『もののけ姫』の主人公アシタカの相棒であるヤックルは、重要なキャラクターです。ただ、気になるのは、彼がなんという動物なのか、という点です。調べてみると『もののけ姫』の印象が少し変わるかもしれません



アシタカの背後にいるヤックル (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

【画像】え…っ?「人乗れるかな」「色合いがまんま」 こちらが「ヤックルのモデル?」の動物です(3枚)

ヤックルに乗りたい… それは叶わぬ夢なのか?

 動物園に「ヤックル」はいるのでしょうか?

ヤックルとは、『もののけ姫』(監督:宮崎駿)に登場する主人公「アシタカ」の相棒であるあのシカ(のような動物)です。もふもふの毛並みに、つぶらな瞳、気品を感じる一対の大きな角が特徴のヤックルは、なんという動物で、どこに行けば会えるのでしょうか。あわよくば、乗ってみたいものです。

ヤックルとは何者なのか。この答えがどうやら『もののけ姫』という作品の理解を深めるにあたり、1本の補助線となるのでした。

『もののけ姫』は室町時代の日本が舞台で、当時は当然ながら地方ごとに異なる文化背景をもつ人びとが各々の信仰、自然観を持ち暮らしていました。そしてこの「自然」、あるいは「神」を破壊する業深い人間たちに牙を向くのが犬神「モロ」をはじめとする「もののけ」たちでした。

 殺伐とした物語のなかでヤックルは、視聴者にとってはオアシス的な役割を果たしてくれました。人間と自然(もののけ)の対立構造のなか、ヤックルだけはそこから独立した形でアシタカとともにおり、「人間」ではなくアシタカ個人との信頼関係があります。時に怯えながらも、懸命にアシタカと疾走する姿は美しく、それでいて愛くるしいのです。

 さて、そのヤックルはなんという種類の動物なのでしょうか。なんとなく、寒そうな高原にいそうな雰囲気です。アシタカは現在でいうところの東北地方にある「エミシの村」出身なので、寒い地域に行けば会えるのでしょうか。さっそく会いに行きたいところではありますが、「金曜ロードショー」の公式X(旧:Twitter)に看過できぬ投稿がありました。

「アシタカを慕う姿が健気なヤックル パンフレットでは『絶滅したアカシシと呼ばれるオオカモシカ』と説明されています。」

 なんということでしょうか。ヤックルは、すでに絶滅してしまったというのです。『もののけ姫』の時代から現代までの、ここ数百年のうちに絶滅してしまったのでしょうか。人間はなんということをしてしまったのでしょうか。いや、落ち着きましょう。「金曜ロードショー」のアカウントは、続けてこんな補足をしてくれています。

「宮﨑駿監督は『ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが自分の中のどこかにあったので、作りました』とも。カモシカをモデルにした架空の動物だったんです」

 驚愕です。うっかり絶滅説に踊らされるところでしたが、ヤックルはそもそもこの世界に最初からいなかったのです。ちなみにカモシカは偶蹄目ウシ科ということで、ヤックルは「シカ」ではなく「ウシ」に近い動物なのでした。

 いずれにせよ、こだま、犬神、乙事主、タタリ神とあまたのもののけたちのなかで、ほぼ唯一、アシタカ側に居続けてくれたヤックルもまた、もののけに近い存在といえるでしょう。自然(もののけ)とともに生きることはできるのかどうか、その答えはすでにヤックルが出していた、とも言えそうです。