正月太りしたら、どうやって痩せる? / Credit:Canva

正月明けの憂鬱の原因は、仕事だけではないかもしれません。

正月太りしてしまって、なんとか体重を戻したいと悩んでいる人は多いでしょう。

とはいえ、極端な食事制限は長続きせず、体調を崩す原因にもなってしまいます。

では、正月太りで増加した体重を無理なく健康的に元に戻すには、毎日どれくらいのカロリー制限が必要で、どんな生活スタイルを取り入れるのが適切なのでしょうか。

アイルランドのリムリック大学(University of Limerick)に所属する栄養学の講師であるアレクサンドラ・クレモナ氏は、食生活を少し変えるだけでも体重を減らせると教えています。

目次

体脂肪を減らすためのカロリー計算方法ダイエットが上手くいかない理由と対策

体脂肪を減らすためのカロリー計算方法

正月明けに、体重計に乗ってびっくりした人は少なくないでしょう。

また鏡でパンパンになった顔や体を見て悲しくなって人もいるはずです。

年末年始は確かに楽しいひと時ですが、暴飲暴食や生活リズムの崩れにより、急激に体重が増える場合があります。


年末年始の暴飲暴食が原因で…… / Credit:Canva

では、正月太りで増えた体重をどのように元に戻すことができるでしょうか。

大前提として、私たちの望みは単に体重を減らすことではなく、「増えた体脂肪を減らす」ことです。

急激な食事制限では、体脂肪だけでなく貴重な筋肉も減少してしまうため、注意が必要です。

また体内の水分が抜けるだけでも、数日で体重が2.3kg減ることがあります。

確かにむくみ(皮膚の下に余分な水分が溜まった状態)を解消することは大切ですが、肝心の体脂肪が減っていなければ、スタイルは変わりません。

そのため、正月太りの後の対応として正しいのは、適切な食事制限により、できるだけ体脂肪だけを減らしていくことです。

では、どのように体脂肪を減らしていけるでしょうか。

まずは自分の1日の総エネルギー消費量を計算する必要があります。

これは基礎代謝量と活動レベルによって簡単に算出することができます。

その計算を助けるWebサイトはたくさん存在するので、それらを活用して自分のエネルギー消費量を知るようにしましょう。

例えば、一般的な女性の消費カロリーは、1800~2000kcalであり、デスクワーク中心の男性の1日の消費カロリーは平均2200kcal、力仕事をする男性は2400~3000kcalになります。

この1日の消費カロリー以上のカロリーを摂取すると、その分、体脂肪が付きます。

逆に、この1日の消費カロリーからマイナスになった分だけ、体脂肪を減らすことができます。(この時、筋肉も減ってしまいます)


まずは1日の総消費カロリーを把握しよう。その後、総消費カロリーが総摂取カロリーを上回るように、1日の摂取カロリーを決定できる。 / Credit:Canva

脂肪1kgは約7000kcalなので、毎日の生活で合計7000kcal分のマイナスを作り出せるなら、体重が1kg減ることになります。

そのため、毎日マイナス500kcalの生活を約2週間継続できれば、体重(体脂肪)を1kg減らせます。

白米1合分、もしくはマクドナルドのポテトLサイズが500kcalなので、毎日その分だけ食べる量を減らす必要があるわけです。

正月太りで体重が3kg増えたのであれば、単純計算で、この生活を1.5カ月続ければ、元に戻ることになります。

とはいえ、1日の食事から500kcalをカットし続けるのは簡単ではありません。

もっと楽な方法はないのでしょうか。

クレモナ氏は、過去の研究から、たとえ1日100~200kcalのマイナスでも、減量を成功させることが可能だと述べています。(ただし、消費カロリーの計算ミスには要注意です)

短期的には体重はそれほど減りませんが、長期的に無理なく続けることで、リバウンドするリスクも少なく、確実に痩せることができるというのです。

これは、食生活を少し変化させるだけでも可能です。

例えば、「間食をやめる」「お茶碗のごはんの量を減らす」「ジュースをやめて水を飲む」などの変化でも1日の摂取カロリーを200kcal減らすことができます。

しかし、これらのダイエットを続けていくと、大抵の場合、途中で体重が思うように減らなくなります。

ここがダイエットをする際の1つの落とし穴です。

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ダイエットが上手くいかない理由と対策

カロリー制限を続けているのに体重が減らなくなるのは、摂取カロリーを減らすと体の基礎代謝量も減少するためです。

これは体の適応によって生じる現象であり、体が「エネルギーを節約してしまう」ことから生じます。


カロリー制限を続けているのに、体重が減らなくなる理由は? / Credit:Canva

また、カロリー制限は、代謝や食欲に影響を与えるホルモンを変化させる場合があります。

例えば、カロリー制限によって甲状腺ホルモンが減少し、代謝が低下します。

また胃から分泌される食欲ホルモン「グレリン」は、摂取カロリーが減ることで増加していき、食欲を刺激してより多くのカロリーを摂取するよう脳に信号を送ります。

グレリンのレベルが高くなると、体が常に空腹を感じるため、低カロリーの食事を維持するのが難しくなります。

キレ食いして、せっかく制限してきたカロリーを大量に摂取してしまうことに繋がるのです。

他にも、血糖値と脂肪の蓄積を調整するインスリン、ストレスホルモンであるコルチゾールなどが、私たちのダイエットを妨げるような働きをします。

では、このような生理的な適応に、どのように対処すべきでしょうか。


体重を落とし続けるには、筋肉量を維持することが大切 / Credit:Canva

クレモナ氏は、「筋肉量を維持することが不可欠」だと述べています。

筋肉は脂肪組織に比べて、安静時に多くのカロリーを消費するため、代謝率の低下を緩和するのに役立つのです。

そのため、ダイエットと平行して筋トレを行ったり、タンパク質をしっかりと摂取したりすることが大切になってきます。

また、極端なカロリー制限をしない(1日あたり200~300kcal程度のマイナスに留める)ことや、栄養価の高い食品を摂取すること、規則正しい食事も、ホルモンの影響に対処するのに効果的です。

では、「毎日、カロリーの計算などしていられない」という人は、どうやって脂肪だけを減らしていけるでしょうか。

クレモナ氏は、カロリーを厳密に計算しなくても、以下の方法で摂取カロリーを減らせるとアドバイスしています。

小さめの皿を使用し、食事量を減らす
お菓子を果物に、炭酸ジュースを水に置き換える
ゆっくり食べ、食事中は食事だけに集中する
食事中に水を飲むことを意識し、満腹感を高める
食事できる時間を定める(午後8時以降は食べない、など)

いずれにせよ、体重を効果的に減らすためには、いきなり断食したり、1000kcalマイナスにしたりするような無茶な食事制限ではなく、ちょっとした食生活の変化を継続させるべきです。

ですから、正月太りが気になっても焦らないでください。

着実に痩せるためには、食生活を少し見直し、それを数カ月~半年続けてみましょう。

上手くいけば、体重を元に戻すだけでなく、より健康的なスタイルを手に入れられるはずです。

参考文献

Even small diet tweaks can lead to sustainable weight loss – here’s how
https://theconversation.com/even-small-diet-tweaks-can-lead-to-sustainable-weight-loss-heres-how-236089

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部