画像はAIで生成したイメージ

「東日本大震災を予言していた」と、かねてから漫画『私が見た未来』は、都市伝説好きな人々の間で話題となっていた。

1999年に初版が発行された際の表紙に「大災害は2011年3月」と記されており、後年になってこれが東日本大震災の発生を予言したとされたからだ。

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これについて作者のたつき諒氏は、「表紙絵の締め切りが迫っていたときに、夢で見たことをそのまま描いた」と語っている。

漫画自体も「たつき氏自身の夢で見たことが、のちに現実に起きる」といった内容で、東日本大震災のほかにも「阪神・淡路大震災」や「ロックバンドQUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーの死」などを予知したという。

ただし、やはり夢で何度も見たという「富士山噴火」は現段階でまだ発生しておらず、本当に予知夢なのか、あるいは偶然が重なっただけなのかは判断の分かれるところだ。

2021年に『私が見た未来』が「完全版」として飛鳥新社から復刊されると、平成の奇書としてたちまち話題となり、その中で「新たな予知」として提示されたのが「本当の大災難は2025年7月にやってくる」というものだった。

たつき氏は「太平洋の日本とフィリピンの中間あたりで海面がボコンと盛り上がり、大津波が周辺各国を襲って、日本の太平洋側の3分の1から4分の1が呑み込まれる夢を見た」と語っている。

海面が膨れ上がる現象から想起されるのが、まず海底火山の爆発だろう。

海底火山の大規模噴火といえば、2022年1月に「過去100年で最も強力な自然現象」とされる大規模な爆発が、南太平洋のオーストラリアに近いトンガ王国の沖合で発生している。

同国の首都ヌクアロファからわずか65キロ地点で、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山が大噴火し、8万人を超える被災者と4人の死者(関連死1人)が出る被害となった。

だが、フィリピン沖で同規模の海底火山噴火が起きたとしても、日本の首都である東京との距離は1000キロ以上もあり、これが日本壊滅レベルの大災害になることはない。

巨大隕石の落下のほうが可能性あり?

1815年4月に起きた有史以来最大と推定されるインドネシア・タンボラ火山の大噴火でも、世界的な冷夏など深刻な天候被害を招くことにはなったものの、一国が亡びるほどのことではなかった。

現にインドネシアは、いまも存在して経済発展を続けている。

水中での核兵器などによる爆発という仮説も考えにくい。

米航空宇宙局(NASA)はトンガ沖で起きた火山爆発の威力について、「広島に落とされた原子爆弾の数百倍に相当する」という科学的見解を発表した。

現在、世界最大級の威力とされるロシアの水素爆弾、通称「ツァーリ・ボンバ(爆弾の帝王)」は広島型原爆の3300倍の威力ともいわれるが、それでも海中で爆発した場合は水圧によってかなり威力が減じられるため、これ一発だけで大津波が起きることはない。

東日本大震災において放出された地震エネルギーは、「広島型原爆の3万発分」とも推定されており、これはツァーリ・ボンバの10発分に相当する。

それも日本近海で爆発させて、ようやく同じくらいの津波が起きるという推定で、これではいかにも現実味が薄い。

陰謀論では、たびたび「巨大地震は核爆発を伴う地震兵器によって起こされる」などといわれる。

だが、ツァーリ・ボンバ自体は全長8メートルほどで、これが10基となると単純計算で全長80メートル。それを誰にも察知されず、海底に設置することはほぼ不可能だろう。

「爆発は地震を誘発するためのものだから、爆弾だけで地震に相当するエネルギーを発生させる必要はない」との声もありそうだが、そもそも地震発生のメカニズム自体がいまだ完全には解明されていない。

その発生源に爆弾を設置して地震を誘発する理屈は、いかにも現実味に欠ける。

爆弾による人工地震よりも巨大隕石の落下のほうが、まだ可能性は高そうだ。

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南海トラフ地震に連動して富士山噴火!?

そうしてみると、やはり日本が壊滅するほどの津波が起きる最も有力な要因は、自然発生する地震災害ということになる。

では、2025年7月、本当にそれほどの大規模地震が起こるのかといえば、その危険性はあるとしかいえない。

2024年8月6日、宮崎県で観測された震度6弱、マグニチュード7.1の地震を受けて、政府は南海トラフ地震への注意を呼びかける臨時情報を発出した。

結局、直後に巨大地震は発生しなかったが、九州と四国の間に位置する豊後水道では、同年4月17日にも同程度の地震が発生している。

何事においても慎重を期する日本政府が、大胆な警告を発したことからも、これらが巨大地震の前兆であることは否定できない。

政府の地震調査委員会は2022年1月、マグニチュード8から9クラスの巨大地震が南海トラフで、40年以内に発生確率する確率を90%程度と発表している。

ちなみに南海トラフとは、静岡県の駿河湾から九州の日向灘にかけて、海側の海底プレートが沈み込んでいる溝のような地形のことを指す。

地球の表面には厚さ100キロにも及ぶ岩板の巨大プレートが14~15枚、小規模のプレートが40枚ほどあり、それぞれの境目がぶつかり合っている。

プレート同士の衝突によって生じたひずみが限界に達したとき、一気にずれ動くというのが一般的な地震発生のメカニズムだ。

南海トラフとは、太平洋側のフィリピンプレートと大陸のユーラシアプレートの境目に生じた溝であり、ここでは過去に100年から200年の間隔で、マグニチュード8クラスの巨大地震が発生している。

政府は南海トラフで巨大地震が起きた場合、最悪で死者32万人以上、経済損失も建物の倒壊を含め220兆円以上と想定している。

過去の大規模地震では、東日本大震災が死者・行方不明者1万8425人(震災関連死を除く)、経済損失が16.9兆円(発生直後の内閣府の推計)。阪神・淡路大震災は死者・行方不明者6437人、経済被害9.6兆円とされていて、南海トラフ地震による被害はそれら過去の大地震と比べたとき、人的被害、経済被害ともに10倍以上になる危険性があるというのだ。