DMでいきなり告白するZ世代…「あー、たまにそういうイタイやついるよね」と笑っているけど、そもそもほとんど話したことのない人からの告白って変?

学習塾を経営しながら、社会批評の執筆活動を続ける物江潤氏。SNSと生活が密接に絡まる今どきの中高生の恋愛事情と、Z世代にとっていかにネットとリアルの世界が繋がりが重要であるかを解説してもらった。

本記事は書籍『「それってあなたの感想ですよね」論破の功罪』を一部抜粋・再構成したものです。

DMで告白するZ世代

世代を問わず、私たちはゴシップに夢中です。噂話が楽しくて仕方がありません。ゴシップネタが舞い込めば、誰かに話したくて仕方がない方も多いことでしょう。私自身、やっぱりゴシップは楽しくて、ついつい根掘り葉掘り聞いてしまう方です。

もちろん、それは今を生きる中高生も例外ではありません。休憩時間中、中高生のゴシップネタが飛び交うことは珍しくないですし、気が付くと私も興味津々に話を聞いてしまうことが多々あります。

当世風だなと思うのは、DM(ダイレクトメッセージ)にまつわる話です。友達がDMで、ほとんど話したことのない同級生から告白された、なんてものです。

誤解なきよう記しておくと、ゴシップになるくらいなので、デジタルネイティブのZ世代とはいえ、これは一般的な告白のあり方ではありません。ただし、段階を踏まず、いきなりDMで告白をしてしまうという現象は、特別珍しいものでもないようです。

中高生たちはそれほど驚くことなく、「あー、たまにそういうイタイやついるよね」くらいの感覚で楽しそうに話をしています。

しかしながら、恥ずかしくて意中の子とまともに話ができないなか、清水の舞台から飛び降りるつもりで唐突に告白してしまったなどという話は、世代を問わず見られるもののはずです。

DMという言葉を取り除き、偏見を排してこのエピソードを眺めてみれば、実は大人世代がしてきたことと大差ないことが分かります。

違うのは、欲求を容易に実現するツールにあり、そしてそれがために従来の性質が鮮明になるということです。

Z世代に関する論のなかには、大人との違いを際立たせるものも散見され違和感を覚えますが、本質的に私たちと何ら変わらない部分が沢山あることを忘れてはならないと思います。

むしろ、Z世代を紋切型のワードで理解し接してしまうと、そのことを敏感に察知した彼らから疎まれるような気がしてなりません。

さて、そんな便利なツールであるDMは、これ以上ないくらい、意中の子と接近するのを容易にしています。

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ファーストコンタクトがDM

まず、直接面と向かって会話をする必要がありません。無論、連絡先の交換も不要です。SNS内にて、気になる生徒のアカウントを探索してフォローし、あいさつがてらのDMでもすれば、それでファーストコンタクトは完了です。

こんな便利な道具が中高生時代にあったら、今は大人の方々も喜んで使用したのではないでしょうか。

あえて言えば、面と向かって話したことがないのに、平気でDMをしてしまうという感覚は、デジタルネイティブとそれに近い世代でないと分かりにくいかもしれません。

友人や恋人とのファーストコンタクトがDMだったという話は、ごくごくありふれたものになっていて、そのこと自体はZ世代にとって自然なことになっています。

DMで連絡を取り合い一定の信頼関係が構築されたら、次はLINEアカウントの交換や無料通話といった次の段階に移り、そして実際にリアルの世界でも交流を深めることで交際に至るというわけです。

なかには、通話をしながら一緒にゲームができるという便利なアプリを使い、四六時中ネット上で交流しているうちに、リアルの世界での会話がほとんどないまま付き合うことになった、という事例もあるようですが、さすがに稀なケースでしょう。

「#春から〇〇生」「#春から〇〇大学」というSNS内にて見られるハッシュタグもまた、そんな今日的なファーストコンタクトの一つです。大学や高校に合格した中高生が、入学前に友人(候補)を作ってしまおうという試みです。

もちろん、このハッシュタグがあるからといって、誰彼構わずフォローするということは通常ありません。SNS内に投稿されている動画・画像・文章に目を通し、自分との相性をチェックしたうえでフォローするのが一般的です。

入学前から、自分と波長が合いそうな人たちと接触できてしまうとは、なんて便利な世の中なのだろうとも思います。