【MotoGP】ロッシやストーナー、偉大な先輩ライダーの軌跡を再現できるか? アプリリア移籍マルティンの挑戦

 2024年にMotoGPチャンピオンに輝いたホルヘ・マルティン。彼は2025年にはキャリアを積んできたドゥカティ陣営のプラマックを離れ、アプリリアへと移籍する。はたして新天地ですぐに成功を収められるだろうか?

 マルティンは2024年にチャンピオンとなったが、サテライトチームのライダーが王者となるのは2001年に500ccクラスでナストロ・アズーロ・ホンダでバレンティーノ・ロッシが王者となって以来のことで、MotoGPクラスとなってからは初となる快挙だった。

 そんなマルティンは2025年シーズン、現在最強のドゥカティ陣営を離れ、アプリリアでの成功を掴めるかどうかという新たな挑戦を迎えた。

 アプリリアは近年優勝を争える位置に接近し、実際に2024年もマーベリック・ビニャーレスが決勝レースで1勝を収めた。しかし浮き沈みも多く、特に後半戦はドゥカティを相手に後塵を拝することが多かった。

 そんなアプリリアでマルティンが成功できるかどうかには、新シーズンに向けて多くの注目が集まっている。とはいえ可能性というところでは、十分に有り得る話でもある。2004年にバレンティーノ・ロッシがディフェンディングチャンピオンとしてホンダからヤマハに移籍した事例が、その良い例だろう。

 当時ロッシはホンダで3回王者となったが、苦戦していたヤマハへ移籍した。この移籍の背後には、ロッシがホンダのバイクではなく、自分が違いを生んでいるのだということを証明しようという野望があった。

 そして予想外にも、ロッシはヤマハでのデビュー戦となる南アフリカGPで、いきなり優勝を達成。語り草になる勝ちを挙げたロッシは、その勢いのまま2004年にヤマハでチャンピオンとなってみせた。

ロッシの再現はできるか?

 マルティンのアプリリア移籍は、そうしたロッシの事例と重なって見える。ではマルティンが成功を収められるだろうかと考えると、かなり厳しい戦いが待っていることは間違いないと言える。

 まず少なくとも、アプリリアでのデビューウインに向けたハードルは高い。舞台となるタイのチャーン・インターナショナル・サーキットでは、この2年間はドゥカティが強さを発揮しているからだ。

 さらに2025年からドゥカティのファクトリーチームに昇格したマルク・マルケスも、チャーンでは過去に2勝を挙げており、ドゥカティ初年度の2024年はスプリントと決勝で2位だった。

 ドゥカティのファクトリーチームは、2024年にマルティンとタイトルを争ったフランチェスコ・バニャイヤとマルケスという超強力ラインアップで、まさにドリームチームとも言える。マルティンがアプリリアで勝つことは容易ではないはずだ。

 とはいえ、アプリリアが2024年にドゥカティ以外で唯一勝利を収めたメーカーであることから、2025年にドゥカティの支配を打ち砕く大番狂わせを起こす有力な候補であることも間違いないだろう。

移籍後の勝利はストーナーが大得意?

 なおメーカーをまたいで移籍した後に勝利を収めるという点では、ケーシー・ストーナーが非常に優れていた。

 ストーナーは2006年にMotoGPクラスにLCRホンダからデビューしたが、翌年はドゥカティへ移籍。そしてドゥカティのデビュー戦でヤマハのロッシと、ダニ・ペドロサ(ホンダ)に差をつけて勝利するという離れ業をやってのけた。

 なおその2007年にストーナーはチャンピオンに輝いており、ドゥカティが次に王者を獲得するまでには15年の歳月を要した。

 その後ストーナーは2011年に再びホンダへと移籍。ここでもストーナーは速さを見せ、RC213Vでの初レースとなるカタールGPで、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)やペドロサらを抑えて勝利……2011年にチャンピオンとなり、2012年限りで電撃引退した。

 マルティンはこうした偉大な先達のようにアプリリアで成功できるのか? その答えは2月末の開幕戦から明らかとなっていくことだろう。