『千と千尋の神隠し』は、不思議な世界に迷い込んだ少女「千尋」が、そこでの暮らしを経て成長していく物語です。しかし、千尋を助けてくれた少年「ハク」について、その後「八つ裂きにされた説」があることをご存じでしょうか。



おにぎりを持ったまま千尋を見つめるハク。画像は『千と千尋の神隠し』静止画 (C)2001 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDDTM

【画像】うわ、危なっ! こちらは上から降ってきた千尋です(4枚)

千尋がいなくなった後、ハクは無事だったのか?

 10歳の少女「千尋」が異世界で働き、成長していく映画『千と千尋の神隠し』は、現在でもたびたび「金曜ロードショー」で放送される人気作品です。ただし、物語の「その後」には「ハクが八つ裂きにされてしまう」「公開初日には幻のエンディングがあった」などと、さまざまなうわさがあります。果たしてこれらの説は本当なのか、その根拠や理由を探ってみました。

※この記事は、『千と千尋の神隠し』のネタバレを含みます。

ラストでは、ハクと別れた千尋が元の世界へ戻る

 自分の名前を無事取り戻した千尋は、再びトンネルを通って元の世界に戻ります。ハクは千尋と別れる際に、「決して振り向いちゃいけないよ。トンネルを出るまではね」と伝えました。そして、「またどこかで会える?」と聞く千尋に「うん、きっと」と答えます。

 それまでハクとつないでいた手を離し、千尋はトンネルへと進みます。前方には、豚から人間へと戻った両親が千尋を呼んでいて、何事もなかったようにトンネルへと入っていくのでした。千尋は一瞬後ろを振り向こうとしますが、ぐっとこらえ、前を向いて再び歩き出します。

 こうして別れた千尋とハクですが、手を離してからもしばらく画面に残るハクの手は、名残惜しさを感じさせます。そして、一瞬振り返ろうとした千尋も、ハクの「振り向いちゃいけない」という言葉を思い出したのでしょう。ぎゅっと目をつむり、走り出していました。

 このように、千尋は無事、元の世界に戻れましたが、ハクはその後どうなったのでしょうか。ネット上ではさまざまな憶測が飛び交い、なかには「八つ裂きになった」という過激な説もあります。一部であったとうわさされる「幻のエンディング」とともに、考察してみましょう。

「ハク、八つ裂き説」が生まれた理由

 一部では、「ハクはその後、湯婆婆に八つ裂きにされた」という説が流れています。この説が生まれた理由としては、

・千尋を元の世界に帰す手助けをした
・湯婆婆から「八つ裂きにされてもいいんかい?」と言われたシーンがあった
・銭婆がハクについて「私は何もしてやれない。それがこの世界のルールだから」と言うシーンがあった

 といったものが考えられます。また千尋と別れる際、ハクは「私は湯婆婆と話をつけて弟子をやめる。平気さ、本当の名を取り戻したから」と話していました。よって、ハクはその後、湯婆婆と会うであろうことも、この説の信ぴょう性を高めているのでしょう。

 しかし、ハクは千尋のおかげで「ニギハヤミコハクヌシ」という本当の名前を思い出します。そして、ハクを操っていたであろう黒い虫も、吐き出した後に千尋が踏みつぶしました。湯婆婆の支配から解放されたハクなら、八つ裂きにされることはなさそうです。



顔をグッと近づける千尋とハク。画像は『千と千尋の神隠し』静止画 (C)2001 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDDTM

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ハクが生まれ変わった「幻のエンディング」

 さらに「一部映画館では、映画公開初日に幻のエンディングが流された」という説もありました。その幻のエンディングとは、「千尋が引っ越し先で小川を見つけ、その川がハクの生まれ変わりであることに気付く」というものです。

 この説が生まれた理由もいくつかあり、

・巨大掲示板「2ちゃんねる」に書き込みがあり、同じエンディングを覚えている人が多くいる
・ハクが千尋と別れる際、「元の世界に私も戻るよ」と言っている
・その後、「またどこかで会える?」と問う千尋に「うん、きっと」とダメ押ししている

 ということが根拠となっているようです。実際に、幻のエンディングは途中まで絵コンテが作られていたのだとか。ただ、当時はまだフィルムを使って映画が上映されていたため、差し替えは金銭面から考えても難しいかもしれません。

 また、千尋の母の「引っ越しのトラック、もう着いちゃってるわよ」というセリフは、通常版の別のシーンでも描かれています。さらに通常版のラストシーンでも、ハクは「水がない、私はこの先には行けない」と言っているのです。

「ハクと千尋をもう一度会わせたい」という視聴者の願いが、この説を生み出したのかもしれません。また、うわさがうわさを呼ぶ形で「ハクが八つ裂きにされた結果、千尋の引っ越し先の川に生まれ変わった」と、ふたつの説がお互いの主張を強め合っているともいえるでしょう。

 余韻を残したラストは、視聴者にその後の展開を委ねてくれます。「またどこかで会える?」「うん、きっと」というやりとりから、ふたりは「(難しそうだけど)また会いたい」と思っていたのでしょう。

 さまざまな説がささやかれている「ハクのその後」、あなたはどんな展開を想像しましたか?