キン肉マン原作45周年、アニメ化40周年を記念した『愛と絆の原画展』が、2024年8月「池袋サンシャイン」で、11月には「心斎橋オーパ」で開催された。『キン肉マン』最新87巻の発売を1月4日に控えたこのタイミングで、会場で販売された「公式図録」より、業界イチの『キン肉マン』好きで知られる事件記者が執筆した「もしも週刊誌事件記者がキン肉マンの原稿を書いたら…キン肉王室史上類をみない大スキャンダル、“王子取り違え疑惑”」を公開する。(前後編の後編)
「オレにもよくわからないんだ…」〝神ハラ被害者〟ともいえる5人の候補者
〈西暦1960年4月某日。地球から500億光年離れたキン肉星の第8病院が、猛火に包まれた。大混乱の中、キン肉星の王子スグルを含む6人の赤ん坊は、それぞれの母親に救出されたが……。24年後、邪悪の神5人が〝新生児取り違え疑惑〟を指摘し、スグルことキン肉マンに王位争奪サバイバル・マッチを仕掛けた〉
キン肉星人ホルモン族のある幹部が振り返る。
「当時のキン肉星では、赤ん坊取り違え疑惑を解決する『超人DNA型鑑定』の技術はまだ確立されておらんかったんじゃ。一方で、宇宙船を利用した星間移動の手段は、地球における海外旅行並みの手軽さで、庶民にも浸透しとった。
王位継承候補者たちは、宇宙の星々に散っておったんじゃが、神の力をもってすれば、彼らを捜し出すのは造作もないことじゃわな。彼らの背中に、キン肉王族ら一部の階級にしか現れない『KIN』マークを輝かせることさえも……」
邪悪の神5人は、キン肉マン以外の5人の候補者にそれぞれ憑依して、王位争奪戦に介入。その面々は――。
キン肉星に残って病弱な母と倹しい生活を送っていたフェニックスマンが、知性の神に選ばれた「キン肉マンスーパー・フェニックス」に。とある星の子沢山農家で成り上がりを目論んでいたパワフルマンは、技巧の神の力を借りて「キン肉マンゼブラ」となり、戦場で殺し合いに明け暮れていたソルジャーマンは、残虐の神と融合して「キン肉マンソルジャー」に姿を変える。
また、開拓者として生きる一人称「オラ」のストロングマンは、剛力の神が乗り移った「キン肉マンビッグボディ」と化し、モクテスマ星や地球で窃盗を繰り返していた盗人のジョージは、飛翔の神を宿した「キン肉マンマリポーサ」に転身した。
彼らはみな、ある日突然、神からキン肉王家の血を引く可能性を告げられ、人生を翻弄された〝神ハラ被害者〟ともいえた。これを不遇な人生から脱するチャンスと捉えた者もいれば、戸惑いながら戦いに身を投じた者も。ビッグボディは、対戦相手のスーパー・フェニックスから王位継承者としての資質を問われると、思わずこんな本音を漏らす。
「オ……オレにもよくわからないんだ。剛力の神にそそのかされてムリヤリ出場させられたんだ」
配下のメンバーも壊滅させられていたビッグボディは、その直後、スーパー・フェニックスのフィニッシュホールド、キン肉族三大奥義の一つ「マッスル・リベンジャー」によって自慢の石頭を砕かれ、見せ場もなく退場していった。
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瞬間的に最強の超人強度をもった超人…
数々の名場面を生み出しながら、6チーム総勢30人余が入り乱れて戦った王位争奪サバイバル・マッチは、テレビ放送で最高視聴率63.9%を記録。結果として、スグルが新キン肉大王の座を勝ち取ったのは、史実が示す通りだ。
邪悪の神々の真意はどこにあったのか。王位争奪戦を取材した「週刊HERO」の翔野ナツ子記者が総括する。
「邪悪5神が王位争奪戦を仕向けてきた動機は、キン肉マンが持つ火事場のクソ力にありました。キン肉マンの超人強度は95万ですが、火事場のクソ力を発動した場合、超人タッグトーナメント決勝の時点で、そのパワーは7000万ほどに到達していたそうです(※コミック24巻より)。
しかも、まだのびしろを残していそうだと。このまま放置して、いずれキン肉マンが神に匹敵する力を持ってしまったら、彼らの沽券にかかわる。脅威を感じた邪悪の神たちは、過去の赤ちゃん取り違え騒動を利用し、全力でキン肉マンを潰しにかかってきたというわけです」
実際に邪悪の神5人は、キン肉マンと対戦したマリポーサ・チーム中堅のミキサー大帝に全員で力を貸与。全開の邪悪友情パワーでキン肉マンの火事場のクソ力を分離させ、天界の邪悪大神殿に封印することに成功している。
「あの時、ミキサー大帝のボディには、邪悪5神の顔が浮かび上がっていました。余談ですが、邪悪5神に憑依されたミキサー大帝は、瞬間的に超人強度が5億パワーを超えていたことになります。これは私が知る限り、過去最高に超人強度を高めた超人といえます。彼の素の超人強度は5900万パワーですからね」(同前)