画像はAIで生成したイメージ
近年、高齢者のカップルの間で「通い婚」というスタイルが流行っているらしい。
同居という形をとらずお互いの家に通うというもので、「なんでそんな面倒なことを…」と思われるかも知れないが、実践している人からすると実に都合がイイらしい。
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「最初は彼女(73歳・年金暮らし)と2人で住む新居を探していたんですが、この年だと貸してくれる物件がないんですよ。それでやむを得ず『通い婚』になりました。お互いの家族がいる家に通うのは最初は恥ずかしかったんですけど、気がつけば家族ぐるみの付き合いになっているし、なんだか新しく家族が増えたような感じで楽しいです」(Aさん・76歳・年金暮らし)
「私も彼(67歳・アルバイト)も1人暮らしです。一緒に暮らした方が経済的なのは分かるんですけど、1人暮らしの気楽さや生活のリズムみたいなものが身体にしみついているので、それを乱されたくないんですよ。自分が好きなように作り上げた空間に他人を入れたくないんですよね。彼も同じ気持ちだったので、最初から別居婚(通い婚)に決めました。相手が来る時はこっちがお茶や食事でもてなすんですけど、これ、たぶん一緒に住んだら一方的に私がやることになりそうじゃありません? 自分のことは自分でやる、というのも別居婚の良さですね。今さら誰かの『家政婦』になる気もないので、お互い自立している関係がちょうどいいんです」(B子さん・68歳・アルバイト)
また、一旦は同居をしたものの、B子さんと同じような理由で「通い婚」にチェンジしたのは、70歳のC子さん(飲食業)だ。
「若い頃に自分で店を持ってずっとひとりでやってきたんだけど、余生は惚れた男と暮らすのもいいかなと思って今のダンナ(72歳・無職)と一緒に住み始めたけど、典型的なフロ・メシ・ネルの亭主で縦のものを横にもしないんだもん、イヤになっちゃった。しかもこっちは仕事もしてるっていうのに、向こうは1日ゴロゴロしてるだけ。もっと若くてイイ男ならまだしも、70過ぎたヒモなんてろくなもんじゃないわよね。性根は悪くないし、気が合うから別れる気はないんだけど、さすがにこれ以上一緒にいたらキライになりそうだったんで同居は解消しました。ちなみに、彼は私と一緒になる時に家族から縁を切られてるので、今はサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で1人暮らし。介護の心配もしなくていいし、会いたい時に会えばいいし、気が楽よ」
同居は家族が猛反発
一方では、こんなカップルも…。
「彼(68歳)とは高齢者向けのマッチングアプリで知り合いました。ホントは一緒に暮らしたいんだけど、高校生の孫娘に反対されています。孫はおばあちゃん子で、私のところにしょっちゅう泊まりに来るんだけど『知らないおじさんがひとつ屋根の下にいるのはイヤだ』って言うんですよ。そりゃあ、そうですよね。母親である娘からも『万が一間違いでもあったら困るから、娘に彼氏を近づけないで!』とクギを刺されるし、仕方ないから、私が彼の家に通っています。電車とバスを乗り継いで行くのは良い運動になるし、たまにしか会えないというのも新鮮で楽しいですよ」(D子さん・65歳)
理由は人それぞれだが「ちょうど良い距離感」は、男女関係を長続きさせる秘訣かもしれない。
取材・文/清水芽々
清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。