急逝した桂雀々を偲んで
独演会を終えたかい枝が、心境をこう語りました。
「最初からお祝いムード満点の感じで、本当に祝いに来てくれているという空気がビンビン伝わってきました。文楽も、二葉さんも鶴瓶師匠も、お客さんも、みんな縁の深い方々だったので、本当に一体化していたと思います。『芝浜』も下ろしたところなので、そんなにやり慣れていないのでおっかなびっくりやっていましたが、お客さまがいいように反応してくださった。いまは、よくぞ30年やらせてもらえたなという感謝の気持ちでいっぱいです」
また、『芝浜』での照明や雪などは落語作家・小佐田定雄のアドバイスを受けた演出だと続けます。
「今日だけの『芝浜』にしようということで、あんな形でやらせてもらいました。客席の照明を真っ暗にしたのは、僕がビビりだからです。お客さんの顔が見えたら『おお……』ってなるから、真っ暗にしてもらったんです。そしたら今度はどこを見てええか、わからへんようになって(笑)」
そして最後の涙の理由について、こう明かしました。
「なんとか無事にサゲまで行けたという安堵感が大きかったのと、サゲを言ったときにお客さんがドーッと拍手してくださったのと、(お客さんの)すすり泣きの声も聞こえたので、伝わったのかなという感覚もあったりして、ホッとしました。出囃子もうちの師匠の出囃子だったので、師匠のことも思い出しました。『よう弟子にしてくれはったなぁ』という思いもふと湧いてきて、思わずウルッときました」
出典: FANY マガジン
この日、観客に配布されたチラシには、11月に急逝した桂雀々と来年1月11日(土)に大阪・天満天神繁昌亭で開催予定だった『雀々・かい枝 新春二人会』の告知も記載されていました。「“二人会”は追善公演にしたいと思います」と言及したかい枝は、次のように話します。
「あまりに突然のことだったので、びっくりしました。二人会を予定していたし、『さくらんぼ』のお稽古をしてもらう予定もありました。雀々師は僕にはものすごく心を開いてくださって、仲良くしてくださりました。上方の古典落語の面白さをあれだけ伝えられる人はそうそういないと思うので、本当に残念でしかないです」
かい枝は最後に、こう意気込んで締めくくりました。
「また来年もNGKでいろんな噺家が出る落語会をやりたいなと考えています。吉本所属の落語家はNGKで独演会ができるという形にして、後輩もそれを目標に頑張るようになったらいいなと思います。個人的には、NGKにもうちょっと出たいですね。1週間の出番で出て、独演会も定期的にやりたいです。あと、看板芸人になるのも目標です」