派手な切断描写が魅力のウルトラセブンの必殺技「アイスラッガー」。以降のウルトラ戦士でも切断技がウリのひとつになっていきますが、これが時代を経るとコンプライアンスの壁が立ちはだかることに?



アイスラッガーを持つウルトラセブン。画像は「ウルトラセブンアイスラッガーリールパス」プレスリリースより。 (C)円谷プロ

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「切断技」の栄光と衰退

 TVの子供番組で敵を切り刻む――。1967年に放送開始された『ウルトラセブン』は、物理的な切断描写による必殺技「アイスラッガー」で、視聴者に強烈なインパクトを与えました。

 しかし、この革新的な必殺技は、時代とともに徐々にその姿を変えてきており、現在ではコンプライアンスの影響とも考えられるような描写が主流となっていることをご存じでしょうか。

多彩な切断バリエーションが魅力のアイスラッガー

 まずは「アイスラッガー」の歴史をたどりましょう。第1話でクール星人の頭部を切断したのを皮切りに、エレキング、メトロン星人など多くの敵を倒してきました。最終回怪獣の改造パンドンももちろんアイスラッガーで倒されました。

 いずれも頭部から投げた後は光学処理で表現されており、スピーディに切断するさまも含めて、実にカタルシスあふれる場面に仕上がっています。途中からはガイロスやパンドンとの戦いのように、逆手持ちして直接切断するパターンも披露しており、これは勝新太郎演じる座頭市をヒントにしたといわれています。

第二期ウルトラシリーズでどんどん派手な切断技に

 こうした切断技自体は、初代ウルトラマンの「八つ裂き光輪」で既に描写されていたものの、セブンのアイスラッガーのカタルシスは別格で、スタッフもこれで確かな手応えを得たからか、第二期ウルトラシリーズでは、さらに派手な演出へと進化していきました。

 なかでもウルトラマンエースは「バーチカルギロチン」などの切断技を多用し、たとえば頭から左右に真っぷたつにされたメトロン星人Jr.は両サイドの切断面から、けばけばしい原色の内部組織がこぼれ落ちる描写も加わり、残酷とも受け取られない演出がなされていました。



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切断技にストップ!? コンプライアンスの壁

 もちろん、当時は視聴者をブラウン管に釘付けにすべく、奇抜な映像表現を追い求めた結果だったと思われますが、これが時代を経ると、コンプライアンスの壁が立ちはだかることとなり、こうした残酷表現は鳴りを潜めていくこととなります。

 ウルトラセブンは平成になって、TVスペシャルやビデオ作品として復活を果たしましたが、アイスラッガーの使用頻度自体が少なくなり、アイスラッガーと同じ「宇宙ブーメラン」を使うセブン系ヒーローであるウルトラセブン21の「ヴェルザード」や、ウルトラマンマックスの「マクシウムソード」も、せいぜいツノを切断するくらいで、切断を伴う決め技として使われることはありませんでした。

 ウルトラセブンが『ウルトラマンメビウス』に客演回した際には、アイスラッガーでグローザムを途中まで袈裟懸けに切断するも、グローザムの再生能力で元に戻ってしまうという、実に惜しい描写がありました。

 また、映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』では、初代マンの八つ裂き光輪、エースのウルトラギロチンとともにセブンもアイスラッガーで、Uキラーザウルスの触手を切断する描写が久々に描かれましたが、この一連の場面では、ウルトラ戦士も怪獣もCGで描写されていたこともあり、いまひとつカタルシスを欠いていたのは残念なところでした。

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でデビューを飾ったウルトラセブンの息子であるウルトラマンゼロは「ゼロスラッガー」を頭部に2対付けたデザインで、さらに派手な切断技が期待せずにはいられませんでした。しかし、ゼロスラッガーが怪獣に命中するやミサイルのごとく爆発する描写となり、近年はこうした描かれ方が主流となっています。

 同様の描写は、ウルトラセブンがガッツ星人の円盤を爆破する際に用いた「ウルトラノック戦法」のケースがあるとはいえ、やはり物足りなさが拭えないのが正直なところです。いつか、視聴者の気分が高揚するような、大胆な切断技を用いるウルトラ戦士の登場を期待して止みません。