2024年の北米興収全体を振り返る前に、最終週(12月27日から12月29日)のランキングからチェックしていこう。前週、初登場で首位を飾った『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(日本公開中)が、週末3日間で前週比61.6%の興収3701万ドルを記録し2週連続Vを達成。週末段階での北米累計興収は1億3656万ドルを突破し、元日には1億6000万ドルに到達。前作の興収を抜き去ってシリーズ新記録を樹立するのも時間の問題だろう。
前週1位スタートを切った『ソニック × シャドウ』、前2作超えの興収も見えてきた / [c]Everett Collection/AFLO
一方で『ライオン・キング:ムファサ』(日本公開中)は、前週比103.9%の興収を叩きだし、週末3日間興収では首位にわずか20万ドル差まで詰め寄ったものの、2週連続の2位。北米累計興収は週末時点で1億1318万ドルで、元日までの段階では1億3851万ドルと、『ソニック3』を猛追。熾烈なデッドヒートを繰り広げている両者だが、全世界興収では『ムファサ』の方が1億ドル以上も上回っている。
この2作品に続く3位にランクインしたのは、ロバート・エガース監督の新作となるゴシック・ホラー『Nosferatu』。ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」にインスパイアされた、F.W.ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)をリメイクした同作は、クリスマス当日に封切られ、そこから5日間で興収4000万ドルを超える好調なすべり出し。このシーズンのホラー作品としては異例のヒットで、元日には興収5000万ドルを突破。賞レース参戦も噂されるタイトルなだけに、今後の伸びに注目だ。
『ウィキッド ふたりの魔女』は前週を大きく上回る興収で累計4億ドルをあっさり突破! / [c] Universal Studios. All Rights Reserved.
また『ソニック3』と『ムファサ』同様、1ヶ月前からデッドヒートを繰り広げている『ウィキッド ふたりの魔女』(3月7日日本公開)と『モアナと伝説の海2』(日本公開中)は、どちらも前週比140%前後の興収をあげる好調ぶり。『ウィキッド』は公開35日目の12月26日に、『モアナ2』は公開34日目の12月30日に北米累計興収4億ドルを突破。勢いが衰える気配はまだまだなく、しばらく上位をにぎわせそうだ。
そしてティモシー・シャラメが主演を務め、ジェームズ・マンゴールド監督とサーチライト・ピクチャーズがタッグを組んだ『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2月28日公開)は、週末3日間で1165万ドル、クリスマスの初日から5日間で2322万ドルの興収をあげて6位に初登場。この数字は2019年にサーチライト・ピクチャーズとなって以降の同スタジオのオープニング新記録であり、賞レースへの大きな弾みとなることだろう。ちなみにボブ・ディランを演じたシャラメの7年ぶりの主演男優賞ノミネートが特に有力視されているようだ。
【写真を見る】上位10作品中9本が続編やリブート。2024年の北米最大のヒット作は? / [c]Everett Collection/AFLO
さて、ここからは2024年の北米興収全体の簡単なまとめに入ろう。年間通してのトータル興収は85億5800万ドルと、コロナ禍からの回復を予感させた前年と比べると96.1%とわずかに下回る結果に。それはやはり2023年のストライキの影響によって作品不足に見舞われ、閑散期がたびたび訪れたことが最大の要因であろう。サプライズ的なヒットを飛ばした作品もいくつかあるが、それでも興収1億ドル突破作品は22作品と前年よりも少ない。
興収上位10作品を見ると、マーベルを含むディズニー作品が3本(1位『インサイド・ヘッド2』、2位『デッドプール&ウルヴァリン』、『モアナと伝説の海2』4位)、ユニバーサル作品が3本(3位『ウィキッド ふたりの魔女』、5位『怪盗グルーのミニオン超変身』、10位『カンフー・パンダ 4 伝説のマスター降臨』)、ワーナーが4本(6位『ビートルジュース ビートルジュース』、7位『デューン 砂の惑星PART2』、8位『ツイスターズ』、9位『ゴジラxコング 新たなる帝国』)と3大スタジオが独占。また、2023年には5作品だった続編・フランチャイズ・リブート作品が、年間3位の『ウィキッド』を除く9作品と急増。もっとも、2022年や2021年も同様に9作品あったので、2023年がイレギュラーだっただけかもしれない。ビッグタイトルが多数控える2025年もその傾向は続きそうだが、まずは年間のトータル興収の回復が喫緊の課題となるだろう。
文/久保田 和馬