カルロス・サインツJr.は、2024年限りでフェラーリを離れ、2025年にはウイリアムズのマシンを走らせることになっている。厳しい言い方をすれば、今のウイリアムズはトップチームには数えられず、サインツJr.としては”都落ち”の印象も強い。
このことについて、これまでサインツJr.のチームメイトを務めてきたシャルル・ルクレール、そして2024年の最終戦アブダビGPで勝利を争ったマクラーレンのランド・ノリスが発言。サインツJr.が加入することは、ウイリアムズが復活する一因になるかもしれないと語った。
F1アブダビGP決勝レース終了直後の公式記者会見で、壇上のノリスとルクレールに対して、こんな質問が投げかけられるというシーンがあった。
「来季、サインツJr.が予選や決勝で上位を争わないのは寂しいかい? こんなに優秀なドライバーが、F1のトップチームから離れてしまうことをどう思う?」
その問いに対して、ノリスはこう答える。
「カルロスがいなくなると、寂しいね」
しかし横にいたサインツJr.は、間髪入れずにこう発言する。
「寂しくないでしょう? その方がいいんじゃない?」
するとノリスは「彼がもう速いマシンに乗っていないなんて、嬉しいことだね」と返すと、サインツJr.が「一人減るから……」と喋り続けるのを遮るように、ノリスは次のように続けた。
「いや、だって次に加入するドライバーも、かなり素晴らしい人だからね」
サインツJr.がフェラーリのシートを失った理由は単純だ。ルイス・ハミルトンがそのシートを熱望したからである。ハミルトンは7回チャンピオンに輝いた、今や伝説的なドライバーのひとり。そんな人物でも、フェラーリに乗るというのは憧れなのだ。
ウイリアムズも、かつてはフェラーリ以上の権勢を誇り、何年も連続でチャンピオンを獲得したこともある。歴史的に見ても5番目の多くの勝利を挙げており、コンストラクターズタイトルの回数でいえば、マクラーレンと同数の2位タイ(9回)である。メルセデスやレッドブルよりも多いのである。
しかし優勝は、2012年のスペインGP(パストール・マルドナド)以来途絶えている……この時だって、8年ぶりの優勝だった。そして近年では、コンストラクターズランキングでは下位が定位置となってしまっている。
ただノリスは、サインツJr.が加入することで、ウイリアムズが復活への足掛かりを掴むことになるだろうと考えている。
「彼はアブダビでも良い戦いをしてくれた。その日の朝のミーティングでも、僕らは『カルロスに気をつけよう』という話をしていたんだ。彼がどんどん攻撃してくると、覚悟していたからね」
「彼はきっとトップ争いに戻ってくる。ウイリアムズも、近年では大きく成長しているけど、トップチームから本当の意味での経験を持っているドライバーがやってきたことは、これまでほとんどなかった。カルロスは間違いなく、チームを前進させる力になるだろう」
「彼らといつ戦うことになるのかわからない。2026年は、(レギュレーションが大きく変わるから)何だって起こり得る。ウイリアムズが突然トップに立つ可能性だってある」
ただサインツJr.という高いパフォーマンスを持つドライバーが、たとえ一時的にであれ、トップチームから退かねばならないことは、残念なことだとノリスは言う。
「彼はF1で十分な実力を発揮している。良いシートに値すると思う。だからこそ残念なんだ。優勝はチャンピオンを争うに値するドライバーだから、そのチャンスを失ってしまうのは残念だね」
「でも彼のシートを欲しがったのは、F1で一番の有名人だから……ルイスがシャルルと、そしてフェラーリでどんなパフォーマンスを発揮するか、将来分かるだろう」
「でもとにかく、彼(サインツJr.)の実力を疑う必要はない。彼の時代がまたやってきて、ウイリアムズがトップに返り咲くのを手助けするだろうと確信している」
これまでサインツJr.のチームメイトを務めてきたルクレールも、ノリスと同様にサインツJr.の力を評価。その存在が、自分自身を強くすることにもつながったと語る。
「カルロスは信じられないほどの才能に恵まれていると断言できる。彼の仕事に対する姿勢、才能、彼のあらゆる面が、僕を成長させてくれた」
「彼がチームメイトじゃなかったら、僕は今のようなドライバーにはなれなかったと思う」
「僕らがこの4年間でこれほどの成長を遂げることができたことを、カルロスに大いに感謝すべきだと思う。彼はとにかくすごく速かったんだ」
そしてサインツJr.がウイリアムズを復活させる可能性があると、ノリスと同じように語った。
「F1では、説明できないことがある。適切なタイミングで適切な場所にいられるかどうかは、運も関係するからね」
「でも彼はマシンの小さな変化やフィーリングにとても敏感だから、ウイリアムズに多くのモノをもたらすことになるだろうと思う。きっと、将来に役立つ貴重なフィードバックとなるはずだ」
「彼がグリッドの上位に戻ってくることには、疑う余地はない。彼はそれに値するし、そのことは誰もが知っていると思う」