ケンタッキーの「チキンクリームポットパイ」を初めて食べてみたら “ある罠” が潜んでいた / そして攻略した

2025年1月6日より、ケンタッキーフライドチキンは冬の定番であるチキンクリームポットパイを数量限定で販売開始した。

筆者はケンタッキーをこよなく愛しているが、同商品は食べたことがない。興味を抱きつつも、ついついオリジナルチキンに手を伸ばしてしまう。そんなことをかれこれ十数年繰り返してきたが、このままでは人間として一皮剥けない気がする。今年は挑戦の年にしたい。

そういうわけで、筆者が新年最初に掲げる目標は、チキンクリームポットパイを食べることである。傍から見れば一歩踏み出した瞬間に足の小指をぶつけそうな位置にあるマイルストーンかもしれないが、何事も踏み出してこそである。以下より初実食の様子を記していく。



念のため補足しておくと、チキンクリームポットパイはクリームシチューにパイ生地を乗せて焼き上げた商品である。価格は450円となっている。今回はデリバリーで取り寄せることにした。

届いた実物の外箱を開封すると、ドーム状に広がったパイ生地が真っ先に目に飛び込んできた。何度も広告で見かけた姿に、「これぞ」という感慨で胸が一杯になる。

目線を横に移せば、まるでキノコの傘のように生地がカップの上にせり出しているのがわかる。よく出来ているなと感心する一方で、今すぐその生地を破ってやりたい衝動にも駆られる。このパイの前では、あらゆる人間がパイ生地への攻撃性を暴かれるに違いない。

突き動かされるように、スプーンで幾重にも連なった生地を掘り進めていく。

まもなくして、その奥に広がる煌びやかなシチューと対面する。勢いのままに生地とシチューをまとめてすくい上げ、頬張った。

温かな旨味と、とろける食感。口の中に広がったのは、確かに「定番」と謳うだけはある甘美さだった。

まず単純にシチューのレベルが高い。ファーストフード店の品であることを忘れさせるコク深さもさることながら、柔らかにほぐれるチキンや、ほどよく辛味を効かせる黒胡椒の存在も憎い。加えて何より、そこにサクサクのパイ生地が溶け込んだ時の破壊力たるや凄まじい。

一口でこちらを魅了するに足るクオリティだ。二口、三口、いやそれ以降も、夢中になって食べ進めたことは言うまでもない。

が、しかしである。ゆえにこそ筆者は気付くことができなかった。美点のみならず、この商品に「ある罠」が潜んでいたことについても、真摯に書き残しておかねばなるまい。経験の浅い者を絡め取る、巧妙な「罠」だ。

夢中になって中心部ばかり食べ進めていると、見るも無残な姿が出来上がるのである。

見事にパイの周縁だけが残った、まるで「空き巣に入られたチキンクリームポットパイ」のごとき光景を目の当たりにした時、筆者は震えた。「もっとやりようがあったのではないか」という念に押しつぶされそうになったことは言うまでもない。

が、しかしである。この時の筆者は再起も早かった。不測の事態が起こった場合に備えて、あらかじめ予備のパイを買っておいたことも功を奏した。

最後にパイの周縁が残ってしまうというなら、早期に活用してしまえばいいのである。

最初に中心部に穴を開けておく。続いてシチューには手をつけずに、外側の生地をちぎり取る。

そしてディップする。何なら外側の生地はシチューの熱に触れていない分、中心のそれよりも一層サクサクしていて、最もディップするのに適しているのではないかとさえ思う。

周縁を攻略したのちに中心部を食べ進めれば、全てを効率よく胃に収めることができる。無残な姿はどこへやら、見事に空き巣再発防止完了である。新春犯罪抑制キャンペーンである。

かくして二転三転の展開を迎えたチキンクリームポットパイ初体験であったが、最後には非常に高い満足感とともに有終の美を飾ることができた。もし皆さんの中にも未実食の方がいたら、ぜひ挑戦してみてほしい。きっと後悔はしないはずである。

筆者としても、これからも歩みは止めないつもりだ。チキンクリームポットパイのごとく、余すところなく魅力的な人間を目指して。

参考リンク:ケンタッキーフライドチキン 公式サイト

執筆:西本大紀

Photo:RocketNews24.