「陰謀論」はなぜ蔓延るのか? 「スピリチュアル」 と混じり合うことで生まれるとてつもなくマズい現象とは

仲間たちとともに過ごす充実した日々

そんなスピリチュアルと混ざりやすい「陰謀論」の界隈では、規範だけでなく壮大な物語も得られます。

ここで記す物語とは、人間が目的に向かって歩む日々のことを指します。それもただの目的ではなくて、確たる価値基準により生じた目的です。

この目的が社会全体で共有されたとき、それは大きな物語となります。一刻も早く近代化を目指すべきだ、一致団結して戦争に勝利しよう、成長を続ける日本とともに豊かな生活を実現しよう、といったものです。

が、現代社会ではそのような皆が共有する壮大な物語が消滅してしまったのは周知のとおりです。

ところが、「陰謀論」界隈の住人になれば、そんな物語が簡単に手に入ります。たとえば、芸能界の裏側には闇の組織が存在していて、彼らの悪事を暴こうとした芸能人たちは殺されてしまったとするものです。

彼らは闇の組織と戦うという使命感を胸に、今日もネット上で活動を続けています。正義感を胸に宿し、仲間たちとともに過ごす日々は充実しているに違いありません。

しかし、だからこそ彼らは自分の「真実」を社会や他者に強要してしまうという、反社会的な活動に及びがちです。

規範・使命感・物語・仲間・選民意識といったものが軒並み手に入る魅力的な共同体ですが、その副作用もまた甚大なのです。

写真/shutterstock

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「それってあなたの感想ですよね」:論破の功罪

物江 潤

2024/10/17990円(税込)224ページISBN: 978-4106110634

若者はなぜひろゆきに魅了されるのか――?
挑発的な物言い、過剰なエビデンス主義、旧来からつづく規範の軽視――とかく相手を「論破」することを是とし、かつ煽る「ひろゆき氏的な思想」が若者たちを魅了している。しかし、その行き着く先にあるのは、SNSでの誹謗中傷、過激ユーチューバーに外食テロ、FIREブームなど、現代特有の社会問題の数々である。ニーチェや三島由紀夫ら先人の思想をもとに、この危うい思考スタイルを乗り越える道を示す。