森永卓郎(C)週刊実話Web
12月20日、与党の税制改正大綱が決定され、国民民主党が要求する103万円の壁引き上げに関しては、人的控除20万円の引き上げが明記された。
国民民主の75万円引き上げと比べると、話にならない金額だ。
しかも、20万円の引き上げのうち、基礎控除が10万円、給与所得控除の最低保証引き上げが10万円なので、年収300万円のサラリーマンの場合、年間の減税額は地方税を含めて1万5000円程度と、国民民主の要求が実現した場合の11万円と比べると、大きく見劣りする。
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自公国の幹事長会談で、課税最低限を178万円目標に引き上げることで合意していたのに、なぜ与党はそこからかけ離れた数字を税制改正大綱に盛り込んだのか。
答えは明らかだ。
日本維新の会がすり寄ってきて、維新が要求する教育無償化と引き換えに補正予算への賛成を打診してきたからだ。
教育無償化であれば必要な予算は6000億円程度で、年収の壁を178万円に引き上げることと比べると、10分の1のコストで済む。財務省はそちらを選んだということ。
ただ、もう少しで四半世紀ぶりの本格減税が実現しようとする直前に、減税つぶしに出た日本維新の前原誠司共同代表の罪はあまりに重い。
総選挙で与党過半数割れに追い込んだ民意を壊したからだ。
もう1人、今回の壁引き上げをつぶした犯人がいる。立憲民主党の野田佳彦代表だ。
立憲民主は今回の壁引き上げに一切賛同せず、静観を決め込んだ。
もし前向きだったら、とっくに大型減税が実現していたはずだ。
前原氏と野田氏の2人には共通点がある。
それは財務省の強力サポーターであること、民主党の元代表であること、そして他党に入り込んで「代表」に収まっていることだ。
なぜ、そんなことが起きているのか。
消費税5%への引き下げも反故
旧民主党が結成されたのは1998年、中道リベラルを理念として政権交代できる政党を目指して創設された。
しかし、その実態は、当初から保守とリベラルの混成だった。
自民党が世襲で候補者の公募がない中で、新たに政治家を目指す若者は、民主党の公募に応じるしかなかった。
そこに保守派がなだれ込んできたのだ。野田氏も前原氏もその1人だった。
だから、2017年にリベラル派を中心に旧立憲民主が結成されたとき、ようやく純粋なリベラル政党ができたと、私は喜んだ。
だが、事もあろうに立憲民主は、20年に野田氏を受け入れ、24年には代表に選んでしまった。
一方の前原氏も24年に日本維新に入党した直後、新たに日本維新の代表となった吉村洋文代表の指名で共同代表となり、国会での活動を仕切ることになった。
野田氏も前原氏も、増税派として知られる。
つまり、与党が過半数割れをしたと言っても、立憲民主と日本維新は財務省のシンパ。もっと言えばザイム真理教の信者が仕切っているのだ。
それでは、大型減税が容易に実現するはずがない。立憲民主も日本維新も、総選挙での政党別投票率でみたら退潮傾向にあることは間違いないのだが、もともとが大所帯だから、そう簡単に党が消滅することはあり得ない。
24年の総選挙で日本維新は消費税8%への引き下げを主張していた。
立憲民主も、22年までは消費税5%への引き下げを掲げていた。
それを反故にした元民主党代表2人の罪は、あまりに重いのだ。
「週刊実話」1月23日号より