『転売ヤー闇の経済学』奥窪優木

◆『転売ヤー闇の経済学』新潮新書/860円(本体価格)

――近年、「転売ヤー」という言葉をよく聞きます。彼らは何者なのですか?

奥窪「『他者から買った物に、付加価値を付けることなく利ザヤを乗せてまた他者に売る』という行為全般が転売です。その中でも問題視されているのは、買い占め行為や法外な利ザヤを乗せて売るという類いの転売です。この種の転売を生業としている人たちは、世の中から侮蔑と憎しみを込めて『転売ヤー』と呼ばれています。転売ヤーという言葉が生まれたのはここ20年以内だと思われますが、それ以前にも興行やスポーツ観戦のチケットなどを買い占めて転売する『ダフ屋』がいました。しかし、SNSやヤフオク、メルカリなどのCtoC(個人間取引)プラットフォームの普及もあって、転売行為はかつてなく容易になっています」

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 ――なぜ外国人転売ヤーに中国人が多いのですか?

奥窪「日本と比べ人口が10倍以上の中国では、転売市場もその分、大きいことが一番の理由だと思います。日本の各種コンテンツは中国で人気になっており、また、中国では正規販売されていない商品がたくさんあることも理由の一つです」

高額商品から薄利多売へ

――どのような商品がターゲットになっていますか?

奥窪「需要が供給を大きく上回り、保存が効く商品はなんでもターゲットにされます。『限定』などと名の付く物や、コラボ商品などはその好例です。ここ最近では、東京国立博物館で開催されている『ハローキティ展』に、会場限定グッズ目当ての転売ヤーが殺到して問題になりました。ユニクロとアニヤ・ハインドマーチのコラボ商品が5倍以上の値段で転売されていたことも話題になりましたね。数年前までは国産ウイスキーや高級時計など、高額商品の転売が盛んでしたが、中国経済の見通し悪化などもあって、現在は少し落ち着いてきているようにも見えます。一方で、薄利多売化が進んできているように感じます。薄利多売で儲けるには点数を増やさなければならないことを考えると、より多くの方が迷惑を被ると予想されます」

――転売ヤーを撲滅させることはできるのですか?

奥窪「買う人が減れば、転売ヤーも自ずと減るはずです。そのアプローチの方が効果は高いように思えます。また、税務署が転売ヤーへの税務調査を強化することで、一定の効果は上げられるのではないでしょうか。『限定品商法』は結果的に転売ヤーを肥やすだけ。見直してもよいのではと思います」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」1月9・16日号より

奥窪優木(おくくぼ・ゆうき)
1980年、愛媛県松山市生まれ。フリーライター。上智大学経済学部卒後に渡米。ニューヨーク市立大学を中退、現地邦字紙記者に。中国在住を経て帰国し、日本の裏社会事情や転売ヤー組織を取材。