東京ドーム (C)週刊実話Web
2024年シーズンの巨人は就任1年目の阿部慎之助監督がチームを率いて、見事に三つ巴のペナントレースを制した。
2年連続でBクラスに沈み苦汁をなめた“球界の盟主”をよみがえらせた手腕は、関係者からも高く評価されている。
【関連】楽天、ヤクルトの“温情”に泥を塗る―田中将大「7月末に巨人移籍」の闇シナリオ急浮上 など
そんな巨人が本拠地を現在の東京ドーム(東京都文京区)から、築地市場跡地(同中央区)に移転する計画が水面下で進められているという。
1988年に開業した東京ドームは、そもそも自前の施設ではない。
2021年に東京ドーム社の株式を20%取得して経営に参画したとはいえ、巨人の親会社である読売新聞社にとって、球団との一体経営が可能になる自前球場の誕生は悲願だった。
開業当時は「最新式で日本一の球場」といわれた東京ドームだが、今では人工芝の無機質な印象が強くなり、座席の間隔が狭いという問題もある。
屋根部分は米国ミネソタ州ミネアポリスにあったメトロドームを参考に、グラスファイバー製の生地を空気圧で膨らませることによって形成されているが、その“本家”は2010年に大雪の影響で屋根の一部が崩落。1982年の開場から32年が経過した2014年に解体されている。
東京ドームは開業して36年が経ち老朽化が進んでいることもあり、以前から移転話が持ち上がっていた。
築地市場跡地への移転話が再燃
その候補地の一つが、築地市場跡地だった。
同跡地のうち東京ドーム4個分に相当する広大な敷地が貸付対象で、新スタジアム建設構想が浮上したのだ。
東京のど真ん中に位置する東京ドームは、JR水道橋駅と都営地下鉄三田線の水道橋駅、東京メトロ丸の内線の後楽園駅の3駅に隣接し、交通の利便性は抜きん出ている。
一方で築地市場跡地も、東京メトロ日比谷線の築地駅、都営地下鉄大江戸線の築地市場駅から徒歩1分で、新橋、銀座、有楽町から歩いて行ける好立地だ。
「読売新聞社にとって魅力的なのは、築地市場がライバルの朝日新聞本社の目の前にあることです。敵陣に橋頭堡を築く意味もあって、移転計画を進めていたんですが、小池百合子都知事が築地市場跡地に『食のテーマパーク』構想を打ち出したことで、いったん白紙に戻った。その後は代々木公園の再開発計画地なども候補に上がったが、球場建設には敷地面積が不足するなど条件を満たす候補地はなく、結果的に東京ドームの大改修で新時代に臨むことになりました」(巨人担当記者)
しかし、築地市場跡地の再開発が、およそ5万人を収容できる多目的スタジアムを中心に進められることになり、事業予定者に読売新聞社が入っていることから、球団の本拠地移転話が再燃した。
自前の本拠地球場を持たない弊害はある。
それが如実に表れたのが、コロナ禍の2020年。例年なら7月に東京ドームで開催されていた社会人の都市対抗野球大会が、同年に予定されていた東京五輪を考慮して11月22日からに変更されたのだ。
「この年はコロナで開幕が3カ月遅れ、日本シリーズも11月21日から開始となり、完全にバッティングした。シリーズ進出を果たした巨人は、本拠地の東京ドームが使えず、京セラドーム大阪での開催となった。前代未聞ですよ。自前の球場は読売新聞社の悲願なのです」(球界関係者)
(広告の後にも続きます)
野球専用で天然芝、全天候型の開閉式ドーム?
2024年5月、都内で行われた築地市場跡地の再開発「築地地区まちづくり事業」に関する記者会見に、事業会社の一つである読売新聞グループ本社の山口寿一社長が出席。
巨人のオーナーも務める山口社長は、築地市場跡地に建設が予定されている多目的スタジアムについて、「巨人軍の本拠地移転を前提として検討してきたものではございません」と語った。
プロ野球球団を保有する企業としての意見を聞かれた山口社長は、「魅力あるスタジアムというのは当然、私どもとしても使ってみたいという気持ちはある」と説明。
本拠地移転に関しては「相当な調整が必要な大仕事。読売だけでは決められない」と、慎重な姿勢を崩さなかった。
「巨人の築地市場跡地移転については情報が錯綜していますが、関係者はノーコメントの姿勢を貫いており、否定的な見方もあります。巨人が2032年開業予定の築地新球場を使用することは間違いありませんが、その間に現在の東京ドームを建て替え、完成後に戻るという説も浮上しています」(スポーツ紙デスク)
確かに巨人の歴代首脳は、伝統球団にふさわしい自前球場の理想像として、野球専用で天然芝のグラウンド、全天候型の開閉式ドームなどの構想を語ってきた。
だが、築地の新スタジアムは用途に応じて客席やフィールドの形状が変わる多目的施設。グラウンドは人工芝で、屋根は開閉式ではなく閉じたままの形だ。
2034年に巨人は創設100周年を迎える。
築地新球場を2年間使用している間に、野球専用の“新東京ドーム”が完成すれば、球団の大きな節目となるシーズンから新たな本拠地を使うことも不可能ではない。
球界の盟主の未来を大きく左右する事案だけに目が離せないが、ともかく巨人が強くなければ、新しい球場ができても見向きはされないだろう。
『検証 2025年の大予言』(小社刊)より