「ソールド・アウトだもんね、凄いよね。前回のツアーファイナルは(福岡LIVE HOUSE)Queblickでやって、今回(福岡)BEAT STATIONでやろうとなったときに、早すぎない?と言われて。早くなかったね。FOMAREとみんなのおかげです!」とジ・エンプティのハルモトヒナ(Vo)はライヴ序盤にそう語りかけた。

振り返れば2023年12月25日、ジ・エンプティの1st EP『神様からの贈物 e.p.』レコ発ツアー・ファイナルを地元・福岡LIVE HOUSE Queblickで開催。クリスマスの日に行ったライヴを筆者も観たが、それから約1年が過ぎ、2nd EP『革命 e.p.』レコ発ツアー・ファイナルを2024年12月18日、福岡BEAT STATIONにて決行。全国12カ所に及ぶツアー最終日のゲストにFOMAREを迎え、会場はぎちぎちの満員御礼状態となった。

「僕と夜明け」で幕を開けたFOMAREは、初っ端から観客を焚きつける。「全員で歌える準備はできてますか?一つになりましょうね!」とアマダシンスケ(Vo/B)は叫び、「愛する人」では大合唱の光景が広がった。さらに「ライヴハウスにしようぜ!」と煽り、2ビートを配した「Frozen」でフロアをぐちゃぐちゃに掻き回していく。「(ジ・エンプティは)後輩、いや、友達」とアマダは言い直し、「革命起こした?」とステージ袖で観戦していたジ・エンプティの面々に問いかけるや、「北海道、楽しかった!」とメンバーが返答。続けてアマダは「ジ・エンプティは20代前半、自信を持ってライヴをやっていて、当時の俺らには持ってなかったものがある。本当にかっこいい4ピース。FOMARE21歳のときに書いた曲、ジ・エンプティが聴きたいと言ったので」と前置きし、ここで「mirror」をプレイ。歌心溢れる王道のバラードを解き放ち、観客もじっくりと曲の世界に心酔。カマタリョウガ(G/Cho)の哀愁を帯びたギターソロも秀逸だった。しかし演奏後、「聴きたい曲がまさかのバラードで、4曲目にバラードやったことがなくて。どう立て直そうかと・・・」と胸中を吐露するアマダ。そんな弱気発言は前フリだったのか、熱いコール&レスポンスから始まった「SONG」では一瞬にしてロック・バンドの空気に塗り替え、地元・群馬の歌「夕暮れ」では特大のシンガロングを起こし、ラストスパートは「Continue」、「君と夜明け」で満杯のフロアを激しく揺さぶった。

FOMAREが十分すぎるほど場を温めた後、20時7分にSEが流れ、遂にジ・エンプティの出番が来た。トクナガシンノスケ(G)、クガケンノスケ(B)、カワカミタイキ(Dr)がスタンバイすると、「ツアーファイナルBEAT STATION、調子はどうですか?」とヒナは呼びかけ、最新2nd EP『革命 e.p.』収録の「連れ出してやるぜ今夜」でスタート! スローな始まりから重厚なバンド・サウンドで一気に畳み掛けてくる。「調子はどうだい」、「いつまでも君の味方でいたい」と親友のように語りかけてくる歌詞同様、観客の心に火を灯す最上のオープニング・ナンバーである。無数の拳がフロアから突き上がり、早くもジ・エンプティのカラーに会場を染めていた。

「腹から声出せ!」と煽ると、次は「テイクミーアウト」へ。童謡を彷彿させる親しみやすいメロディに観客も大合唱、曲の後半には肩車〜サーファーが続出する凄まじい盛り上がりだ。ヒナの絶唱ぶりはこの瞬間に燃え尽きてもかまわない、と感じるほどの全身全霊ぶり。また、地に足のついた演奏もドッシリした風格に溢れ、前回のツアー・ファイナルとは比べものにならないくらいバンドは成長を遂げていた。

会場の熱気を「君が」、「MY SWEETIE」でさらに押し上げ、ちょっぴりメロウな「ウルトラロマンティック」に移っても観客のテンションは落ちない。「バチコイ」においても観客によるシンガロングが吹き荒れ、「このツアーで一番だな」と曲中にヒナが称賛するほどであった。それから『革命 e.p.』収録の「笑っておくれよ」に雪崩れ込む。突如挟まれるスカのリズムも痛快で、ライヴでは水を得た魚のように勢いが加速していた。「ラブソング」を挟み、「一緒に革命起こしてもらってもいいですか?」と告げ、『革命 e.p.』表題曲をドロップ。マーチング風のドラムやメロディアスなギターに加え、メロウなパートを導入した物語性に富む展開で聴き手を引き込む。「愛している 革命起こすのだ 鉄砲が小さく見えるほど」の歌詞もフックとなり、大きな愛を歌うメッセージ色の強いナンバーはバンドの新たな魅力を浮き彫りにしていた。

「最初は多すぎると思ったけど、12本のツアーはあっという間で、今日もいろんな場所から来てくれてる。どんな思い出も大切に持って帰ってほしい」とヒナは言い、「思い出は甘いままで」に繋ぐ流れも良かった。それから『革命 e.p.』収録の中で唯一まだプレイしていない「銀河高速に乗って」を披露。情景が浮かぶ歌詞はもちろん、叙情的なギター、メロディアスなベース、パワフルなドラミングの援護を受け、感情を込めて歌うヴォーカルも一段と輝いている。エンディングではFOMAREの「Frozen」の一節を歌うイキな演出もあり、ちょっと驚いてしまった。

「こいつら(メンバー)と出会わなかったら、みんなと出会わせなかったら、FOMAREと出会わせなかったら、バンドを辞める理由を探していたかも」とヒナは語った後、ステージ最前に座り、「グッバイ青春」を観客と近い目線で歌い上げる。当意即妙のパフォーマンスで観客の意識を奪いながら、ライヴもいよいよ佳境に差しかかる。「今日初めて観る人もおるけんさ。サブスクにもYouTubeにもない曲、君が輝けますようにって曲」と説明を入れ、「輝き」をプレイ。アカペラ調に歌う冒頭部分を経て、ミドル〜アップテンポに切り替わる直球のパンク・ナンバー。ELLEGARDENの「Make A Wish」的な展開に会場も好リアクション。本編を「おやすみレイディ」、「さよなら涙」で締め括り、鳴り止まぬアンコールに応え、再びメンバー4人が登場した。

今回のツアー・ファイナルのゲストにFOMAREをオファーした際、アマダから即決で返事が来たこと、また、来年3月には大分、宮崎、熊本の3カ所を回る九州ツアーのお知らせもあり、福岡に遠征で来た九州のお客さんから歓声が起きる場面もあった。やはり、自分の地元に大好きなバンドが来てくれることが嬉しかったに違いない。追加曲に「今宵はベイビー」、「神様からの贈物」、ラストは「おやすみレイディ」を再び演奏し、シンノスケとケンノスケの2人がフロアにダイブ! 会場はお祭り的な盛り上がりを見せ、約1時間15分に及ぶステージを豪快に駆け抜けた彼ら。

前回のツアー・ファイナルと比べて、歌声と演奏の表現力は磨き抜かれ、さらにアドリブ力や観客を巻き込む煽動力といい、全方位的にスキルがレベルアップしていた。かといって、バンドを始めた頃の初期衝動めいた勢いは微塵も失っていない。獰猛な牙と懐の深さを併せ持ち、シャープにして包容力のある楽曲アプローチにジ・エンプティの成長を感じずにはいられなかった。2025年は熱情迸るライヴ・パフォーマンスが話題を呼び、飛躍の年になることは間違いないだろう。そう強く確信させる素晴らしいツアー・ファイナルであった。

文:荒金良介
写真:烈

セットリスト

1.連れ出してやるぜ今夜
2.テイクミーアウト
3.君が
4.MY SWEETIE
5.ウルトラロマンティック
6.バチコイ
7.笑っておくれよ
8.ラブソング
9.革命
10.思い出は甘いままで
11.銀河高速に乗って
12.グッバイ青春
13.輝き
14.おやすみレイディ
15.さよなら涙
En1. 今宵はベイビー
En2. 神様からの贈物
En3. おやすみレイディ

ライブ・イベント情報

<ジ・エンプティ × プロジェクトファミリー「SAN」>
3/10(月) 大分clubSPOT
3/12(水) 宮崎LAZARUS
3/13(木) 熊本Django
※ゲストは後日発表

関連リンク

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