［高校選手権・１回戦］大津（熊本）４－０ 福井商（福井）／12月29日／県立柏の葉公園総合競技場

　高円宮杯プレミアリーグ王者であり、今大会の優勝候補筆頭の大津の前に立ちはだかったのは、福井商の６バックだった。

「５バックは想定していたのですが、６バックはさすがに想定外でした」と山城朋大監督が口にしたように、福井商は６バックの前に３ボランチを並べ、前線にFW平田海成を置く【６－３－１】という守備システムを敷いてきた。

　この極端な戦い方に対し、大津は立ち上がりからハーフコートゲームをしながらも、攻めあぐねた。「どこに行っても相手がいた」とエース山下景司が口にしたような状況下で、CB五嶋夏生は冷静だった。

「昨年の選手権初戦も１－０、今年のインターハイ初戦は阪南大高に０－３と負けているので、初戦はどんな相手でも難しくなることは分かっていました。僕も６バックは想定外でしたが、大事なのは攻撃の枚数を減らさないこと、全体のラインを下げないことを意識しました」

　五嶋は嶋本悠大と畑拓海のダブルボランチや、大神優斗と野口悠真の両サイドバックにも常に高い位置を保たせて、CBでコンビを組む村上慶にも果敢にミドルや前を狙っていくように促した。

　２バック、いや１バックという状況にして五嶋は、どれだけチャンスを逃しても「問題ないぞ、続けろ、続けろ！」と周りにポジティブな声をかけ続けた。

　同時に「一発カウンターはどこかで必ずあるからこそ、僕は常に守備のことを考えていました」と、相手のアバウトなクリアボールに対しても、常に前向きで拾ったり、背後に行っても持ち前のスピードとボールコントロールのうまさを発揮してボールを回収したりと、２次、３次攻撃の起点にもなった。
【動画】大津MF兼松将の鮮烈ヘッド弾で先制！
　前半36分に長身MF兼松将の高い打点のヘッドでゴールをこじ開けてからも、「一発の怖さは常に持っていましたし、追加点を取るまで絶対に焦れない、リスクを背負ってでも奪いに行く姿勢は変わらないという気持ちでいました」と、一息つくことなく、確実に勝負を決めるまで変わらぬ集中力を持ち続けた。

　後半16分、この試合唯一と言える福井商のカウンターがあった。左サイドでボールを奪われると、そこから中央、右サイドへと繋がれた。右でボールを受けたMF谷口櫂我がカットインを仕掛けた瞬間、五嶋は裏のスペースに抜け出そうとした相手の動きを読んで、先にスペースに入ってスルーパスをカット。福井商のチャンスの芽を摘み取った。

　後半21分に途中出場のFW岩中翔大が２点目を挙げると、そこからは同30分に山下、後半アディショナルタイム３分にこちらも途中出場のMF溝口晃史が得点を重ねた。終わってみれば相手のシュートを０本に抑え、29本ものシュートを浴びせての４－０の完勝。

「４－０はよくできた方だと思います。ベンチから山城監督の指示が出ていたので、それを頭に入れながらプレーできました。次からはもっと気の抜けない試合が続くので、しっかりと切り替えてやっていきたいです」

　相手に全く隙を与えない五嶋の存在は、大津の選手たちにとって、とてつもなく大きい。ユース年代で真の日本一のチームのディフェンスリーダーとして、これからより輝く準備はきっちりとできている。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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