リバプールの遠藤航は、シーズンの折り返しを迎える中、いまだにリーグ戦でのスタメン出場ゼロ。しかも途中出場8試合の大半が最終盤からの出場だ。先発出場はもっぱらカップ戦に限定される。しかし評価は思いのほか高い。試合を締めるその役割を野球の投手のクローザーに例えたのは地元紙『THE Sun』だった。
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アルネ・スロット監督もプレミアリーグ第7節のクリスタル・パレス戦後に「ワタがピッチに入った時の様子やオン・ザ・ボールのスキル、セカンドボールの争奪戦を制した数の多さを見れば、たった7分間で非常に良いインパクトを残したのが分かる」とその働きぶりに称賛を惜しまなかった。
しかし、昨年6月にユルゲン・クロップの後を受けて監督に就任すると、中盤の補強を熱望し、レアル・ソシエダのマルティン・スビメンディの獲得をプッシュし、アレクシス・マク・アリステルのパートナーとして新加入のライアン・フラーフェンベルフを重用し、つまりは遠藤の出場機会が限られる事態を招いているのもまた当の指揮官でもある。
冬の移籍市場が近づけば、出番の少ない選手の周辺が騒がしくなるのは常で、スペインメディア『fichajes.net』によれば、遠藤にもミラン、フラム、イプスウィッチ・タウン、ウォルバーハンプトン、セルティックといったクラブが興味を示しているという。しかし英メディア『Rousing The Kop』が「全くない」というクラブの関係者のコメントを紹介しているように、1月にリバプールを離れる可能性は限りなく低いとみてよさそうだ。背景として考えられるのはスロット監督が執心し、大金を投じる覚悟もあると『LIVERPOOL.COM』が報じるレアル・マドリーのオーレリアン・チュアメニの獲得が実質的に不可能であること、今後も過密スケジュールが続いていくこと、守備的MFとして確かな力量に加え、CBとしても機能することを示していることなどだ。
ただそこからアピールに成功し、現在の序列を変えるのは至難の業だろう。2023年8月のリバプールへの加入を、「サプライズ」と形容したスペイン紙『マルカ』は、その記事の中でロメオ・ラヴィアとモイセス・カイセド(いずれもチェルシーに加入)の獲得失敗を経てプランBとして獲得に至った背景を説明し、マク・アリステルとドミニク・ソボスライに自由を与え、相手の攻撃を食い止める働きが期待されると伝えている。1年目はその期待に応えたわけだが、『Goal.com』のスペイン語版は、「リバプールがレアル・ソシエダの スビメンディの獲得を狙う理由」と題した昨夏の記事に「31歳のエンドウの契約はあくまで一時的なオプションで、スロット監督は守備的MFのポジションに、より若く、自らのサッカーにマッチした選手を加えようとしている」と分析している。
「エンドウは第一線での経験が豊富で、昨シーズンはクロップの下で全コンペティション合わせて44試合に出場した。つまり、レギュラーMFが負傷したり、出場停止になったりした場合に備えて、チームに留める価値は十分にある選手ということだ」と『LIVERPOOL.COM』が指摘しているように、現状、期待されているのはバックアッパーとしての役割だ。もちろんその根底には自己犠牲を厭わない遠藤の高いプロ精神があり、スロット監督もその点を評価しているのは前述の通りだ。シーズン後半戦、これまで通り与えられた役割を全うし、今欧州で最も好調と呼び声の高いリバプールの躍進を手助けする。そしてシーズンが終わった後、改めてクラブと話し合うというのが遠藤の去就のシナリオとなりそうだ。
文●下村正幸
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