「仮面ライダー」シリーズ醍醐味のひとつが、ライダーによるバイクアクションです。昭和から現在の令和に至るまで、バイクアクションは代々引き継がれてきました。しかし初代『仮面ライダー』と、次作の『V3』では、手探りの撮影が続き、バイクアクションには危険がつきものでした。



「仮面ライダー VOL.14 」DVD(東映ビデオ) (C)石森プロ・東映

【画像】いま見てもカッコ良すぎ! こちらが昭和ライダーたちのバイクです(6枚)

命を失う可能性もあったバイクアクション

 1971年放送の『仮面ライダー』から始まり、平成、令和と時を経てさまざまなライダーが描かれてきました。シリーズを通してバイクによるアクションも代々引き継がれているなか、やはり手探りの撮影が多かった初代『仮面ライダー』は危険がつきものでした。

「仮面ライダー1号」を演じた藤岡弘、さん(当時は藤岡弘)は、さまざまな媒体で当時の撮影を振り返ったコメントを残しています。例えば2011年に『ウルトラマンVS仮面ライダー』のDVD化を記念して実施された『ウルトラマン』の黒部進さんとのスペシャル対談で、バイクシーンについて言及しています。

 藤岡さんは仮面ライダーに変身した後のアクションも演じており、ライダーのスーツやマスクを着用しながらバイクを運転したことに対して「違った感覚」「(前が)見えないでしょ。それが不安になってきてね」と話していました。

 また、2021年に放送されたTV番組『林修の今でしょ!講座』(テレビ朝日系)に出演した際、当時の安全が保証されない撮影について「毎日が恐怖で現場に行くのがつらかった」とも語っています。命の危険を感じるような撮影は当たり前で、藤岡さんによれば、高所であるロープウェイのゴンドラ内での撮影では、安全確認をしないでリハーサルが行われたそうです。

 結果的に何もなければ良かったのですが、藤岡さんは撮影中のバイク事故によって重傷を負っています。そして、その事故によって一時降板することになり、急きょ「仮面ライダー2号」が登場する流れになったのです。

 以前放送された『極上空間』(BS朝日)に「仮面ライダーV3」を演じた宮内洋さんとともに藤岡さんが出演した際、事故後のことを振り返り、2号を演じた佐々木剛さんが、当時バイクの免許を持っていなかったことを語っています。

 そのため、1号が行ってきた「2輪車で走りながら風を受けることでベルトの風車が回転して変身する」という流れができなくなり、それを解消するために「変身ポーズ」が誕生しました。当時ほとんどの子供が真似した変身ポーズは、不運な事故がなければ生まれていなかったと考えると、不思議に感じるものがあります。

 バイクアクションの苦労話は、次作の『仮面ライダーV3』で主人公の「風見志郎」を演じた宮内さんの口からも語られています。『ウルトラマンVS仮面ライダー』では、『V3』の監督を担当した折田至さんと宮内さんによるインタビュー動画が収録されており、折田さんは「オープニングにある大爆発バックのジャンプと、それから風見史郎の走行変身が非常に印象があって」とコメントを残していました。

 また、当時そういった背景から宮内さんに「(バイクの)キャリアがあるんですか?」と尋ねたところ、宮内さんは「ライダーが初めて」と答えたそうです。そんな宮内さんも、第2話「ダブルライダーの遺言状」の撮影で行われたバイクシーンを振り返り、「ほんの何メーターでしょ」「行った途端に向こうで引っくり返って」「ガソリンタンクはへっこんじゃうわ、ウィンカーはぶっ壊れちゃうわ、ミラーは壊れちゃうし」と失敗談を話しています。

 そして、その失敗を機に宮内さんは、車ではなくバイクでの移動に切り替え、次第に手を放して運転できるようになったそうです。そして撮影中に、周りから止められながらも、無理を言ってバイク走行中に両手を離す「走行変身」にトライすると、それが採用されることになります。以降の撮影では、台本に「単車の上でもって変身」と、それが当然かのように書かれていたそうです。

 今も人気コンテンツとして「仮面ライダー」シリーズが続いているのは、手探りながらも苦労して撮影に臨んだ彼らの偉大な功績があったからこそといえるでしょう。