本拠地のセルハースト・パークで行われたサウサンプトン戦。1点リードした86分からピッチに送り込まれた鎌田大地は、2シャドーの左に入ってプレー。アディショナルタイム5分を含めた、終盤の約9分間のみの出場に留まった。
最高気温6度のこの日。肌感では実際の温度よりさらに低いように思えたが、白い息を吐いて率先してピッチを走り回った鎌田は、自陣まで戻って守備に貢献したかと思うと、カウンターの状況ではしっかりとボールキープをしたり、身体を張ってファウルをもらうなど、チームの今季4勝目に貢献した。
89分には左サイドから中央へドリブルで持ち込み、DFに潰されながらも自ら右足でゴールを狙った。しかし力ないボールは枠を捉えることはできず、待望のプレミアリーグ初ゴールは叶わなかった。
出場時間は短かったものの、逃げ切り勝利に貢献。鎌田は「フィジカルの勝負になると試合前から話していた。そういう部分で勝てたから、試合に勝てた」と語った。
だが、味方選手との呼吸が合わずに日本代表MFからのパスがタッチラインを割った場面も見られた。冷静に見ていれば分かるが、決してパス自体は悪くなく、通っていればカウンターの場面。しかしわずかにタイミングがズレて、ボールは逆サイドへと流れていった。
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逃げ切りしてほしい局面でのボールロストに、スタジアムにいた一部のイーグルスサポーターからは怒号が上がった。記者席の前に陣取っていたサポーターに目を向けると、そのうちの一人が「こんな奴、すぐに代えろ!」と大声を出す姿も見られた。
これこそが、現在、鎌田が置かれた状況である。残念ながら、移籍してから半年間経った現時点では、ファンの信頼を勝ち得ていない。無論、本人としても不本意な状況が続いていることは理解している。
7月に南ロンドンに居を移した際には、チームにアクセントを加える中盤の要になると期待されてやってきた。しかしながら、実際は開幕からチームの調子が上がらず、オリバー・グラスナー監督が目指すパスをつなげる攻撃的なサッカーは鳴りを潜め、代わりによりプラグマティックな堅守速攻のプレースタイルにシフトチェンジを強いられた。
フィジカル重視のサッカーに移行した結果、勝点は伸ばし始めた一方、鎌田の重要度は低くなってしまっている。
2024年の最終戦後。寒空の中で囲み取材に応じた鎌田は、記者の「クリスタル・パレスへ移籍してからの6か月を振り返って」という質問に対して、次のように答えている。
「チームとして、すごく難しいスタートを切った。それで、サッカーは良いとは言えないと思いますけど、それでもやっぱり自力で勝点を重ねていった。去年の後半戦がすごく良かったんで、注目度も高かったと思いますけど、ただやっぱり、こういう風に勝点取っていくのが本来のパレス。スタートが難しかった部分はありますけど、チームとして、立て直せたのは良かったと思います。自分もこのサッカーで、自分の居場所っていうのを見出さないと、なかなか難しいなと思うんで。すごく色々学びになる半年なりました。いい経験はできているとは思います」
そして自身の置かれる立場、今後はどのようにパレスで成功を掴むべきかにも触れた。
「(自分の良さを出すのが)すごく難しいなと思いますけど、守備の部分で行くタイミングとか、自分が狙った場所でボールが取れるとかっていうのは、最初来た時よりも良くなってると思う。またファウルの基準とかそういうのも違うので、身体の当て方だったり、フィジカル能力がやっぱ高い選手がすごい多いので、ボールの置き所だったりっていうのは、多少やっぱりほかのリーグとかとまた少し変えてアジャストしていかないとダメだなと思う。ロングボールに対して自分がヘディング、競り勝つとか、そういう、なんか裏に抜けてキーパーと1対1になるようなことは自分のスタイルではなかなか難しいんで。色々模索していかないとなっていう風に思います」
グラスナー監督は、今後の鎌田に期待している。以前のコラムでも触れたとおり、リーグ杯のアーセナル戦後の記者会見では、「ダイチは、我々がどのようにプレーをしたいか分かっている。もちろんフィジカルなプレミアリーグに適応しなくてはならず、それは分かっていたこと。だから私は焦ってはいないし、今後はどんどん(パフォーマンスが)向上していくだろう」と話している。
背番号18にとっての2024年は、特にイングランドにやってきてからの半年間は、もどかしさばかりが募った。しかし2025年には、新しい年を迎えて心機一転、躍動する28歳の姿が見られることを願いたい。
取材・文●松澤浩三
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