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「月1回の外食をやめた」

「食卓からおかずが1品減った」

止まらない食料品の値上げに庶民は悲鳴を上げている。

とはいえ、スーパーで肉や魚、野菜が自由に手に入る現状はまだましで、近い将来、日本国民は今のような食事ができなくなるという。

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現在82億人の世界人口は、国連によると2050年には97億人を突破する。

その場合、2010年比で1.7倍の食糧が必要になると農林水産省が試算している。

人口の増加分よりも食糧の必要量が増えるのは、発展途上国が豊かになれば、その分だけ食べる量が増えるからだ。

さらに、農業従事者の高齢化や跡継ぎ不足も追い打ちをかける。

農水省では2030年に日本の農業経営体が半減し、耕作農地が3割減ると予測している。

食糧の約6割を輸入に頼る日本は、現在より輸入が困難になり、国内での生産も減るというダブルパンチに見舞われる。

すでに世界では「タンパク質クライシス(危機)」が叫ばれている。

人口増加や気候変動により、タンパク源となる牛肉や豚肉、鶏肉、乳製品などの生産量が追いつかなくなる問題で、2025年から2030年の間に顕在化するといわれている。

タンパク質は筋肉や骨、臓器、皮膚など、人体を構成する基本的な栄養素だが、体内で生成できないため常に食事などで摂取する必要がある。

それが貧困国を中心に不足してくるのだ。

人口が増えるなら農産物も畜産物も増産すればいい。

そう思う方も多いだろうが、すでに地球上で耕作や畜産に適した土地はかなり開発されている。

アフリカ諸国が発展を遂げれば、既存の農地で高度な農業が行われ、農業生産は増加するだろう。

ただし、先述したように貧困を脱すると人々が消費する食糧も増えるため、地球上で人口増のペースを超えた食糧増産は、もはや不可能に近いという。

未来の食べ物「昆虫食」はうまみたっぷり

そこで注目を集めているのが、ベジタリアン向けの大豆ミートで知られる「代替肉」だ。

これらは良質なタンパク質を含んでいるうえ、畜産業に比べて地球環境に優しいといわれている。

卵やチーズも植物由来の製品が登場しており、栄養バランスにも優れているので、すでにレストランやスーパーでも取り扱われている。

しかし、植物由来の代替肉の需要も増え続けるため、それだけでは抜本的な解決策にならない。

国連食糧農業機関(FAO)は、未来の食べ物として「昆虫食」を推奨している。

昆虫は栄養価が高く採集が容易。コオロギやバッタ、ミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)などを育て、乾燥させて粉末化したうえで食べるというものだ。

昆虫は家畜と比べて飼育にかかる水や飼料が極めて少なく、地球環境に負荷をかけない。

しかも、より多くのタンパク質を確保できるため、人体にもメリットがあるという。

もちろん、粉末にしたところで抵抗感は拭えないが、食用コオロギの味はエビに近く、うまみもたっぷり。タンパク質、ミネラル、ビタミン類も豊富に含まれており、すでに『コオロギせんべい』という商品も販売されている。

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悲惨な「未来の食事」を思えば…

どうしても昆虫は食べたくない…という方におすすめなのが「培養肉」だ。

牛や豚、鶏などの細胞を培養してつくられる食肉で、代替肉がフェイクなのに対し、培養肉は肉そのもの。すでにシンガポールでは、鶏の細胞を用いたチキンナゲットが商品化されており、食感は本物に劣るが味は遜色ないという。

これらの培養肉は細胞を体外で増やし、ミンチ状に成型したものだが、ブロック状に成型した培養ステーキ肉の開発も進められている。

捨てられる食品を減らすことで、食糧危機を解決しようという動きもある。

それが「3Dフードプリンター」だ。

3Dプリンターは紙に印字する普通のプリンターとは違い、立体的な造形物をプリントできる装置。食品を粉末やペースト状にした物をインク代わりにセットし、それらを噴射して新たな食品をつくり出す。

この装置があれば、今まで捨てていた野菜の皮や芯、食物の搾りかすなどを粉末化し、活用できるというわけだ。

原料になる食品の粉末をセットすれば、つくる食品の形状は自由自在。山形大学では魚のすり身から握りずしを作成しており、これは宇宙で食べることが想定されている。

宇宙旅行の機内食が3Dプリンターでつくられる…そんな夢物語が現実になりつつある。

とはいえ、食糧危機が訪れた未来に、ぜいたくができるのは富裕層のみ。一般庶民の食卓には、日常的に肉もどきや昆虫、野菜クズが上る。

本物の肉や魚、野菜を食べられるのは、ほんの一部の人間だけになるだろう。

そんな未来が待っていることを思えば、たとえ物価が高騰しても本物を味わえる今のほうが幸せなのか…。