CONTAX 645 Vol.23 [中判カメラANTHOLOGY]

憧れのAF中判一眼レフ

「CONTAX 645」それは歴史あるコンタックスの名を冠した唯一の中判カメラであり、なんと言っても「Carl Zeiss」ブランドの中判レンズがAFで使えるという、夢と憧れがつまった孤高の高級機である。

この美しいカメラは、女性でもしっかりホールドできるほどグリップが小さく設計されており、他社競合機とは方向性が異なっているようにも思う。

1999年に発売された本機を、今回はフェーズワンのデジタルバック「Phase One P30+」との組み合わせでお借りすることができた。いつものように作例を交えてお伝えしていきたい。

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紅葉を撮る

すでに12月に入っており時期を逃した感は否めないが、人生で初めて紅葉を撮りに出かけてみた。探してみると意外に見つかるものである。

 
  


Carl Zeiss Planar T* 80mm F2 / Phase One P30+ / ISO 100 1/250 F2.0
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Carl Zeiss Planar T* 80mm F2 / Phase One P30+ / ISO 100 1/125 F4.0
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このカメラの代名詞とも言えるのが「Carl Zeiss Planar T* 80mm F2」だろう。一般的な80mmよりも1段明るいだけでなく、オートフォーカスで使用できる645判標準レンズである。ツァイスブランドは絶大で幻想が膨らむレンズだが、絞り開放では少し甘く、こぼれ落ちそうな脆い描写を見せる。しかしF2.8で描写が安定し、F4辺りからピリッとエッジが立ってくる。基本的にはシャープさを優先させた現代レンズという印象を持った。

普段はそれほど絞りを開けて撮ることはないが、今回は意識して絞りを開け気味にテストしてみる。F2.4~F3.5辺りでの描写が(ピントさえ合えば)なんとも言えない味があり筆者の好みである。44×33センサーのデジタルバックを使用したせいもあるが、少し絞り込むとシャープだがどこか平面的な描写になってしまうように見える。

 
  


Carl Zeiss Planar T* 80mm F2 / Phase One P30+ / ISO 200 1/125 F6.5
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筆者はこれまで「紅葉を写真に収めたい」と思ったことが一度もなく、仕事でない限り、皆がこぞって撮影する桜やイルミネーション、観光名所などの撮影にも基本的に興味がない。だがこの記事作例をキッカケに、自分から「探して」みると、やはり美しいものだと感じるし、紅葉に目を輝かせる家族連れの姿は、あまりにも眩しく映る。

 
  


Carl Zeiss Planar T* 80mm F2 / Phase One P30+ / ISO 200 1/125 F9.5
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余談だが、植物の葉が緑色に見えるのは、光合成に必要な色素のひとつ「クロロフィル」が大量に含まれているため。気温が低くなり光合成を休止することでクロロフィルが分解され、隠れていた他の色(イエローやオレンジ)が顔を出す。つまり色が変化して見えるのはグリーンの色素が抜けてしまうから、ということになる。

その上で、カエデやモミジが赤く染まって見えるのは、アントシアニン(低温から身を守る)という色素が合成されるからだそうだ。植物が冬に備える姿が、結果的に季節の風物詩となっているわけだ。

 
  


Carl Zeiss Planar T* 80mm F2 / Phase One P30+ / ISO 200 1/125 F8
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