パナソニックとライカの協業は、2000年8月に始まる。以来今日まで強い繋がりがあることは、写真愛好家ならよくご承知のことだろう。パナソニックはレンズ銘などにライカの名を冠し、ライカはパナソニックのカメラに自らの名を入れた展開を行うほか、デジタルに関わる技術の供与をパナソニックから受けていると聞く。その繋がりがより強固であることを知らしめたのが、2018年のシグマも加わった3社によるLマウントアライアンスの結成だろう。現在は新たに3社加わり6社のアライアンスとなったが、パナソニックとライカには協業とは一口に言えない深い結びつきが現在あるように感じる。ちなみにライカはパナソニックと協業する以前のデジタルは富士フイルムと繋がりがあった。
今回ピックアップした「パナソニック LUMIX DMC-LC1」の発売は2004年。当時同社はまだ松下電器産業が企業名で、”パナソニック”はブランド銘であった。2/3インチのイメージセンサーを搭載している割には大柄なマグネシウム製ボディと、ファインダーのように見えるAFセンサーの位置などからレンジファインダーカメラのような外観を特徴とする。見た目を裏切らないのが重量感で、本モデルを手にすると大口径のレンズを装着したAPS-Cフォーマットのミラーレスを凌ぐほどの重さがずっしりと伝わってくる。
そしてこのカメラをさらに特徴づけるのがLEICAおよびVARIO-SUMMICRONと前面部化粧リングに書かれたレンズだ。固定式で実焦点距離7-22.5mm、開放値F2.0-2.4とするズームレンズで、ズーム、フォーカス、絞りの各リングを鏡筒に備える。それだけでもただならぬ雰囲気を醸し出しているが、さらにそれぞれのリングに書かれた焦点距離、距離目盛、絞り値の数字のフォントや、あるいはローレットのつくりなどまんまライカのレンズそのものなのである。ライカ自体がどこまでこのレンズの製造に関与しているか定かではないが(おそらくこのレンズの設計も製造も松下電器産業と思われる)、ブランド好きの写真愛好家の琴線を大いに刺激することは述べるまでもない。
また、フォーカスリングはオートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り換えも兼ねており、絞りリングはAマークに合わせることで、シャッター優先AEやプログラムAEの撮影に対するのも特徴。シンプルでとても使いやすく感じられる部分だ。しかもズームリングに記されている焦点距離は、35mmフルサイズ判換算の焦点距離としており、28mm/35mm/50mm/70mm/90mmが刻まれる。フィルム時代を知る写真愛好家など馴染んだ焦点距離で使いやすいことだろう。ちなみにテレ端を90mmとするのはいかにもライカ銘のレンズらしいところだ。開放値の明るさも特筆すべきところで、大いに写真を撮る気にさせる。もちろん各リングの操作性はよく、頑張ってつくられたものであることのわかる部分だ。
参考までにキーデバイスには、前述のとおりイメージセンサーに2/3インチサイズのCCDセンサーを採用。有効画素数は500万画素である。現在の尺度から考えればまったく物足りないが、当時としては一般的な解像度で、イメージセンサー自体も本モデルのようにグレードの高いコンパクトデジタルカメラに使われることの多かったものである。設定感度は、ベース感度ISO100、最高感度はISO400と当時としてもレンジの狭いものとする。被写体が暗くてもレンズの開放絞りが明るいので、それで上手く撮影しろと言うことなのかもしれない。当時はノイズ処理の技術は現在のレベルにまったく追いついてなかったので、これは致しかたなかったところと言える。なお、動画機能も備えており、解像度は320×240で、30fpsもしくは10fpsでの撮影を可能としている。
撮影者との大切なインターフェースであるEVFの解像度は23.5万ドット。こちらも現在の尺度からすれば心許ない数字だが、当時としては一般的な解像度である。表示する画像のコントラストについても決して高くないが、これも当時としては極当たり前のものであった。同様に液晶モニターも2.5インチ、21万ドットとやはり時代なり。メニューの並びや設定方法も現在のものとは大きく異なる。スタイルやレンズ周りは注目すべきところは多いが、そのほかの撮影に関する部分は一般的なスペックに収まった感は否めない。
ちなみに本モデルとプラットフォームを共通とするライカ銘のカメラも同じ年に発売されている。モデル名は「ライカ DIGILUX2」。 ボディシェイプがわずかに異なるほか、LUMIX DMC-LC1のボディカラーがブラックであるのに対し、DIGILUX2はシルバー。電源スイッチなどレバー類の形状やシャッターダイヤル等に書かれた文字の書体も異なる(もちろんライカ独自の書体となる)。キーデバイスをはじめとするスペックは言うまでもなく同一で、光学系も同じである。ただし、絵づくりについては違いがあると言われているが、現時点では手元にDIGILUX2がないので確証を得ることはできていない。
過去このコーナーでは、2つのデジタルカメラを紹介している。「富士フイルム FinePix S3 Pro」と「コニカミノルタ α-7 DIGITAL」である。どちらも閲覧率が高く、未だその注目の高さを伺い知ることができるが、奇しくも両モデルともLUMIX DMC-LC1と同じく2004年の発売なのである。すでにデジタルカメラは黎明期をとっくに過ぎ発展期とも言える時代になっており、それゆえ様々な試みや進化がこの3モデルには見受けられる。あらためてこの時代のデジタルカメラをじっくり見直してみるとよさそうだ。
大浦タケシ|プロフィール
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌をはじめとする紙媒体やWeb媒体、商業印刷物、セミナーなど多方面で活動を行う。
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。
一般社団法人日本自然科学写真協会(SSP)会員。