1998年に消滅した世界的スキーブランド「KÄSTLE」復活から日本上陸までの軌跡

日本展開へ

私自身、スキー選手引退後は、スキー以外の様々な仕事に関わってきた。未経験ながら、不動産業やブライダル業で起業し、自身のアイデアと気持ちだけでなんとかやってきた過去もある。そのためか、スキーブランドの日本展開および輸入販売というアイデアは、今までトライしてきた異分野での起業と比べれば大きなアドバンテージがあったため、その挑戦をためらう理由もなかった。

アルペンチームのヘッドコーチ解任となって数週間が経った頃、自身が過去にケスレと関わっていたことを証明する資料や写真を準備して、オーストリアの西端にあるスイスとの国境の街“ホヘネムス“へと向かっていた。そこはケスレブランド始まりの地でもあり、今も本社を構える場所だ。

インターナショナルセールスの担当者から話しを始め、2回目の訪問時は、本社CEOとの面談となった。私は5年もオーストリアに住んでいながらドイツ語は話せない。英語はできると言っても、込み入った話になると理解に苦しむことが多かった。 しかし、私のブランドに対する熱意や、ケスレと一緒に思い描く未来を語ることで、CEOをはじめ、本社の主要メンバーからの信頼を得ることができた。そして、私を中心とした日本におけるケスレスキーブランドの本格再開が決定した。

ケスレ社のCEO、アレキサンダー・ロチャック氏と本社ショールームにて

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多彩なラインナップ

レーシングにルーツを持つケスレは、2019年にアルペンワールドカップへの参戦を再開。そして2023年1月、イルカ・ステュヘッチ(スロベニア)がケスレを使用する選手としては20数年振りとなるアルペンワールドカップでの優勝を掴み取った。翌23-24シーズンもケスレ使用選手の活躍は続き、チェコのエスター・レデツカやスイスのジャスミン・フルリーがアルペンワールドカップで優勝している。その他、スキークロス、モーグル、エアリアル、クロスカントリーなどのワールドカップでもケスレ使用選手の活躍が目立つようになってきた。

’23-24シーズンのワールドカップ最終戦SGで優勝したエスター・レデツカ ©Kästle GmbH

復活を機にフリーライド、オールマウンテン、ツーリングスキー、モーグル、さらにはアルペンブーツにノルディックスキー、そしてマウンテンバイクにまで製品カテゴリーを広げることとなった。中でも話題となっているのがフリーライドスキーとアルペンブーツ。

センター幅が太めのフリーライドスキーは2タイプあり、ピステからパウダーまで自在に遊べるZXシリーズ(センター幅:92mm, 100mm, 108mm, 115mm)と、ハイスピードの中でも抜群の安定感がある本格派フリーライドのPARAGONシリーズ(センター幅:93mm, 101mm, 107mm)。そのデザイン製もあってか、北米のパウダースキーヤーの間で人気となり、どこのスキー場でも見かけるようになった。

そして、22-23シーズンから販売を開始したスキーブーツは、ブランドカラーでもあるケスレミント。雪上での存在感は抜群で、Kブレンドという気温に左右されない、粘りのある独自素材で注目されている。

レーシングスキーに加えて人気なのがフリーライドのPARAGONとZX ©Kästle GmbH
ケスレミントカラーのブーツが雪上で目を惹く ©Kästle GmbH