「TikTok TOHO Film Festival 2024」アンバサダーの三吉彩花が縦型映画の未来に期待!「世界に発信するTikTokからスターが生まれてくれたらいいな」

ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」と東宝が開催する縦型映画祭「TikTok TOHO Film Festival 2024」。今年で4回目となる本映画祭には、約400の幅広いジャンルの応募作品が投稿され、11月22日に実施された審査会にてファイナリストに17作品が選出された。グランプリは映画祭4回目にして史上初のアニメ作品となる『遊園人』(監督:一寸先はおじ)が受賞し、12月19日には授賞式が開催された。MOVIE WALKER PRESSでは、本映画祭でアンバサダーと審査員を務めた三吉彩花にインタビューを実施。「縦型映画」という新しい映画のカタチ、さらにはそこに募った新たな才能を開花させたクリエイターたちへの想いを語ってもらった。


グランプリを受賞した『遊園人』(一寸先はおじ) / 「TikTok」より

■「いろいろと違う目線の話を聞くことができてすごく勉強になりました」

映画監督の萩原健太郎、プロデューサーの岡村和佳菜、女優でプロデューサーのMEGUMI、映画感想TikTokクリエイターのしんのすけら、ほかの審査員たちと熱い審査会を行ったという三吉は、充実感を滲ませる。「普段は俳優としてカメラの前に立って演じる側なので、各方面で活躍されているプロの方が集い、いろいろと違う目線の話を聞くことができてすごく勉強になりましたし、純粋に楽しい気持ちで審査をすることができました。本当におもしろかったです」と振り返る。授賞式でも熱い審査会での様子に触れ、「審査員の皆さんとはほぼ、初めましてなのにとにかくたくさん話した!」と審査員同士が思い出し笑いをする場面もあった。「だいぶ熱く語りました(笑)。萩原監督はいわゆる横型、従来の作品を撮っている方なので、縦型ならではの新鮮さや難しさ、どのように撮っているのかが気になっていたようです。確かに横だと全体的な景色は捉えられるけれど、縦になることでフォーカスするものがすごく限定的になります。そういった部分は横型に慣れている私自身も気になった部分でした」と、共感ポイントを明かした。


【写真を見る】三吉彩花が期待!世界に発信するTikTokから「スターが生まれてくれたらいいな」 / 撮影/興梠真帆
審査員としてたくさんの縦型映画に触れた三吉だが、縦型動画に触れる機会は増えてきたものの、縦型映画となると、まだそこまで馴染みがないという。「気にはなるけれど、正直、どういう感じなんだろうという想いがまだ強いかもしれません。私はASMR動画(聴覚や視覚を刺激して、心地よさなど反応、感覚を促す動画) が結構好きで、気づけば何時間も観ていた、なんてこともよくあります(笑)。縦型映画同様、ASMRもどこにフォーカスするのか、なにをどのくらい見せるのかによって全然違う作品になるという印象があります」と審査を通して発見した縦型映画とASMRの“見せ方”“作り方”を指摘。多種多様な縦型映画に触れたことで、縦型動画を観る際の視点が変わるような気もしているとも話した。

■「私自身は作るよりも出演するほうに断然興味があります!」


縦型映画に触れて感じたこと、考えたこととは / 撮影/興梠真帆

短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」で「変化」をテーマにした短編『inside you』(21)で監督デビューも果たしている三吉。縦型映画に興味は出たものの、制作するとなると「話は別!」と苦笑い。「グランプリを受賞した『遊園人』の一寸先はおじ監督は、一人で作品を作り上げています。私が以前制作したのは12分のショートムービーでしたが、決して一人ではできなかった作品。本当にたくさんの方々の力をお貸しいただいてでき上がったものなので、一人で作品を完成させるなんて想像がつきません。今回の応募作品のクリエイターの皆さんを心から尊敬しています。私自身は作るよりも出演するほうに断然興味があります!」と、制作の大変さを知っているからこそのコメントもあったが、もし縦型映画で監督に挑戦するなら、大好きな写真を活かしたテーマを選びたいという。「日本だけでなく海外に行っていろいろな写真を撮るのが好き。ただ、人物はあまり撮らずに、景色や色、物質など人の表情“以外”をカメラに収めることが多いんです。チャレンジするなら、人の顔は映らない、例えば、手の表情や足の動き、それに関わってくる色や景色、そういうものなら挑戦できるかも…という想いはありますが、あくまでアイデアで具体的なイメージは正直湧かないです」としながらも、自分がテーマにしたもの、フォーカスしたものが観る側にどのように伝わり、どのような感想を持たれるのかが気になる点だとし、「スマートフォンサイズの縦型だからこそ、抑揚をつけられるおもしろさのようなものがあるのかなとも感じました」と補足した。


縦型の構図をうまく使っていると評価された『遊園人』(一寸先はおじ) / 「TikTok」より
縦型ならではのテーマ決めがあり、その可能性は無限大だとも話す三吉。「審査会では『遊園人』は縦型であることをうまく使っていると盛り上がりました。劇中の釣りの描写は縦だからこそうまく見せられるものだし、釣竿が画面の真ん中に来ることによってバランスも取れる。縦型ならではでおもしろいと話題になった作品のひとつです」と審査員すべての票を獲得し、満場一致でグランプリに輝いた『遊園人』の巧さに触れる。


「きみの色」賞を受賞した『僕の春は何色』(モント) / 「TikTok」より
個人的には映画『きみの色』(24)で描かれる「それぞれの“色”を尊重したい」というテーマをもとに設立された、「きみの色」賞を受賞した『僕の春は何色』(監督:モント)も好きだと明かす。「短くてキャッチー。上手に青春を取り入れていると思いました。いろいろなことを考えさせたり、たくさんの要素があることで魅力的に見える作品も大好きですが、縦型ならではのパッとわかりやすいところ。ちょっと殴り書きのような部分にも、クリエイターの背景が見えた気がしておもしろくて好きだと思いました」。

■「世界に発信されているTikTokからスターが生まれるようなことがあったらいいなと期待しています」


縦型映画の制作より出演に興味津々! / 撮影/興梠真帆
授賞式でのトークセッションでは、従来の横型映画では出てこない様な着眼点や新ジャンルの作品の誕生にも期待できるというコメントと共に、キャッチーな言葉も審査員たちから飛び出していた。 そういった新しい言葉の表現が生まれるのも縦型映画ならでは。審査会ではどうだったのだろうか。「審査会の様子を言葉で表すならキャッチーというより“リアル”です(笑)。まずは一人ずつ自分がどの作品が好きなのかをホワイトボードにまとめていき、票を集めて、議論していくスタイル。そこからそれぞれの視点から感想を熱く語り合っていきました。私自身は直感的に惹き込まれる作品を選出しました。普段からクリエイターとして活動されている方々、例えば岡村さんであれば、CGの使い方、撮り方、表現手法など細かいところまで見ていたし、しんのすけさんからはテロップの位置や文字の大きさ、わかりやすくキャッチーであることなど、さすがTikTokの玄人という感じのコメントが出ていて、いろいろな目線を知ることができ本当におもしろかったです」。

今年で4回目の開催となり、初のアニメ作品がグランプリを獲得。授賞式では縦型映画の可能性や未来への期待についてもトークが展開した。「TikTok 上半期トレンド大賞2024」では“ショートドラマ”という単語が大賞を受賞し、広告としてショートドラマが作られる機会も増えたことにより縦型映画への注目度も高まっている。そのような流れのなか、映画祭でアンバサダー、そして審査員を務めた三吉が縦型映画の未来に期待することとは?

「移動時間や隙間時間など、短い時間でも没入できるのは縦型映画ならでは。気づいたらすごく集中して観ていたり、ケラケラと笑っていたり。自分の日常にとてもいいエッセンスを与えてくれるものになっていったらいいなと思っています。クリエイターの方々にとってもジャンル問わず無限大に可能性があるし、世界に発信されているTikTokからスターが生まれるようなことがあったらいいなと期待しています。最初から長編を撮るのももちろんいいけれど、長編への入り口としてトライしやすいショート動画から入るのもすごくいいことだと思っています」とおすすめ。最後に、三吉に今回の「TikTok TOHO Film Festival 2024」での経験を活かして、縦型映画への出演の可能性があるのかどうか尋ねてみると、「授賞式中のモニター越しで初めて監督の素顔を知ることができました。審査員の皆さんと『こういう人だったのか』『あの作品を撮りそうなイメージ!』などと盛り上がりました。作品を観るだけでなく、監督のみなさん一人一人にいろいろとお話したいと思いましたし、機会があれば私も出演してみたいです!」。

取材・文/タナカシノブ