年末年始の9連休で、「食っちゃ寝」を繰り返し、仕事を再開した今もなんとなく胃腸がもたれている…。そんな人は少なくないのではないだろうか。これは暴飲暴食や運動不足により胃腸がいじめられた証拠で、同時に現れるのが便秘や軟便、「オナラ」の多発といった症状だ。

 私たちは食事をする際、食べものと一緒に空気を飲み込む。その空気が、腸の中で発生したガスや血液から腸粘膜を通って出てきたガスと混ざりあい、肛門から体外へ排出される。それがオナラだ。とはいえ、飲み込んだ空気や血液から腸の粘膜を通って出てきたガスはほぼ無臭。なので、ニオイの正体は腸内細菌が食物を分解するときに発生するガスの成分ということになる。

 通常、成人の場合、オナラは1日0.5~1.5リットル程度が作られ、約85%は血液中に吸収、残りの約15%が約5?20回に分けて肛門から排出される。ところが、不規則な生活や肉に偏った食事、運動不足などが続くと腸内の悪玉菌が増殖し、結果、ガスが増える原因になる。発生するガスは摂取した食べ物により異なるものの、基本、オナラのニオイの成分は硫化水素や二酸化硫黄、二硫化炭素、インドール、スカトールなどだ。ただ、野菜類や果物、豆類などのオリゴ糖や食物繊維多くとっている場合は、それらをエサとする善玉菌が増殖するため、この時出るガスは大半が二酸化炭素で、ニオイはほぼ感じられない。

 一方、食事がたんぱく質や脂質中心になると、ウェルシュ菌などの悪玉菌がタンパク質を分解。少量でも強力なニオイを発するスカトールなどの成分を発生させるため、オナラが臭くなってしまう。つまりオナラのニオイは健康の大事なバロメーターといえるのだ。

 そんなわけで、正月明けからずっと胃腸がもたれ、オナラの匂いが臭くなったと感じる人は、まずは一日でも早く生活習慣を元通りに戻すことを心がけることだ。ただ、それでもなおオナラにいままでになかったような臭さを感じる人は、注意が必要だ。

 というのも、近年では、糖尿病や肝硬変、肥満などの疾患で腸内細菌の異常が見られるケースが急増。腸内細菌が全身免疫系にも影響するとの報告が多数なされている。

 さらに、腸内細菌が関連する代表的な疾患である大腸がんも増加の一途をたどっている。通常、善玉菌は腸内を酸性に保つことで悪玉菌増殖を抑え、発がん性の源となる腐敗産物の増殖を抑え込む役割を担っている。しかし、悪玉菌が優勢になれば当然、疾患発症のリスクは格段に高くなる。大腸がんは初期ではまったく症状がないことも多く、また採血検査やレントゲンも参考程度で、確実な診断をすることはできない。なので、大腸がんであるかどうかを確認するためには大腸内視鏡検査が必要になる。

 この正月明け、食生活を改めても臭いオナラが継続するような場合は、一度専門医を訪ねてみることをおすすめしたい。

(健康ライター・浅野祐一

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