ゴジュウジャー』が50番目の戦隊であり、50周年記念作品になったというわけです。

 もっとも、このカウント方法は今回からのものであり、以前のカウント方法とは異なっていました。例を挙げると、シリーズ第45作『機界戦隊ゼンカイジャー』で登場するアイテム「センタイギア」では、はルパンレンジャーもパトレンジャーもともに「42」と、同じ番号が振られています。

 つまり制作側が今回の『ゴジュウジャー』から新しく制定したスタンダードということでしょうか。これに困惑するファンもいるかと思いますが、筆者のような来年でロクジュウジャーの古参ファンには「またか」と思える出来事でした。



キービジュアルで主人公たちが手にしていたアイテム「テガソード」は、こちらの巨大ロボにも変身する (C)テレビ朝日・東映AG・東映

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数え方が時代とともに変化したスーパー戦隊シリーズ

 実はスーパー戦隊シリーズのカウントが変わるというのは、いまに始まったことではありません。過去にも何度かそういうことがありました。

 もともと第1作『ゴレンジャー』は、当然シリーズとして始まったワケではなく、第2作『ジャッカー』もパターンを踏襲したものの、明確にシリーズとして制作されたものではありません。まして、第3作『バトルフィーバー』まで1年の空白期間がありました。

 つまり作品がシリーズ化したのは途中からということになるでしょう。具体的にどこからシリーズ化されたかというのは個人の見解によるでしょうが、シリーズ第4作『電子戦隊デンジマン』からと考えるのが妥当かもしれません。

『デンジマン』は「戦隊」という単語を使ったうえ、色分けでヒーローを区別するという現在の戦隊の基本フォーマットとなった、『ゴレンジャー』以降で初めての戦隊です。また敵ボス「ヘドリアン女王」が次回作であるシリーズ第5作『太陽戦隊サンバルカン』にも登場し、その作品世界をつなげました。

 この『サンバルカン』以降から児童雑誌などで「スーパー戦隊シリーズ」という表記も出始めます。そういったことを振り返っていくと、このあたりからシリーズが始まったといえるかもしれません。

 もっとも、カウントの仕方は当時から定まっていたわけではなく、そこには複雑な事情もありました。というのも『ゴレンジャー』と『ジャッカー』は石ノ森章太郎(当時は石森)先生の原作による作品ですが、『バトルフィーバー』以降は「八手三郎原作」となっていたからです(「八手三郎」は東映のプロデューサーらの共同ペンネーム)。

 こういったことから、出版社によって見解は違っていたものの、現在のシリーズ第12作『超獣戦隊ライブマン』で「スーパー戦隊10th」ロゴマークが作られ、一度は正式にスーパー戦隊シリーズは『バトルフィーバー』が第1作とされていました。

 しかし、このスタンダードも時代とともに変化していきます。その後、シリーズ第19作『超力戦隊オーレンジャー』は「戦隊シリーズ20周年記念」と標榜し、それ以降は正式に『ゴレンジャー』がシリーズ第1作となっていまに至りました。

 こういった歴史的背景を振り返ると、古参ファンは「またか」と思うのも無理ないでしょう。いわゆる公式がそう決めたなら、それが「絶対」というわけです。

 もっともファンのなかには、「同じ番組内で登場しても別戦隊として扱うなら、第26作『忍風戦隊ハリケンジャー』に登場した『電光石火ゴウライジャー』の立場は?」という声もあります。ほかにも『非公認戦隊アキバレンジャー』を加えれば、『ゴジュウジャー』が第50作になるという乱暴な意見もありました。

 このように、放送前からファンの間で話題沸騰中の『ゴジュウジャー』、番組開始前のファンの熱量としては十分というところでしょうか。