日本ハムの新球場としてだけでなく、スタジアムを中心とした新たな街づくりを進めているエスコンフィールド北海道。敷地内には遊具を揃えた公園や保育施設、宿泊施設に分譲マンションなどがある。もはや既存の野球場とは一線を画す存在だが、28年春には北海道医療大学の移転が決まっている。

 約3600人の学生、約800人の教職員を有する道内最大の医大の移転は全国ニュースでも報じられたが、この決定に悲鳴を上げているのが現在キャンパスのある石狩郡当別町だ。

 学生だけでも約900名が町内のアパートなどに住んでおり、当別町の人口は約1.5万人。一部の教職員やその家族も暮らしていることを考えると、もはや看過できない人数だ。

 当別町の後藤正洋町長は24年6月に町議会で大学の慰留を断念したことを報告した際、「大変残念」と語っていたが、それは地元の町民たちにとっても同様だ。

 町内にアパートを所有する男性は、「大学移転後の入居者のメドが立たなくなった。空室のままならこのまま取り壊してしまったほうが…」と嘆き節。地元で飲食店を経営する男性も「ウチは医療大関係者が多かったから移転は大打撃。売り上げダウンは避けられない」と悲鳴を上げる。

 また、JR札沼線(学園都市線)の終点は北海道医療大学駅となっているが、同駅を利用する地元住民の1人は「移転後に駅が廃止になるのでは…」と不安を口にする。

 実際、当別町の市街地は隣の当別駅を中心とした地域。北海道医療大学駅の周辺は大学以外に田畑が一面広がっており、家は点在する程度だ。直ちに駅の廃止問題に発展するかは不明だが、利用客減少を見込んで発着本数が削減される可能性はゼロではないだろう。

 当別町は札幌市の北側に隣接するとはいえ、札幌中心部から25キロ圏と郊外に位置する。札幌駅から1本で行けるが、北海道医療大学駅までの所要時間は47分前後。これに対し、移転先には北海道ボールパーク駅(仮称)が28年夏頃の開業を予定している。現時点で最寄りの北広島駅でも札幌駅から快速で16分、普通でも22分のため、通学にも便利だ。

 ただし、移転先の北広島市はベットタウンとして開発が進んでおり、住みやすさの点でも分がある。現地に住む学生も相当数に上ると予想される。エスコンフィールドに罪はないが、その陰ではゴーストタウン化の危険が迫っている自治体もあるのだ。

※写真は北海道医療大学のある当別町

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