「オレはあんたの子供を助けようと思って助けたんじゃない」
一方、子供を救い出してもらった母親が謝意を伝えようとすると、アタル版ソルジャーはクールにこう告げたという。
「オレはあんたの子供を助けようと思って助けたんじゃない。ただ、卑劣なやつが許せんだけだ」
その一部始終を見ていたブロッケンJr.、アシュラマン、バッファローマン、ザ・ニンジャは、魅力溢れるアタルに篭絡されたも同然だった。子供の命を最優先する優しさ、牧師に扮して立て籠もり犯に近づく冷静かつトリッキーな対応力、凶悪犯に動じない胆力や圧倒的な腕力、母子に恩を着せることなく立ち去るカッコよさと気高さ――。
何気に、このアクシデントを利用した交渉スキルも見逃せない。
「ソルジャーチームの一員として働いてくれることを願っているぜ」
アタル版ソルジャーは、魅了されている4人にしっかりと自分の要望を念押しして、夕闇迫る美しいドイツの街並みに消えていったのだ。その後ろ姿を見ながら、4人が呟く。
「ソルジャー… キン肉マンとはまた違った魅力のある超人……」
総じて、アタルが持つ最大の個性とは、底知れぬ強烈なカリスマ性だろう。ブロッケンJr.たちは、この時点ではまだ、その正体がキン肉マンの実兄アタルであることを知らない。出会って間もない一人の超人として、アタル版ソルジャーに惹かれたのだ。
その晩、4人は「ベルリンの壁」に集まり、ソルジャーチーム入りを協議。その場にアタル版ソルジャー本人も登場し、ぶつかり合いを経て「超人血盟軍」が結成される。その模様は「超人秘録・別冊」(通称「キン肉マン読切傑作選2011‐2014」)に詳しい。機会があれば、手に取ってみてほしい。
取材・文/落花豆男
集英社オンライン編集部ニュース班