『宇宙戦艦ヤマト』放送開始からはや半世紀、リメイク版が進行中の「ヤマト」の航海は未だ終わる気配がありません。その主要キャラクターのひとり「真田さん」にスポットを当ててみると、意外かもしれない背景が浮かんで来ました。
真田志郎の視点からリメイクシリーズを振り返る『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202の選択』より (C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202 製作委員会
【画像】実写版のギバちゃんはまんま真田さんでしたがこちらも見事な実写版メーテルさんです
冷静で熱い男、真田志郎
劇場アニメ作品『ヤマトよ永遠に』が公開されてから、2025年で45年が経過しました。2024年から公開、販売が開始されたリメイク版『ヤマトよ永遠に REBEL3199』シリーズも、2025年4月に「第三章 群青のアステロイド」の公開が控えています。
そのリメイク版『永遠に』は、「真田さん」こと「真田志郎」の「無限に広がる大宇宙」から始まるおなじみのナレーションで開幕しました。
真田さんは「ヤマト」シリーズの主要キャラクターのひとりです。ネット上では「こんなこともあろうかと」というセリフで知られ、「宇宙戦艦ヤマト DVDシリーズ」のCMでもそのセリフがネタにされていました。
原点たる第1作から、卓越した技術力でヤマトの危機を救いつづけてきた人物で、初登場した第3話では瞬時に「アストロバイク」を組み立て、「古代進」と「島大介」を驚かせています。第9話では、損傷したヤマトの装甲を補うための「アステロイドシップ計画」を立案、小惑星群を遠隔操作してヤマトのバリア代わりに使用し、ガミラス艦数隻を撃沈する戦果を挙げました。理論だけでなく実践にも強かった、さすが真田さんです。
もっとも大きな戦果といえば、第22話で行われた「ドメル艦隊」との決戦における「ドリルミサイル」かもしれません。ヤマトの艦首波動砲部分に撃ち込まれた「ドリルミサイル」の回転を逆転させ相手の元へ送り返し、その爆発でドメル艦隊に致命的な大打撃を与えるという、真田さんひとりで波動砲と互角の戦果を挙げたといえるでしょう。
なお、イスカンダルへの航海における目的のブツ「コスモクリーナー」の組み立てを担当したのも真田さんです。しかも少々の不具合があったのを改修しており、もはやその手で地球をも救ってみせた、という言い方もできるのではないでしょうか。
このように真田さんの活躍は序盤から終盤まで枚挙に暇がなく、そこには常に技術や理論に裏打ちされた冷静な眼差しがある印象かもしれません。
一方でそうした印象とは異なる、自己犠牲も厭わない熱い男でもあることが第18話「浮かぶ要塞島! たった二人の決死隊!!」にて描かれました。真田さんの主人公回といえるエピソードです。
リメイク版でも主要な役どころを務める真田さん(右)。「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 1」(バンダイナムコフィルムワークス)
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真田さんが担う「重要すぎる役割」
その第18話では、古代進の兄「古代守」の友人であることや、その守の乗艦「ゆきかぜ」の最後の出港時に整備を完全にできなかったのを後悔していたことなどが語られ、さらには過去に事故で両手両足を失っていることが明かされます。
しかも義肢には(なぜか)爆弾が仕込まれており、敵要塞(宇宙要塞13号)の制御コンピュータを破壊するため、ともに要塞へ潜入していた古代進を逃がしたのちに決死の覚悟でこれを起爆、コンピュータの破壊に成功し、そして自身も生還を果たしました。
過去の事故では両手両足と同時に家族も失っており、これをきっかけに、科学に対する猜疑と復讐心のようなものを持ち、科学を志したことも語られています。
そのような「科学」や「技術」というものに対するバックボーン、言ってしまえば執念があるからこそ、彼の発言には「真田さんがそのように言うなら納得するしかない」という説得力があるのでしょう。そしてそれは物語における「ものごとの真偽」を担保するもので、少し考えると怪しかったりツッコミどころがあったりする場合でも円滑に物語を進行させられる(進行させるという役割を担える)といえるのではないでしょうか。
なお実のところ、真田さんは「こんなこともあろうかと」というセリフを、TVアニメのなかでは一度も使ったことがありません。『宇宙戦艦ヤマト2』第10話の後半に「こんなこともあろうと思って」という、かなり近いセリフがあるだけです。
「こんなこともあろうかと」というセリフ自体は、アニメ・特撮評論家の氷川竜介氏によると、氏が同人誌「怪獣倶楽部」内で「ヨタ話として」記した「ロボットアニメの博士が秘密兵器などを使う際の(お約束のような)セリフ」だそうで、それがいつのまにか真田さんのセリフとしてすり替わっていたようです。歴史の長い作品には、いろいろあるものですね。