数年に及んだコロナ禍が終わり、先進国では突出して物価の安い日本には再び世界中から大勢の観光客が押し寄せてきた。その数は今やコロナ前以上だが、新たな問題も起こっている。オーバーツーリズム(観光公害)だ。

 京都の路線バスは外国人で溢れ、満員で乗れない場合もあるほど。実は、似たような状況は地方のローカル線でもある。

 例えば、JR函館本線の小樽―長万部間は、途中にスキーリゾートのニセコがあることから冬場は特に混雑する。昨シーズンには途中の余市駅などで一部の地元客が乗車できなかったことがメディアでも報じられた。もともと1~2両に運行している区間で、今シーズンは車両を増やして運行しているが混雑の解消には程遠い。

 しかも、1月中旬以降は北海道の公立高校の冬休みが明け、通学の高校生も利用する。朝と夕方の登下校の時間帯の列車がさらに混雑するのは確実で、「昨年のように超満員で乗れない人がいそうで怖い」と不安を口にするのは通学で同路線を利用する沿線の仁木町在住の男子高校生。

 また、以前はJRで小樽市内の高校に通学していた余市町在住の女子高校生も「冬はものすごく混むからバス通学に切り替えました」と話す。

 こうした“冬場に激混み”する路線としては、他にもJR富良野線の旭川―富良野間、JR大糸線の松本―白馬間などもある。特に外国人観光客の場合、大きなスーツケースを持って移動する者が多いため、荷物でスペースを取ってしまう。これらの路線も少ない車両数で運行しているため、空いている車両に移動することもできない。

 鉄道会社としてはローカル線の利用客が増えるのは歓迎すべきことかもしれないが、混雑しすぎて普段利用している沿線住民が乗れなくなっては本末転倒。そうした事態にならないようにしっかりと対応してほしいものだ。

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