「もう正直、日本では敵がいない――」。
2024年12月31日、さいたまスーパーアリーナで開催された「RIZIN DECADE」の第2部『RIZIN.49』で現RIZIN女子スーパーアトム級王者の伊澤星花が20歳のルシア・アプデルガリム(アルゼンチン)と対戦し、1回2分21秒アームバーで一本勝ちを収め、連勝記録を怒涛の「15」に伸ばし、絶対女王たる実力を満天下に示した。
圧巻の内容でねじ伏せた。序盤から伊澤はテイクダウンを奪うと、アプデルガリムが上を狙ったところで三角絞め、そして下からパウンドを放つ。さらに腕十字へ素早く移行し、完全に主導権を握る。強引に逃れようとするアブデルガリムに伊澤は再び三角に組み直して肘を当てて、さらに三角十字を極めると、あっという間にタップを奪った。
試合後、マイクを持った女王は年の瀬に来日した対戦相手に敬意を表す言葉を述べたあと、「この場を借りてひとつ。もう泣きません。次、泣いたら引退しようと思います」と茶目っ気たっぷりに宣言。当初対戦予定だったRENAを名指しして、「今日は会場にも来てないようですが、この試合でもっと怖くなってビビッて来ないと思います。格下の相手とやってもしょうがないので、世界と戦いたいと思います」と挑発。リング上で辛辣にRENAを批判した。
興行のカウントダウン企画が重なり、日付がすでに1月1日の午前0時30分を過ぎた後に女王はインタビュールームに現れた。「もう泣かない」宣言の真意を問われると、「そろそろチャンピオンとして強い姿を見せていきたい。泣くのはやめようと思いました」と明かし、「次の試合とか全然分からないですけど、 自分は世界一になるためにやっている。階級だったり難しいことはあるんですけど、周りを認めさせながら自分が世界一だと証明させていきたい」と滑らかな口調で、伊澤は25年の明確な目標を打ち出した。
リング上でRENAと決別宣言とも受け取れる過激発言については、「RIZIN運営の方がずっとRENA選手を推してくるので」とチクリ。「自分としては全然レベルが違うと思っているので。そこで足踏みをしている場合じゃない」とRENAとの抗争を終結させ、よりレベルの高い海外の強豪ファイターとの対戦を熱望した。 なぜそれほど海外に拘るのか。そのワケを伊澤は次のように赤裸々に語った。
「やっぱり日本だと、もう正直言って敵がいないと思っている。海外の一番強い人とやっていけば、UFCだったりもアトム級に注目してくれると思う。もっともっと強い選手に怖い勝ち方をして、アトム級でも女子格闘技は面白いぞ!というのを見せていきたい」
世界最高峰の格闘技団体「UFC」の舞台を見据えるほど、さらなる高みを渇望した伊澤。会見のなかで何度も「強い人とやりたい」と吐露したその根底には、女子格闘界のなかで、『最強』を求めていた。
「まだ自分の体が仕上がり切らないところもあるので、今はアトム級とかスーパーアトム級でやっているけど、自分のしなやかさだったり、強さを見せれるのはアトム級だと思っている。できればアトム級で戦いたいです。アトム級だったら、どんな海外の強い選手と戦っても負けることが想像できないので。挑戦したいと思ってます」
しっかりと前を見据えて自信のあるコメントを聞くと、リング上で度々勝利を挙げては涙を流していた伊澤星花の姿はもういない。鍛錬を重ね、絶対女王という立場がファイターとしての成長と、今後の“ジョシカク”(女子格闘技)を自分がけん引する自覚を植え付けた。
2025年、つよかわ女子戦士は新たなステージへと歩み出すかもしれない。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)
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