▲写真:photo AC

年末年始は、何かと忙しかった人も多かったのでは、そんな時に見習いたいのが、沖縄を代表する県民性の一つとしてあげられる「ゆいまーる精神」。

これは「助け合い」を意味する方言で、沖縄の人は、同じコミュニティに属する人が困っていたら、手を差し伸べる――そんなイメージを持ちがちです。

とはいえ、それは表面的な捉え方に過ぎないと指摘するのが、本土企業の沖縄進出をお手伝いしている伊波貢さん。沖縄でビジネスをする際、「ゆいまーる精神」を期待すると、痛い目に遭うのだとか。

沖縄独自の商慣習についてまとめた著書『沖縄ルール』もある伊波さんは「沖縄は日本語の通じる外国」と考えるといいと言います。沖縄県人独自のメンタリティについて話を聞きました。

■沖縄の人は意外とドライ!?

――沖縄というと、助け合い精神、お互い様といった意味の「ゆいまーる」が有名です。

伊波:

ただ、沖縄の人の特徴として、忠義や恩義という概念が弱いとはよく言われています。例えば、目をかけて育ててきた社員が、「あちらの会社が給料高いので、辞めて転職しますね」と、悪びれることなく言ってくることがあります。

――けっこうドライなんですね。

伊波:

ただし、個人と法人では若干考え方が異なる気がします。私が銀行を退職して20名の株主に出資いただき会社を設立した際の話です。これまで結構仲良く飲みにも行き、仕事でも関わった方々に出資の依頼に行くと、お金の話が出た途端に表情が変わり、「考えておこうね」とほぼ全員に逃げられてしまいました。

一方で、沖縄の経営者のみなさんは、「出資したことないけど協力するよ」という方々が多くて、事業計画書の説明も聞かないままに応じてくれたんです。会社経営の大変さを骨身に染みて理解しているからでしょう。

――個人はシビアだけれども、法人の立場では手を差し伸べてくれると。

伊波:

はい、また、私たちの会社が展開しているキャリア教育イベントの寄付を募った際のことです。やはり沖縄の人の反応はとても鈍くて、150名程度の寄付者のうち、地元沖縄の人の割合は63%程度に過ぎませんでした。沖縄は、心の優しい人が多いとよく言われますが、実際にはお金やビジネスの話になると、とてもシビアな方が多い気がします。

どれほど世話をしたつもりでも、優しくしたつもりでも、情緒的に恩義や忠義で考えるという思考が弱くて、「それとこれとは別」と合理的に考えるというところなのかもしれません。

――なぜ、そのような考え方になるのでしょうか。

伊波:

いわゆる「義」がないのは、気候の影響によるものとも考えられます。凍える雪山で助けてもらった一宿一飯の恩義を子孫末裔まで忘れない、という考え方は沖縄の人にはとても仰々しく聞こえるのではないでしょうか。沖縄では道端で寝ても凍え死ぬことはないし、山に行けば果物があり、海に行けば魚も捕れるわけですからね。

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■ビジネスで「ゆいまーる精神」を当てにすると痛い目に

伊波:

このケースでいうと、本土出身の個人の方は私財を投じて私たちの会社の設立を支えてくれました。しかも、こちらが特に便宜をはかった記憶もないんです。お世話になったから困ったときはお互い様だとおっしゃるんです。

――それは意外な気もします。

伊波:

一方で本土の法人の場合は、どういう仕事を具体的にまわすのかと、ことごとく聞かれ、結局1社も出資に応じてくれませんでした。結構懇意にしてきたつもりでしたが、それはあくまで名刺上のお付き合いであって、合理的な理由がなければ協力できないということだったんでしょう。個人としては、恩義に感じているけれど、組織の判断は別のようでした。

さきほどの寄付金の話でいえば、本土出身者の反応は、沖縄の人よりもはるかに良かったです。しかも、1人あたりの寄付額が大きい人が多くて、教育支援に関する熱い想いを感じました。

――沖縄の個人と本土の法人はシビアで、沖縄の法人と本土の個人は義理人情に厚いということですか。

伊波:

そうですね。もちろん、今ご紹介した例は、私個人の体験にもとづくものですが、沖縄でビジネスをしようと進出した本土の方たちをお手伝いしているときにも、やはり同じような傾向を感じます。

沖縄において、助け合い精神、お互い様といった意味の「ゆいまーる」は、ある面では事実だと思います。ただ、「ゆいまーる精神」は、こと沖縄のビジネスシーンでは十分に発揮されていない気がしますし、それをあてにして沖縄のビジネスを展開するのは短絡的かもしれません。

――ありがとうございました。次回は、沖縄の精神の独自性について、さらにうかがっていきます

次回つづく