[高校選手権・1回戦]東福岡(福岡)0(5PK3)0 尚志(福島)/12月29日/NACK5スタジアム大宮
PK戦に自信はなかった。しかし、そんなことを言っている場合ではない。東福岡の守護神、後藤洸太は無我夢中でボールに飛びつき、チームを勝利に導く活躍を見せた。
12月29日、1回戦屈指の好カードとなった東福岡と尚志の一戦。前者はU-18高円宮杯プレミアリーグWEST、後者は同EASTに籍を置いており、初戦で対戦するにはあまりにも惜しい対戦となった。戦前から注目を集めていた戦いは、互いに好機を活かせずにスコアレスで80分を終える。勝負の行方はPK戦に委ねられた。
そこでヒーローになったのが、191センチのサイズを誇る後藤だ。
試合の最終盤には「PK戦になるなって思っていました」。だが、PK戦は不得意。今年の公式戦で唯一経験した1月下旬の県新人戦・準決勝(福大若葉/0-0、0PK3)でも相手のPKを止められなかった。
不安はあった。それでも、PK戦が始まる前に神山竜一GKコーチからかけられた「自分が決めたところに思いっ切り飛べばいい」という言葉で迷いが消えた。
心は決まった。「相手のゴールキーパーがいろんな駆け引きをしてきたけど、自分は特に何も考えないようにした」という後藤は自分のプレーに集中。PK戦を見据え、終了間際に投入された相手のGK針生東が独特の動きでキッカーを惑わせてきたが、それにも動じない。
だが、3本目まで止められず、脳裏には「またか」とよぎる。それでも、自分を信じ、迎えた4本目。ここまでゴールライン上で決まったルーティーンをしてきた後藤は動きを変え、相手のキッカーに近づいて圧をかけた。
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「相手の嫌なタイミングに持ち込めば、相手も集中を切らして、焦れる。(神山GKコーチに)そう教わったので実践してみました」
その策が見事に的中。尚志の4人目のPKを右に飛んで止めると、5人目の齊藤琉稀空が決め、決着がついた。
勝利を引き寄せるセーブを見せた後藤だが、昨季まではセカンドGK。出番を得られていなかったなかで、9月に神山GKコーチと出会った。福岡などで活躍した元Jリーガーと二人三脚で鍛錬。新チームが立ち上がってからはレギュラーとしてピッチに立ち続け、右肩上がりで成長を続けてきた。後藤の変化を神山GKコーチは「もっとやってほしい」と注文をつけたうえで、こう話す。
「メンタル的な部分も成長したし、技術的な部分でも良くなった。何より、今年はよく喋るようになりました。普段は陽気なキャラでも、ちょっと自信なさげにプレーしていたけど、試合に出続けたことで自信が得られたと思う」
課題だったステップワークも大幅に改善され、動きも軽やかになった。素材は一級品。「あの身長があれば、プロを目ざせる。まだまだ成長段階。今年で卒業だけど、大学に行って頑張ってほしいですね」と神山GKコーチからエールを贈られた守護神の挑戦はまだ終わらない。
高校最後の大舞台でどこまで自分の力が発揮できるか。さらなる高みを目ざし、次戦も“赤い彗星”のゴールマウスを守り抜く。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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