タレントポートレート
新潟で活躍するタレント・芦川玲一さんと所属事務所(中田写真事務所)に協力いただき、CONTAX 645での人物撮影のテストを行った。
使用したレンズは「Carl Zeiss Planar T* T* 80mm F2」と「Carl Zeiss Sonnar T* 140mm F2.8」の2本。
1999年発売ということで覚悟していたものの、AFは思ったよりも実用的、というのが感想だ。風景と人物撮影では求められる要素が異なるが、趣味での撮影ならばそれほど問題にはならないだろう。特に近距離でのAF精度は高いと思うが、悪条件でもないのに迷いつづけることもある。一度ピントを合わせた後で、別の近い位置に合わせ直そうとするとAFが動作しない症状があり、完全にピントを外してから再度AFを動作させる対策をとった。
多かれ少なかれ、この辺りは中判AF機では仕方のない部分もあるが、やはり2010年以降にもデジタル前提で進化をつづけた他社モデルと比べると我慢を強いられる面はあった。逆に1999年のカメラとしては非常に完成度が高いと思う。
普段は半押しでAFが駆動する設定で使うのだが、迷うことが多いのでMFモードに変更、親指でAFを併用して撮影することになった。プラナー80/2は開放が甘い描写のため、ファインダー上でもピントが掴みづらいというデメリットがある。
140mmのゾナーも優秀なレンズで、個人的には好みの写りである。しかし本当に人気がないようで、かなり安価で入手できるらしい。特にフィルムや645フルフレーム機で人物を撮影する場合は、使いやすくオススメできるレンズだ。
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デジタルバックの入手性
今回セットでお借りしたデジタルバックは Phase One P30+。中判センサーの中では小さな44×33mmサイズで、3100万画素のコダックCCDを搭載している。またフェーズワンの中で唯一マイクロレンズを搭載し、CCDなのに高感度にも強めで、モアレが発生しにくい点がウリの機種でもある。
筆者はP30+をはじめて使用したのだが、今回の作例はこのコダックCCDセンサーの個性が強めに出ていると思う。RAW現像の際にもかなり癖を感じたこともあり、装着するデジタルバックによってテイストはかなり異なってくると思われる。
また、44×33は今話題のフォーマットでバランスの良い大きさだが、今回のように元々645規格のカメラに装着すると、かなり画角が狭くなってしまう。慣れの問題ではあるが、いつもの感じでカメラを構えたあとで、ファインダーマスクを頼りに数メートル下がって撮影することが多かった。こうして撮影する距離が変わり、画面中央がクロップされることで、レンズ描写の印象も随分変わってしまっただろう。
もちろんフィルムと同じサイズ(645フルフレーム)のデジタルバックを使用するのが理想だろうが、CONTAX用(Cマウント)のデジタルバックは元々数が少なく、2024年現在では入手困難、あってもかなり高額になってしまうのが現状である。
ちなみにフェーズワンはIQ2シリーズまで、CONTAX用のバックをラインナップしていたようだ。
まとめ
中判一眼レフカメラのAF化は、1997年の「PENTAX 645N」に始まり、1999年の「CONTAX 645」と「Mamiya 645AF」、2002年の「Hasselblad H1(富士フイルムGX645AF)」と展開していくが、モデルチェンジが一度もなかったのは本機だけで、設計時にどこまでデジタルバックでの使用を想定していたかも不明である。
にも関わらず、趣味用途には十分の使い勝手をもっており、京セラの技術力がここまで高かったのかと驚く結果になった。またフェーズワン・マミヤやハッセルブラッドHシステムが業務用の側面が強いのに対し、実用性だけでなく嗜好品としての要素が強く反映されているように思う。
CONTAXとCarl Zeissの絶大なブランド力と、憧れの名機を使う満足感。無駄のないスタイリッシュなデザインは眺めるだけで楽しく、写真を撮っても楽しい。
道具としての所有欲を刺激される、とても困ったカメラである。