沖縄出身バンド「HY」の名曲からインスパイアされた映画『366日』(1月10日公開)の公開前夜祭舞台挨拶が1月9日に丸の内ピカデリーで行われ、赤楚衛二、上白石萌歌、中島裕翔、玉城ティナ、新城毅彦監督が出席。「HY」(新里英之、名嘉俊、許田信介、仲宗根泉)も駆けつけてスペシャルミニライブを行い、楽曲に聴き入ったキャスト、監督が胸をいっぱいにした。
『366日』公開前夜祭舞台挨拶が行われた
本作は、沖縄と東京を舞台に20年の時を超えた純愛を描くラブストーリー。2003年、沖縄に住む高校生の湊(赤楚)は、同じ高校の後輩、美海(上白石)と出会い、同じ音楽が好きな2人は自然と惹かれあっていく。母を病気で亡くし、音楽を作るという夢を諦めかけていた湊は、美海に背中を押されて東京の大学へ進学。美海も上京し、2人での幸せな日々が始まる。しかしある日、湊は突然別れを告げて美海のもとを去ってしまう。
息ぴったりの様子を見せた赤楚衛二と中島裕翔
上映後の会場から、大きな拍手を浴びてステージに上がった登壇者陣。赤楚は「三流芸能人の赤楚衛二です」とお正月に放送された「芸能人格付けチェック!2025お正月スペシャル」に触れて笑いを誘ったり、「こーんにーちはー!」と挨拶したりと登場するなり、ユーモアあふれる素顔をたっぷりと披露。「温かい、優しい気持ち。光のような想いを受け取ってもらえたらうれしい」と映画に込めた思いを語ると、美海を見守り続ける幼なじみの琉晴役を演じた中島が、「そうだね。あったかい気持ちにね」とうなずきつつ「皆さん、観終わった感情を咀嚼していると思う。だから、もうちょっとクールでいてほしい」とお願い。観客が劇中の役柄と赤楚の素顔に戸惑うのではないかと心配した中島だが、「僕はこういう赤楚衛二が好きなんだけど」と愛情を傾けて赤楚と笑い合うなど、息の合った漫才のようなやり取りで会場を沸かせていた。
HYが生パフォーマンスで会場を魅了した
本作を彩るのは、「HY」が「366日」のアンサーソングとして書き下ろした楽曲「恋をして」。この日は「HY」によるミニライブが行われ、「AM11:00」、「366日 (official Duet ver.)」、「恋をして」の3曲が披露された。キャスト、監督は最前列の席に座り、ライブを堪能。会場と一緒になって手拍子をしたり、体を揺らしたりしながら、エモーショナルな歌声や演奏にうっとりと聴き入った。ライブが終わると、赤楚は「最高でした。この映画に携わることができて心からよかったと思いました」、中島も「撮影中の出来事がフラッシュバックした。それだけ歌詞がリンクしている」としみじみ。湊と同じ大学の音楽サークルに所属する香澄役に扮した玉城は、「私も同じ沖縄出身なので、すごく身近に感じさせてもらっていて。聴いている間ずっと、鳥肌が立っていました」と熱っぽく語る。
上白石萌歌、涙!
涙を流した上白石に、赤楚はそっとハンカチを渡していた。上白石は、主題歌「恋をして」について「全員のことを抱きしめてくれるような曲。最初は美海の気持ちなのかなと思っていたんですが、それぞれの心にリンクする曲」だと印象を口にしながら、「私が『366日』という曲に出会ったのは、8歳の時でした。その時は大人の曲だなと思っていたけれど、この映画のなかですごく自分に近い曲になって。最近、苦しい曲ではなくて、とても幸せな曲なんだと気づいた。『恋をして』も、中学生だったり、私と同じように8歳で聴く人もいるかもしれない。またこの曲が誰かの将来へのアンサーソングになるんだろうなと思うと、大きな2つの軸をくださった『HY』の皆さんに感謝の気持ちしかありません。すばらしい曲をありがとうございます」と言葉をあふれさせ、「言葉にならないです。胸に来るものがありました」と感激しきり。
「とてつもないものを観させていただいた」と感激しきり
「366日 (official Duet ver.)」と「恋をして」を続けて聴けるという貴重な機会となり、赤楚も「『366日』ですばらしくて、すごく最大級のものをもらえた。そこから『恋をして』(も聴けた)。心が震えちゃって、頭が追いついていない状態です。とてつもないものを観させていただいた」と興奮が冷めやらず、「HY」の仲宗根は「この映画もそうですが、恋愛だけではなく、家族、友だちなどいろいろなストーリーが入っている。皆さんも、映画を見ながら自分の人生と照らし合わせるような気がしていて。『こういう時があったな』『あの時にこの人を選んだな』と重ねたりする人もいるのかなと思う。この映画も人生映画。『恋をして』も自分の人生を振り返るような曲になったんじゃないかと思う」とそれぞれに寄り添う曲であり、映画だと熱を込めた。
『366日』公開前夜祭舞台挨拶の様子
最後に赤楚は「この映画は『HY』さんの『366日』という曲から始まって、16年も皆さんが愛してくださっていて、『HY』の皆さんが命を削って作られた楽曲。16年越しにこうやって形になって皆様にお届けできることがうれしいし、ありがたいこと。アンサーソングも出るということで、僕らも本気でいいものを作らないといけないと腹をくくって、本気で皆さんと作り上げた作品」だと大切に紡いだ映画だと話し、「いまの時代、人間関係も希薄になったりと、人とつながらなくてもいいという選択もできてしまうと思う。そんななか、いま一度人を想うこと、愛というものと向き合う映画になっていると思います。自分と照らし合わせて、映画も楽曲も楽しんでください」と呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝