〈箱根駅伝事件簿4選〉史上最短で棄権、“山の神”になり損ねた男…第101回大会の注目は5区「箱根の歴史に残る“山の頂上決戦”になる」

2025年で第101回大会を迎える箱根駅伝。長い歴史の中には、数々の名勝負が生まれたが、それと同時にハプニングやアクシデントも箱根のドラマとして刻まれている。今回は、陸上長距離界に詳しいスポーツライター、佐藤俊さんに第101回大会の見どころと箱根駅伝“事件簿”トップ4を聞いた。

注目は5区「“山の頂上決戦”になる予感」

2025年に第101回大会を迎える箱根駅伝。2024年の記念すべき第100回大会は王者・青山学院大の総合優勝で幕を閉じたが、101回大会はいったいどんなレース展開になるのだろうか。

「ベタなところで言うと、大学三大駅伝(出雲、全日本、箱根)のうち2つ(出雲、全日本)を制している國學院大が箱根で3冠を取るか否か、そしてそれを阻止するのはどこの大学か、というのが一つ大きなテーマになってくるんじゃないでしょうか」(佐藤さん、以下同)

ズバリ優勝校はどこなのか。佐藤さんの予想を聞いてみたところ、

「優勝を争うのは、國學院大、青山学院大、駒澤大の3強に加え、創価大の4校だと思います。創価大は、出雲駅伝と全日本駅伝、いずれも4位でした。3強には敵わなかったものの、『山の神』候補のエース・吉田響やケニア人留学生のスティーブン・ムチーニなど往路優勝に絡んでくる実力者揃いです。

飛びぬけてすごい選手がいるというより、全体的に平均値が高い選手が多い。3強に食い込んで優勝争いに絡んでくると思います」

また優勝争い以外での今大会最大の見どころは、往路で最も過酷な箱根の象徴ともいえる“山の5区”だという。

「101回大会の区間配置がまだ発表されていないですが、5区を走るだろうと言われているのが、創価大のエース・吉田響、青山学院大の若林宏樹、城西大のエース・斎藤将也、“山の名探偵”の異名を持つ早大の工藤慎作、ほかにも駒澤大が山川拓馬、國學院大が主将・平林清澄が走るとなると、各校相当ハイレベルな戦いになります。

全員が区間新だけでなく、前人未踏の68分台の記録を狙ってくる可能性もあります。箱根史上、歴史に残る“山の頂上決戦”になる予感がします」

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「山の〇〇」大量発生、史上最短棄権…

“山の頂上決戦”に注目したい第101回大会だが、過去には5区で2年連続区間新を出したにもかかわらず、「山の神」になり損ねた男も…。ここからは佐藤さんの箱根“事件簿”4選を紹介する。

事件簿1:山の5区で2年連続区間新も「山の神」になり損ねた男…

「城西大の山本唯翔選手は99、100回大会と5区で2年連続区間新をたたき出すも、山の神になれなかった男です。かつて『山の神』と呼ばれた選手は3人。初代が順天堂大の今井正人、2代目が東洋大の柏原竜二、3代目が青山学院大の神野大地です。彼らはいずれも区間新を出してチームの総合優勝に貢献し、『山の神』と呼ばれるようになったわけですが、個人の実力だけみたら山本選手だって『神』に匹敵します。

ただ『山の神』の条件は区間新に加え、チームを総合優勝に導くこと。残念ながら城西大は99回が9位、100回が3位と総合優勝に手が届かず…。結果的に山本選手は『神』ではなく、『山の妖精』と呼ばれるようになりました。名付け親は城西大の櫛部監督ですが、当初はあまり気に入らない様子だった山本選手も、妖精呼びが定着したことで今は受け入れているそうです」

ちなみに、前回大会で5区を走った早大の工藤慎作は普段着用している黒縁眼鏡の姿が「アニメ『名探偵コナン』に似ている!」ことと、工藤という名前(コナンの本名は工藤新一)から『山の名探偵』と呼ばれている。

近年、神だけでなく、妖精や名探偵など『山の〇〇』が増殖中だが、101回大会は再び神降臨となるか、期待したい。

事件簿2:箱根史上、最短棄権となった第78回大会

「第78回大会(2002年)では、法政大の主将でエースだった徳本一善が2区を走行中、肉離れを起こし、わずか7.3キロで途中棄権となってしまいました。1区も含めた28キロ地点での棄権は箱根史上、最短棄権として記録されています。

徳本選手といえば、当時金髪にサングラスをかけたチャラめの風貌に、物怖じしない強気な発言で有名な選手でした。もちろん実力もあり、“法政のオレンジエクスプレス”という異名を持っていました。

その徳本選手が、肉離れを起こし、足を引きずりながら走っていましたが、最終的には監督の判断で途中棄権となりました。当時は『這ってでも行きたかった』と語っていた徳本選手でしたが、後に駿河台大の監督になった際に『学生に先を行かせるか否かの判断が監督としていかに難しいことかを思い知った』とも語っています」

ちなみに、徳本選手が箱根史上、最短棄権した第78回大会(2002年)で法政大の1区を走っていた黒田将由は、現在、青山学院大のエース・黒田朝日の父。黒田選手は昨年2区で区間賞を獲得し、今年も区間賞候補の一人だ。